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0-1. 37th MARATHON DES SABLES / パリ到着~モロッコ到着

このnoteの趣旨である「中級者向けサハラマラソン対策」の進行が思うように書き進めれないため、
ひとまずサクっと書くことができるレースレポートでお茶を濁させていただきます。
準備・対策の内容は記事の流れによって都度ですがここにも書いていきます。

前回出場時(29回大会)のように事細かにではなくライブ感重視でいきたい・・
と、思っていましたが書き始めると性格上くどくなってます(やっぱりね)

●パリ到着
4月20日
早朝、羽田発のエールフランス便でシャルル・ド・ゴール空港に到着した。


便の候補は幾つかあったが、結局ロストバケージを考慮して安全度の高い直行便を選んだ。
早速スマートフォンの機内モードを解除し。この為に用意したahamoが現地の電波をサクッと掴んでくれた。
※追加料金なしで最大15日間・20GBが海外ローミング可能
日本人選手のグループチャットと家族に無事着陸した旨を伝える。預け荷物に付けたAir Tagもちゃんとくっついてきていてひと安心。

前回のサハラマラソン(以下MDS)以来実に9年ぶりのパリだが、今回は市街には向かわず空港付近のibis Paris CDG Airportに宿を取っている。
前回はまだ日本人選手向けに霞が関トラベルのパック(宿+空港までのバス)があったが、それがなくなり近年はこのibisが日本人選手の拠点として周知されている。

ホテルのロビーに到着すると朝の早い時刻にも関わらず昨日までに到着した日本人選手がたむろしていた。
顔馴染みも多い。

前回の参加時は事前にコミュニティに入らず、知り合いもいない状態で緊張のままこのパリでの合流を迎えた。
あれから9年。色々あってなかなかに再出場は叶わなかったがその間もMDSと関わりを持ち続けた。
結果、今回は実に良い心持ちでこの日を迎えれている。
何年も同じ目標に向かって頑張っていた仲間とこのパリで集結し、明日いよいよモロッコに向かえる。この時点でもう嬉しくて仕方がなかった。

MDS公式のウェア、ザック、フラスコまで装備したMDS丸出しの格好だったのでみんなして「もう走る気かよ」とツッコんでくる。
ロストバケージの可能性は僅かにはあったので核となる装備は機内持ち込みにしたため必然そんな姿になるのだ。
ちなみにフラスコは破損も恐れていたため装備していたのはスペアだ。
出たくても出れなかった恋煩いに近い9年間。それだけに溜め込まれた想いは自分でも病的と感じる用意っぷりで漏れ出ている。

チェックインはまだできないので荷物を仲間に預けてホテルの朝食をとる。
ここから明後日の夕食までは購入、あるいは給されるものなので食あたりには特に注意して生モノなどは避ける。
同時にカーボローディングとして糖質を多めに摂取するよう心掛ける。
ちなみに飛行機の中でも不採用となったエネルギバーの類を食べまくっていた。トレーニング期間中は色々と制限もしていたのでその反動でもあるのだが・・
大量に持ってきたのでスタートまでまだまだがっつくつもりだ。

その後ロビーで初対面の日本人選手に挨拶したりと楽しい時間を過ごし、合流した旧知のR姐さんと近くのスーパーで昼食、夕食、明日の朝食をしこたま買い込む。
何気なく買ったラザニアが美味い!
※ラザニアはレース中の食事にも複数採用したくらい好物

レース中に効かすためにカフェインを3週間ほど断っている影響で、デカフェでもいいのでコーヒーが飲みたくて仕方がない。
飛行機では(別の理由で)アルコールも断っていたので日本を出立してから飲み物はずっと水。もう我慢ができない。
都合のよいことにホテル併設でスターバックスがあった・・が、残念ながら簡易店舗のためデカフェがない。
ラテを堪能されるR姐さんを羨みながらレース後まで我慢が確定してしょんぼりする。

なんやかやで正午前にチェックインができたので部屋で人心地ついていると妻からビデオ電話の着信。
日本時間では20時。就寝する子供たちと共に最後の応援連絡をくれたのだ。
窓から観える空港の様子を映すと夜ではないことに「なんで??」となる長男(5歳)と訳も分からず喜ぶ次男(1歳)。
ずっと一番応援してくれていた妻と話し、名残り惜しいが最後の挨拶をして電話を切る。
ありがとう。そしてここからは我一人。ずっとやりたかったことを気ままに楽しめる最高の時間だ。

少し昂ってきたので装備のパッキングでもしようと荷物を紐解いたが、現段階で特に弄るところもなかったので先ほど買った昼食をつまみながら寝転び休む。

この後の唯一の予定は19時に任意の日本人選手の顔合わせ会。
今回はリピーターが多いものの、初参加の方にとってはこの後の動きに不安があるはずなのでそれを除くための会でもある。
私も初回は同じように顔合わせ会で随分気持ちが軽くなった覚えがある。
例年は10回連続で出場&MDSへの関わりも含め諸事精通しているR姐さんが主導しているが今回は私もお手伝いさせていただく。
いつもレース前の雑事を一身に受けているR姐さんの負担を減らしたい想いもある。これは報恩である。
今回はこの9年間で各所にできた恩に報いる気持ちを忘れないよう心掛けつつ楽しむのだ。

顔合わせはホテルロビーのスペースで。同じくセッティングを担当しているM山さんと共にここからスタートまでの流れと注意点を話し、質問などを受け付ける。

Photo Credit:R姐さん


オタク気質で毎年MDSを凝視しているためある程度知識は持っているが、如何せん9年も前に1度出ただけの浦島なので細かい齟齬が出るがそこはR姐さんがすかさずフォローしてくれる。

私がここで強調したのはモロッコ到着からテクニカルチェックまでの時間を有効に使ってほしいということ。
ビバーク(宿営地)到着までにコースマップが配られ、そこでコースの距離、難度、配水、制限時間など多くの情報が流れてくる。
この情報とビバークで過ごす一昼夜の状況を加味してより適した装備や食料の最終選択を行える唯一無二の機会なのだ。

この時点ではまだ到着していないが、今回は「教祖」の異名をとる知己のC守さんも参戦している。
彼一流の精緻な情報の提供により今回は綿密な準備をされている方が多い。
この日以前にも彼からグループチャットに様々な情報を流してくれている。
その中で多くの方が注目していたのが今大会の予想気温。
コースはまだ未発表のためあくまで例年コースで使われる付近の街をサンプルとした比較だが、
過去何年にも遡って気象データを出し、そこに今年の予想気温を掲げた彼の情報に多くの方が絶句した。
そう、今年はヤヴァイのだ。
残暑厳しい10月に開催され半数がリタイアした過去最狂の35回大会に匹敵するのではないかという意見も出ている。

私も気象については確認しており特に電解質系は対応できるよう補強してきた。
加えて最低気温の高さにも注目しており、寝袋などの夜具は通常版に加えて簡易版も併せて持ってきている。
これらを先のビバークで実際に使用して最終調整を行うのだ。

私が大会後に作った資料。気温は日陰なのでコース上はもっと高温になる。ネタバレになるので今大会の箇所はマスク

顔合わせは有意義に終わり、ここで久しぶりに会う方、初めて会う方々にご挨拶。
女子最多出場者、18回目のJ子さんとは29回大会以来。またご一緒できて光栄です!
先の激ヤバ35回大会で女子総合2位に輝いたB藤さん。そしてそのマネージャーで屈指の実力者でもある初参加のT屋さんなどなど。

Photo Credit:R姐さん

そのうちC守教祖も飄々と到着。

C守教祖

ボトルのカバーは吸い口が丸出しだと周りの人が嫌がるかなという気遣いだそうです。
流石教祖、私はボトルそのまま丸出しでしたわ。
ちなみに彼の信者であるN園さんは到着ではなくご降臨、空も一瞬晴れたのですぐわかったとかのたまっていた。
36回大会で毎朝東方に礼拝していた狂信者であり、今回は御本尊が移動してきたとかよく分からない事を言っているのでこの教団の顛末も見届けなければならない。

部屋に戻り、シャワーを浴びて手早く就寝の準備をする。
明日は早く、そして長い一日になる。

●モロッコへ
4月21日
AM3:30起床。はや・・。
モロッコはエラルシディア行きチャーター便の集合時刻が空港 AM4:45なのだ。フライトはAM6:45。
ここ数年はチャーター便のタイムスケジュールがおおよそこの時間帯のため、空港まで歩いて行けるこのホテルが重宝されているのだ。
昨日の顔合わせで希望者は4:20にロビー集合に集合して窓口まで一緒に向かうことになっている。

ちなみに今回の日本からのエントリーはドイツ国籍で日本在住のSさんを加えて36名。
うち4名は出場を見送られたがそれでも32名の大所帯だ。コロナ禍以前の人数に戻った感がある。
更に加えていうと、この32名のうち12名がリピーターである。
私自身でいうと全体の半数以上が顔見知りなので心強い。

ターミナル3には10分程度で到着。まだ集合時刻前なので窓口もオープンしていない模様。

私たちが搭乗するチャーター機はエンターエア航空の504便。
他にも数便あり、またスペイン・イギリス等からも便が出ている模様。
同様に昨日はスタッフを乗せた便も運航されていた。

窓口に確認にいったら「OKだ」的な雰囲気だったので皆を招き入れたが結局定刻までオープンしなかった。
他国の選手も巻き込んで待たせてしまったが、まあこの旅はこっから幾度となく”待ち”を味わうはずなので予行演習的にどうぞ。

ちなみにチャーター機の席は発券順だった。先頭だった私はササっと手続きを終えて当然の窓側。隣は格闘技のトレーナーであるナイスガイ・S木さんとなった。
ちょっと気になったのは私の横の窓口で大叔父・又甥で参加しているK沢さんとTくんが職員となんか揉めていたこと。
瞬間恐ろしい予感がよぎるが、まさかね・・と思い飲み込む。

ある程度の人数が手続きを終えた時点で手荷物検査場へ。PC関係はがっつりとチェックされていたが皆無事通過。
搭乗口付近の席でゆっくりしていると1名日本人らしき方が到着。話しかけると唯一グループチャットに入っていなかった出場者のK川さんだった。
これで後はモロッコに直入りしてる3名と合流すれば出場の日本人選手は勢揃いとなる。

安心したのも束の間、窓口で捕まっていたTくんからグループチャットに衝撃のメッセージが。

「おじさん(K沢さん)がチャーター便に登録されていない」

oh..マジかやっぱりか。あそこで揉めるとなるとそらそうだよね予約してなかったんだよねと心がザワついた。
が、続けて、

「でも色々あってチケット発券されました!」

絶句した。色々って・・すげえな、乗せる方も!
なんとかするんだ、すげえな!チャーター便だからかな!?とかなんか感動した。

日本からMDSに参加する場合の集合場所は2つ選択肢があり、ひとつはパリの空港で、もうひとつはモロッコの空港。
今回でいうとそれぞれシャルル・ド・ゴール、エラルシディアである。

これらはエントリー時に「パリからのチャーター便を予約する」の選択肢を選ぶかで決定される。
※38回大会からはこのチャーター便の運航状況が大きく変わるようなのでエントリーされる方は混同なされないようお願いします

K沢さんは参加13回目の大ベテランだが前回参加時は霞が関トラベルの手配がまだあった頃なのでその辺りで齟齬があったようだ。
なんにせよ、無事搭乗=参加できそうでホッとする。毎年この辺りはすったもんだあると聞いているがここまで来てさようならでは辛すぎる・・。

搭乗口からバスを乗り継いで徒歩で搭乗。ちっこい飛行機である。

そして無事再合流を果たしたK沢さんとTくんを労う。
ちなみに、このお二人とは同じテントとなることが決定している。
現在のMDSは自身の入るテントを事前に選択することになっている。所属国で選択可能テントが割り当てられており、
ドイツ国籍のSさんを含む我々日本人選手は#162~166の5テントとなっている。
最大8名までが入ることができ、彼らと私は同じ#164を選択していたのだ。
実は日本からの往路のフライトでは前の席が彼らで少しだがお話しもしていた。こんなことでテントメイトが減らなくて本当によかった。

飛んでしまえば後はのんべんだらりと過ごす。ここに乗っている全員がMDS参加者かと思うとやはりどこか嬉しくなる。
ジブラルタル海峡を越えてモロッコ上空に入る。とても茶色い。一変する景色に、特に初参加の仲間のテンションは爆上げである。
その中で一人、R姐さんだけが「雪はどう?アトラス山脈の」と問うてくる。
なんだろう?
アトラス山脈を視認し、「ないですね」と返すと、「ああ~、マジかぁ」とグッタリ顔のR姐さん。

機内から撮影したアトラス山脈。実際は僅かだが雪が見える

姐さん曰く、このアトラス山脈の雪の残り具合で現在の気象状況がおおよそ判るとのこと。
当然全くないとなればそれはダメ、バツです。暑いです。

やっぱりか・・と思いつつ否が応にも覚悟完了を迫られる。

およそ3時間半のフライトを終えてモロッコはエラルシディア空港に到着した。