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【OAK】後半戦とデッドライン展望

前半戦振り返り

3・4月と5月はともに6勝23敗で終え、メジャーリーグのチームとは到底思えない状況に。

5月末からの故障者の復帰と抜擢した若手の確かな前進もあって、6月には8連勝も記録するなどチーム状態は回復した。

しかし、6月の勝率も依然.385に過ぎず、まだ”死ぬほど弱いチーム”から”普通の弱いチーム”になった程度。
先発ローテ、打線、ブルペンのいずれもまだまだ小粒で実力不足であり、後半戦の成長に期待したい。

前半戦チームMVP:ライアン・ノダ

前半戦は四球率18.3%、出塁率.381とまさしく”マネーボール”の申し子的な打撃貢献を見せた頼もしいルーキー。wRC+が100を割った月がなく、常に安定してチームを支えていたところもポイントが高い。

前半戦チームCY:JP シアーズ

崩壊状態にあったローテーションで孤軍奮闘。優秀なコマンドをベースに4シームとスイーパーを巧みに出し入れしてbWARは早くも2.2。これだけ頑張っているのに勝ち星1にとどまっている。(100三振して1勝はMLB史上2人目とのトリビアもあるそう(ほんまか?))


後半戦の展望

ソダスト&ゲロフコンビに注目

SIより

後半戦に入ってからいきなり大きな動きがあった。
チームのTop2の野手プロスペクトであるタイラー・ソダーストロムとザック・ゲロフの昇格である。

ソダーストロムは2020年ドラフトの1巡目指名。高校生としての指名だったことを考えれば、フルシーズン2年ちょっとでのメジャー昇格はかなりのスピード出世といえる。

高校時代から攻撃型捕手の呼び声高かったソダーストロムは、プロ入り後も前評判通りの打力を発揮。20歳のシーズンでAAAまで到達し、今季はAAAでわずか69試合で20HRを記録していた。

一方で課題視されていた捕手の守備は見違えるほどに良くなってきた。2020年のドラフト後にプレーしたオルタネイトサイトでは、試合中に投じられた投球をロクに捕球できなかったというが、今や十分に平均レベルで捕手が務まるレベルにまでなっている。

2020年に指名された高卒野手の中では最速でAAAに到達し(最速でデビューはジョーダン・ウォーカー)、彼より上位で指名されたロバート・ハッセルやザック・ヴィーンらの苦戦を見ても、ソダーストロムの育成の成功は手放しで称賛できるだろう。

ソダーストロムの弱点・伸びしろを上げるとすれば、粗さになると思う。

分かりやすいところでいえば、打てるは打てるのだが、アプローチが良くない。
四球の少なさと三振の多さは長らく指摘されるところではあったが、ソダーストロムは打ち続けるままに昇格してしまった。

その出塁率の低さが災いし、そして極端な打者有利な環境に置かれたこともあって、ソダーストロムのAAAでのwRC+はあれだけHRを打ってなお86に過ぎなかった。

ではなぜ、AAAでまだ傑出していない20歳の打者を、ルール5プロテクトよりかなり早い段階でデビューさせたのかという話だが、球団の狙いはハイレベルな環境で彼が揉まれることではないかと思う。

ソダーストロムのAAAでのトラッキングデータのパーセンタイルを示したツイートを参照すると、ソダーストロムの長短がはっきりする。

Exit Veloやバレル関連の指標は圧巻。しかし下段のアプローチ系指標はかなり雄弁に現状を語っている。

目につくのが上位89%に位置するSwing%と上位73%に位置するZ-Swing%で、ソダーストロムがかなりの積極打法であることがわかる。さらに悪いことにO-Swing%(ボール球スイング率)は下位8%であり、ボール球であろうと振り回していることが分かる。

それでいてZ-Con%やO-Con%、Whiff%は比較的マシであり、さながら「打てるから振り回してます」と言わんばかりである。
実際にPCLで2番目に多い20HRを放っているのだから、このままAAAにいてもアプローチが変わらないまま惰性でHRを打ち続けていた可能性も高いと思う。

だから、今後再びAAAに戻ることがあるかもしれないが、一旦メジャーのハイレベルな投手との対戦を経験するのは育成上メリットも大きいと考えている。
実際、昇格後は少ないサンプルながら、AAAにいたときより慎重でボール球を追いかける場面が少なくなっているように感じる。

また、粗さというのはアプローチにとどまらず、全体的な安定感の無さやムラっ気にも感じられるところだ。

安定感の無さは特に守備で見られ、せっかくスキルが向上したのに嘘みたいなパスボールを犯したり、もともと肩が強いにもかかわらずなかなかそれが盗塁阻止に直結しなかったりする。
また、今年はそうでもないが、日本にいる私が低画質の画面から見て取れるほど試合中に苛ついている場面もあったりした。

ここら辺もハイレベルな環境で磨かれてほしいなと思う要素のひとつだ。

これらを鑑みれば、あくまで今回の昇格は長い目で見てあげるべきだと思う。何しろまだ21歳なのだから。


大卒でプロ入りしたとはいえ、ゲロフもトントン拍子にメジャー昇格までこぎつけてきた。

ドラフト時から評価されてきた打力でマイナーの階段を駆け上がる一方で、アスレチズムという意外な武器も発揮。
アマチュア時代はサードだったが、送球難との兼ね合いもあってセカンドにコンバートして見事に適応したほか、今季も20盗塁を記録するなど、オールラウンドな活躍を見せるようになった。

若く、成績もまだまだだったソダーストロムとは異なり、ゲロフの昇格は納得づく。AAAで十分な成績を残した上でメジャーに挑むことになる。

唯一の懸念はゾーン内の空振りの多さか。ボール球に手を出さない選球眼こそ確かで四球を選べるが、空振りが多いため三振も多い。
マイナー時代と同じようにメジャーにも素早く順応したが、今後三振の数がどう推移するのかは注目したい。


その他プロスペクトの台頭にも期待

プロスペクトの昇格はソダーストロムとゲロフだけに留まりそうにはない。

その2人と同時にショーン・マーフィーの対価だったフレディー・ターノックも昇格し、アスレチックスでのデビューを果たしている。

ホップ型の速球が持ち味のターノックは、投手地獄のAAAでも好成績を残している。
遅かれ早かれローテーションで試されるだろうが、同じく快速球を武器にするブライス・ミラー(マリナーズ)的な活躍を期待したい。


さらにAAの主軸だったローレンス・バトラー、ダレル・ヘルネイズ、ブレット・ハリスらが一斉にAAAに昇格した。

この中でも40人枠に追加されているバトラーは、AAA昇格後も好調を維持しており、シーズン終盤のデビューがあり得るかもしれない。


また、投手でいえばAAのジョーイ・エステスとロイバー・サリナスは今年でルール5イリジブルとなる。
両名ともにオフにセレクトされる可能性は低くなく、今シーズン終盤にデビューする可能性はある。


トレードデッドライン展望

藤浪とメイの売り抜けが至上命題

ファイヤーセールを行った上、たいていの選手のパフォーマンスが奮わないため、再建中でありながらアスレチックスがアクティブな売り手となることは難しいだろう。

アスレチックスの中でも売り物になりそうなのは、レンタルリリーバーの藤浪晋太郎とトレバー・メイの2人。

藤浪もメイも表面上の数字は良くないが、徐々に数字を戻してきている。
メイは5月以降のERA3.07、藤浪は6月以降はERA3.44で内容もすこぶる良い。

今年はとりわけ買い手の数が多く、レンタルのリリーバーかつお手頃になりそうなこの2人への需要は確実にあるはずだ。

大した対価にはならないだろうが、レンタルのリリーバーを持ち続けても仕方がないので、この2人を確実に売り抜けることはこのデッドラインにおける数少ない宿題になりそうだ。

メイと藤浪の放出によってブルペンは不安要素が大きくなるだろうが、後半戦のどこかのタイミングでダニー・ヒメネスとザック・ジャクソンが復帰することが予想されるため、その2人の枠空けのためにもメイと藤浪はトレードされることになるだろう。


外野手の整理はあるか

開幕前にはトレードの可能性が取り沙汰されていたベテラン外野手、ラモン・ローレアーノとセス・ブラウンは今シーズンかなり低調なシーズンを送っている。

2人ともまだ複数年の保有を残すため、今売ればセルローとなるリスクも孕むが、現状の外野手陣の状況ではそれもやむを得ないかもしれない。

センターには盗塁王のエステウリ・ルイズが台頭、両翼とDHにはオールスターに選ばれたブレント・ルーカーがおり、JJ ブレデイもセンターを埋めながら活躍している。
また、一塁やDHも昇格してきたソダーストロムなど、多くの選手でシェアしている。

現在ローレアーノはリハビリ中だが、復帰したところでこの2人がフルタイムで出られるようスポットがあるとは思えない。
ここでどちらかを整理するのはありえなくはない話だ。

個人的にはまだ伸びしろがあり、保有期間もローレアーノより長いブラウンをキープして、ローレアーノをトレードしたい。

ローレアーノも今季はライト守備が好調で指標を稼げており、層の薄いコンテンダーのプラトーン要員として一定の需要があるかもしれない。(マーリンズやパドレスなど)
メイや藤浪とのセット売りも視野に入るだろう。



*ヘッダーは.comより

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