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【OAK】ポール・ブラックバーンのブレイクの要因と今後への課題

今季のアスレチックスの大きなハイライトのひとつがポール・ブラックバーンのオールスター選出です。

チーム在籍6年目の古参ながらサービスタイムの経過は2年そこそこと、ほとんどチャンスに恵まれてこなかった不遇の苦労人の逆転劇というのは、胸のすくストーリーでした。

しかし、オールスター選出以降は故障もあって、爆散炎上。個人的にも思い入れがあるブラックバーンにこのまま終わってほしくないな~と思い、今シーズンのブラックバーンを良い面・悪い面両方から振り返ることにしてみました。


ブレイクの要因

球速の上昇

シンカー&4シームの球速を集計

2021年以前の90.4mphから、2022年は91.7mphにまで球速が向上しました。箱ひげ図で見てみると、平均値の上昇以上の出力アップを感じられると思います。

球はやはり速いことに越したことはありません。xwOBAは.377から43ポイント改善して.334としています(2021以前→2022)。

特にブラックバーンはグラウンドボーラーで、シンカー系の速球は本来は生命線とならなければいけない球種。それが大きなウィークポイントとなっていたこれまでとは違い、球速の上昇で十分に勝負できるようになっています。


決め球・カーブの確立

今年のブラックバーンの代名詞とも言えるのが曲がりの大きなカーブボールです。

ブラックバーンは昨オフからアナリストと共に投球改造に取り組み、このカーブの改造はそれが顕著に現れたポイントでした。

カーブの縦変化のシーズン別推移
カーブの横変化のシーズン別推移

映像を見ていて感じたのがこれまでの”抜くカーブ”から”曲げるカーブ”になったのではないかという点。

上のチャートにある通り、変化量は前年比でアップ。球速こそ前年比-0.2mphの78.8mphに過ぎませんが、スピン効率が前年比8ポイント(82→90)上がっており、これがこれまでにない高い強度のカーブを実現したのかもしれません。

カーブは被打率.160、xwOBA.237、Run Value-5など、多くのカテゴリーで自己ベストを更新し、すっかりブラックバーンの決め球になりました。空振り欠乏症に悩まされてきたブラックバーンにとって、決め球を確立できたのは大きかったと思います。


今後の課題

オールスター選出も果たしたとはいえ、そこからは不振に陥り、結局はERA4.28でシーズンをフィニッシュしたブラックバーン。最後は中指の故障でシャットダウンという形になりましたが、不振の原因はこの中指の故障も大きいのではないかと思います(シンカーをメインとする投球なら尚更)。

しかし、ひとつひとつ振り返ってみると、まだまだ改善する要素が多いのも事実。以下からはいくつか個人的にピックアップしてみます。

カッターの改善(第3球種の確立)

ブラックバーンの急所、それはカーブ以外に頼れる球が無いという点です。

2020年にはスプリッターの習得にチャレンジしましたが、結局ハマらなかったようで、従来のチェンジアップを投げ続けています。
カイル・ライトのようにカーブと対になるチェンジアップを組み合わせるスタイルを志向するには無理がありそうですから、ここではチェンジアップをどうにかするという選択肢は捨てておきます。

チェンジアップではない球種となると、今年シンカーに次いで2番目に多く投じたカッターが肝ではないでしょうか。

ブラックバーンのカッターはもともと4シームから派生した球種です。もともと球速もなく、真っスラのような変化をしていた4シームを捨て、そこから更に球速を下げてカッター風にモデルチェンジしたのが今のカッターと呼ばれる球種だと、私は解釈しています。
(前述のスプリッター習得はハマらなかったのですが、ブラックバーンはその際に速球系をシンカーに絞る、4シームをカッターにするというレパートリーの整理も行っており、それは2021年にロスター枠を勝ち取るのに大きく働いたファクターと思っています。)

さて、このカッターですが、被打率は.368を記録するなど、まぁよく打たれます。

この球種をどうやって改善させていくかということを考えるにあたって、やはりアテにすべきは先人の知恵
ちょうどブラックバーンと同じような道を辿った元チームメイトがいます。

SNYより。移籍してもやっぱりナイスガイ。

我らがクリス・バシットです。
バシットは2019年に初めてローテーションに定着して2桁勝利をマーク。その時の完全に速球とスローカーブに頼り切りのスタイルは、まさしく今のブラックバーンの現状と似通ったものでした。

2021年のスプリングトレーニングで、チームメイトから教えてもらった握りをいくつ試しても上手くいかず、苛ついていたバシットのもとに通りかかった仙人(セルジオ・ロモ)が彼にスライダーの握りを授けたというエピソードはあまりに有名ですね。
そして、スライダーを習得したその後のバシットの飛躍は周知の通りかと思います。

様々な背景ももちろんのことですが、ブラックバーンのカッターには当時のバシットのカッターに似たものを感じます。
高低問わずにゾーンに投じる球種のコンセプトだったり、球速帯だったり、結局小便カッター化してしまうことだったり。。。

バシットは今年一足早くカッターをブラッシュアップ。球速を上げ、変化をよりタイトにすることで、前年比で被打率は88ポイント改善して.217としました。

シンカーが単体として通用したバシットと比較すると、ブラックバーンはシンカーのバリューが低く、カッターのバリューは比較的マシといえます。今のバシットが操るタイプのカッターを覚えられれば、シンカーの使用割合を減らすこともできるようになりそうです。



*ヘッダーはNBCスポーツより。GIFの素材はBaseball Savantより。



↓質問まだまだ募集中です。こんな選手について詳しく読みたいというのもあればぜひ。


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