メンタル不調の職員を助ける優先順位リストの作り方
「精神的に弱っている部下がいて、どうしよう・・・」
という相談を受けました。
かつて僕が所属していた高齢福祉課に、主任仲間がいます。
その部下が、軽いうつ症状のようになってしまいました。
僕が普段から、タスク管理に関する研究や発信をしていることを知り、
軽いうつ症状があらわれた職員に対して、どのように業務を配慮したらいいか、相談があったのです。
部下の名前は、竹下君と呼んでおきます。
竹下君の業務に対して、僕が普段研究しているタスク管理のメソッドを応用して、なんとか業務を回していくことと、本人のメンタルが回復していくことと、両方を目指したいと思います。
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ちなみに、竹下君は、病院でうつ病と診断されたわけではありません。
本人は精神科の受診まで考えておらず、周りの職員も受診する必要までは考えていません。
とにかく、元気がない。笑顔がない。仕事をするためのエネルギーがとても枯渇している。
そのような状態像なのです。
僕が勝手に、軽いうつ症状と見なしているだけです。
竹下君は、就職して2年目。
高齢福祉課の仕事は、大きく2つに分かれます。
一つは、介護保険の単純だけど大量な書類事務の仕事。
もう一つは、稀だけど支援困難で複雑な対人援助の仕事(高齢者本人や家族に拒否感が強かったり、虐待のあるようなケース)。
このギャップの大きな2つの仕事が、職員を翻弄します。
ルーティンのように、淡々と次々にこなさないといけない大量の事務作業。
イレギュラーで突発し、集中的にスピーディにこなさないといけない難解な対人援助。
まずは、本人に困っているところを聞いてみます。
本人の困り感を無視してあれやこれや言っても、押し付けがましく、返って負担を増やす結果になってしまうからです。
竹下君に、困っていることを聞いてみると、
「仕事が多すぎて、今、何をしたらいいか、分からないんです」
「一番困っていることが、何かすらも分からないんです」
という答えが返ってきました。
けっこう事態は深刻です。
仕事をするためのエネルギーが枯渇し、思考が半フリーズ状態と言えましょう。
ここで、「給料をもらっているくせに、思考をフリーズさせてるんじゃない!気合いを入れて仕事しろ!」などと叱咤するのは、なんの意味もありません。職場が楽になるわけでもありません。
叱咤する人の気分が少し晴れるだけです。
叱咤する人が何かやってやった気分になるだけです。
状況は悪化するだけで、一ミリも前進しません。
この目の前にいる職員は、エネルギーが枯渇し、思考すらままならなくなっている。
この状態をまず、受け止めるところから改善はスタートします。
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目下の問題は、優先順位が分からなくなっていることです。
精神科受診をしてるわけではないので、「精神的に弱っているように見えるから」という理由だけで業務量を減らすのは、職場の状況としても難しい。
やるべき仕事は最小限で回しつつ、メンタルを少しでも向上させたいです。
本人にしてみれば、何かやらなきゃいけないし、職場に迷惑をかけたくないのに、何をやればいいのか分からない。
何もできないまま、トラブルが発生してまた仕事が増えてしまうし、迷惑もかけてしまう。
こういう状態が、ものすごく辛いのだと思います。
最低限やるべき仕事を明確にすることで、
「今は、これをやればいい」と思うことができ、
トラブルも、精神的な負荷も避けることができます。
優先順位を明確にするのです。
いつでも優先順位を明確にしておくことで、
思考がフリーズしていても、リストの上から順にこなしていけば、「今やるべきこと」はできていることになります。
大量で変化の多い高齢福祉課の業務。
これを、頭の中だけで整理するのは、不可能です。
紙ベースで整理するのも、無理だと思います。
僕はここで、デジタルツールを使うしかないと判断しました。
デジタルツールしかないと判断したのは、以下の思いがあったからです。
大量の仕事を全て把握したい
大量の仕事を全て把握した上で、優先順位をつけたい
日々入れ替わる優先順位を、一瞬で並び替えたい
優先順位のリストを、僕と共有したい
これができるのは、デジタルツールです。
使い慣れてるExcelを使うことにします。
(というか、公務員なので、Excelを使うしかない)
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全ての「やること」に、優先順位をつけられるExcel表。
できるかぎり、シンプルに。
Excelに設定する項目は、5つにしました。
「優先順位」「対象者名」「課題」「具体的にやること」「メモ」です。
これらを表にすると、以下のようになります。
Excelだから、いくらでもタスクを追加できます。
また、一瞬で、優先ごとに順番を並び替えができます。
これがとてもいいんですよね。
紙だと、紙面やノートがいっぱいになりがちです。
紙だと、並び替えができません。
付箋紙だと、デスクの周りに、付箋紙がベタベタ貼られがちです。
付箋紙だと、並び替えはできますが、一覧性がよくないです。
それらの課題を、Excelの「やることリスト」は解決してくれます。
いくらでもタスクを追加できて、それらを一覧できて、優先順位の付け替えが簡単で、一瞬で順位ごとに並び替えができてしまう。
これは、すてきなツールです。
並び替えをする時は、
順位のセルを選択してから、
メニューの「並び替えとフィルター」を選び、
「昇順」を選ぶと、一瞬で数字の少ない順から並び替えられるので、ちょっとした感動です。
仕事をするためのエネルギーが枯渇しており、回復までにはまだ時間がかかる。
その間にも、仕事は回していかないといけない。
その場合に、「最優先のこのタスクをやればいい」と分かっているのは、大きな救いです。
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