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実写版ワンピース。見聞録 - 3

実は、ワンピースって子どもの頃に夕方のテレビ放映をたまに見るくらいで、漫画もアニメもまともに触れたことがありませんでした。なんといってもエピソード数があまりに多いので、見てみたいと思っても「今から始めたらどれくらいの時間がかかるだろう」と踏みとどまっていました。それに、そもそもわたしが生まれ育った街には漫画喫茶もなければ、レンタルビデオ屋も車でないといけないようなところだったので、「見る」という選択肢が初めからなかったんです。という言い訳はこれくらいにして……

  • タイトル:ONE PIECE(ワンピース)

  • 製作国:アメリカ・日本

  • 撮影監督:ニコール・ハーシュ・ウィテカー

  • 公開年:2023年

  • エピソード数:全8話

  • 見た言語:英語(原語)、日本語字幕

  • 見た場所:Netflix


主要キャラクターはだいたい知っているとはいえ、初めて「ちゃんと」見るワンピースなので、原作との乖離などは全く分かりません。でも、アニメを実写化する際のいい面が随所に見られて、鑑賞していてとにかく気持ちがいい作品でした。

たとえば肌の色、人種などの見た目。これは原作で特筆されていなければ、元が人間なのかさえ分からない世界の話なので、そのキャラクターの大まかな見た目の特徴と性格を再現できていれば、現実世界のカテゴリー(人種など)はなんだっていいんだなあと感じました。ピノキオのように鼻の長いキャラクター「ウソップ」は、今回の実写版では一般的な人間の鼻だったのですが、役者さんがウソップの特徴をよくとらえて演じているので、演技は見た目がすべてではないということを証明してくれる存在でした。

さらに、アニメを実写化する際の難しい点の対応の上手さも見ものです。アニメや漫画という二次元の作品を、三次元にするという時点で、ただすべてを真似しようとするだけでは、上手くいかない部分がでてくるという点をしっかり受け止めているように思います。わたしたちの世界には存在しない髪色や顔のパーツについて、「わたしたちの世界にいたとしたら、たしかにこんな質感なんだろうな」などと、見る度に感心していました。

オペラなどを今の時代で上演するとき、それに携わる人たちは、その素材を用いて新しい何かを表現しようと試みます。忠実に特定の時代の特定の上演を再現するという学術的目的でもない限り、既にあるものを改めて読み解き、解釈し、表現するわけです。同じものを見るのでも、視点を変えたらどうか?と実験しているようなものです。

実写版ワンピースは、そのような取り組みの結果に生まれた「新たな作品」と言えると思います。

J. S. バッハなど演奏するときに、バッハの時代と同じように演奏したいと思う人もいれば、まるでショパンのような華やかな演奏の仕方が好きという人もいます。わたしはそのどちらも、悪くないと思うのです。なぜそのように表現したのかを根拠をもって自らの言葉で説明できるなら、解釈や表現は制限されるべきではないはずだからです。

同じ理由で、「ロード・オブ・ザ・リング〜力の指輪〜」に黒人のエルフが出てきたときも、そういう表現・試みも面白いなと感じただけでした。もちろん、そうでないものを期待していた人たちの落胆も理解できないわけではありませんが、そういう自由な試みが許されるのは、創造する人の特権ですよね。

生み出す人っていいなあ。そんなことを考えていたから、また文章を書きたいなと思うようになって、こんなふうにブログにて頭の中の言葉をつらつらと綴るに至ったのでした……。


なにはともあれ、実写版ワンピース、元気な主人公のイニャキくんを始め、出演者もみんな味があって、良い栄養剤になります。全8話、気になる方はぜひ見てみてください(⁠^⁠^⁠)

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