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追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~

・マガポケで今読める漫画で『スキップとローファー』と並ぶくらい、おすすめの漫画。それがチー付与。

・漫画/業務用餅 原作/六志麻あさ キャラクター原案/kisui このお三方による作品。カクヨムで連載されている小説を、業務用餅さんがコミカライズしている、という感じ。だが、本質は少し違う。

・先にふわっとあらすじだけ触れることにする。
 装備品にポイントを与えて強化することができる魔術師レイン。大規模ギルドでこき使われる彼は、全ての装備に付与し終えたことを理由にギルドから追放される。途方に暮れるレインだったが、彼はあることを隠していた。それは、付与した強化ポイントを回収できることだった。レインはすぐに効果を解除し、意気揚々と自分の人生を歩み始めるのだった。

・流行りの「追放ざまぁ系」に分類される作品だろう。しかし、この作品は少々特殊で、そうとも言い切れない。この作品の特徴は、原作と乖離している所だ。その改変のぶっ飛び方がどうしてもたまらなくて読んでしまう。

・漫画と併せて、上の原作を読んで欲しい。出てきているキャラが出てきてないし、出てきてないキャラが出てきている。連載の最新話に近づく程、その傾向は激しくなる。
 漫画版では、サックマイファッキンディックメリークリスマス号という戦車に乗って襲ってくるパンチパーマのおばさん暗殺者や舞台であるゼルージュ王国の治安を脅かす半グレ集団が圧倒的な存在感を誇っている。だが、彼らは原作には登場しない。他にも、東京から来た元ヤクザやパチンコ屋も登場する。けれど、それも原作には登場しない。当然だ。原作はファンタジー作品なのだ。
 でも、原作を知らなければ(マガポケのコメント欄でのツッコミが無ければ)「こういう話なんだ」と納得しそうになる。その位、業務用餅氏は話を運ぶのが上手い。

・もう一つ魅力を挙げるとすれば、ギャグとシリアスの緩急が凄まじいことだろうか。矢継ぎ早に登場人物達がボケ続けたかと思えば、次のページでは真剣なやり取りが交わされていたりする。ボケもくどくないし、シリアスで興覚めすることもない。適切なバランスがとれている。ゲラゲラ笑えるのに、感動もする。不思議な作品だ。

・できれば私の好きな所をコマを貼って説明とかしたい。でも、その辺は著作権グレーだと思うので、文章で説明するぞ。

・私が思う、この作品の一番の魅力は「登場人物達を応援したくなるところ」だと思う。特に20話にそれが現れている。
舞台は巨大なモンスターの恐怖におびえる村。そこを訪れたレイン達は、高ランク冒険者マルチナと出会う。だが、彼女はとある事情で本来よりも自分のランクを高く偽っており、そのことを追及されたことで部屋に閉じこもってしまう。
そんな彼女をレインが説得するシーンがある。村の人を裏切っていた負い目から村を去ろうとするマルチナ。だが、レインは彼女がモンスターを倒せないながらも、村の人を被害から必死に守っていたことを聞いていた。そのことにレインが触れると、マルチナは次のように言う。以下にレインとマルチナのやり取りを示す。

 レ:『逃げ遅れた人を背負って避難したり サイクロプスに踏み潰されそうになった子供を助け出したり…一生懸命やってたんだろ?』
 マ:『それは…そんなの…当たり前じゃないですか 怖くてもやらなきゃいけないじゃありませんか…!!』
 レ:『そうだよだから…当たり前だけど当たり前にはできないんだよ!』

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~
【第20話-③】より引用マガポケ

・是非読んで欲しい。
 この場面を読んで思ったのは、冒険者も死と隣合わせだということだ。柔らかいタッチで描かれる作品だし、主人公はチート持ち。でも主人公以外は普通なのだ。普通の能力で、普通に死ぬ。それでも、マルチナは村の人を守るために行動した。『チート』という世界の常識を超えた存在がいるからこそ、普通の人の「当たり前だけど普通にはできない勇気」が引き立つ。私も同じ立場だったら同じようにできただろうか。そう考えた時、マルチナを応援したくなる。
 他にも印象的な場面、笑える場面は色々ある。読んでいて思うのは、業務用餅氏は納得させる能力が異様に高いことだろう。登場人物たちの行動にブレがない。ボケまくっている様で、大切なことはちゃんと描いている。

・インターネット上では、ウージーやら暗殺の母やらがよく登場するけれど、「明日を生きようとする勇気」を描いている素敵な作品であることも知って欲しい。そう思って筆を執った。

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