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官能小説 プラスティネーション

明日は、あたしの大好きな人、ひろくんとの初デート。
 
うわああ、緊張するなあ。

どうしよう、なに着ていこうかなあ。

ってか、パンツとかブラとかどうしようか?

ちょっとやだやだ、パンツとかブラとかってどうゆうこと?
 
ってか、初デートでやっちゃうのか自分? 
 
しちゃってもいいけど、しなくてもいいや。
 
誘ってくれたのはひろくんだけど、あたしのこと好きなのかな?
 
うわあああ、緊張する。
 
ってか、会ってくれるんなら、あたしのこと別に好きじゃなくてもいいや。
 
だって、そんなこと考えたら緊張しすぎておしっこ漏らすかも。
 
結論。ひろくんとはしない。ひろくんがあたしのこと好きじゃなくてもオッケー。
 
ってか、それだったら別に会わなくてもいいんじゃね?
 
あたしはひろくんのことが好き。
 
だから、ひろくんがあたしのことを好きじゃなくても、エッチしなくても、会わなくても、あたしが好きならそれで、いいんだもん。
 
ってことは、これからデートしなくてもいいってことじゃんよ。
 
ってか、デートとかそうゆうことが問題なんじゃなくて。
 
最初からよく考えよう。
 
あたしはひろくんが好き。ひろくんはあたしのことを好きか、好きじゃないかなんて関係ないし、デートもエッチもしない。
 
ってことは、ひろくんは存在してなくてもいいってことじゃん。
 
わ、すごいこと発見しちゃった。
 
そーか、そのとおり。
 
存在してなくても、いいや。
 
存在してなければ、ひろくんがあたしのことを好きになって、やっちゃって、でも他の子を好きになっちゃって振られたり、だんだん態度でかくなって、やるだけの女にされちゃったり、貢がされたり、風呂に沈められることも、ないし。
 
ちょっと考えすぎって気もするけど、ひろくんが存在していないほうが、安心して好きでいられる。
 
なんで、ひろくんは存在しているんだろう。

なんで会おうなんて言うんだろう。

三日前からなんだか落ち着かないし、ごはんも食べられないし、鏡を見るたびに顔太ったなあとか、眼がはれぼったいなあとか、ちょー気になるし。
 
眼がはれぼったいのはひろくんのせいで、よく眠れないからだ。
 
ああ、この眼、むかつく。
 
ひろくんは、存在していないほうがいいよね。そのほうが眼が腫れない。
 
とゆーことは、ひろくんを存在しない人にしちゃえばいいってこと?
 
ふふ、それなんか、いい考え。
 
ただ、存在しない人にしちゃうのって、何かもったいないなあ。
 
すごくもったいない。
 
でも、死体とかって、ずっと持っていたくても、すぐに腐っちゃうみたいだし。
 
写真で我慢しなきゃならないのか?
 
ああでも、どうにかして死体をずっと持ってることってできないのかしら?
 
そーだ。保存しとけばいいのか。
 
ぐぐってみよっと。死体の保存。保存、保存、保存っと。
 
プラスティネーション? なにそれ?
 
えっと、人体の脂肪分、水分をプラスティックに置き換える?
 
うわー面白そう。
 
零下二十五度まで下がる冷凍庫と、ホルマリン、アセトン、合成樹脂、珪酸ソーダが必要なのね。ようし、買ってこよっと。
 
これで、大好きなひろくんは、永遠にあたしのもの。
 
デートはキャンセルしようと思ったけど、よく考えたら会わないとプラスティネーションはできないので、キャンセルせずに、会って、映画を見た。
 
ひろくんのことは大好きだけど、映画を見て笑うタイミングが人より遅いし、それに手が汗ばんでて気持ち悪いし、近くで見ると髭剃りあとが濃くて、鼻毛もはみ出してるし、背も思ったより低い。
 
でもいいや。それでもひろくんのことが好き。 
 
プラスティックに置き換えてしまえば、笑うタイミングなんて関係ない。

映画を見たあとに、うちに来ないって誘った。
 
ひろくんは、意外そうな顔をして、それからものすごく照れた顔をして、
「いいの?」 
って、あたしに聞いた。
 
ひろくんてば、エッチするなんてひとことも言ってないじゃんよ。

「俺、かなちゃんのこと、ずっと好きだったんだ」
って言って、それから無口になった。
 
あたしの住んでいるところまでは電車で二駅だ。
 
部屋に入って、とりあえずコーヒーを入れた。

胃の中は空っぽのほうがよかったのか。
 
失敗失敗。
 
というか、睡眠薬とか、用意しておくべきだった。
 
え?
 
キスされた。
 
ちょっと、ヤる気なの?
 
やめてよ。
 
あたしが好きなのは、髭剃りあとが濃くて鼻毛が出てて、掌が汗ばんでるひろくんじゃないの。
 
それに、あたしを好きになっちゃうような男なんて、趣味が悪すぎて耐えられない。
 
ああ、やめてやめて。
 
そんなとこ舐めないでってば。
 
やだー気持ちよくなっちゃう。
 
そんなことするひろくんは、あたしのひろくんじゃない。
 
わ、ちんこ出した。
 
やめてやめて、あたしの好きなひろくんは、よそのお家でちんこ出すなんて、そんなお行儀の悪いことをする人じゃないの。

「かなちゃん、いやなの? 俺のこときらい?」
 
あたしはひろくんが好き。

好きで好きで好きで仕方なくて、だから会ったりエッチしたりしなくてもよくって、存在すらしてなくてもよくて、プラスティックに置き換えて、ずっと保存しておきたいなんて思ってて、でもそんなこと言えなくって。

「ううん、大好き」
って、言うのがやっとだった。
 
しちゃうのか、自分。
 
ま、いっか。
 
妥協の多い人生を送ってきました。
 
ひげ濃くても、鼻毛出てても、予想より背が低くても、すぐにちんこ出す行儀悪いやつでも、女の趣味が悪くても、やっぱりひろくんはひろくんなんだから、とりあえずヤっとくことにする。
 
あたしの大好きなひろくんではないけど、でもやっぱりひろくんなひろくんは、あのさわやかなひろくんのものとは思えない変にいやらしく大きくなった可愛げのないちんこをあたしの中に入れた。

あたしったら、入れられただけでイきそうになっちゃって、あんあん言っちゃったら、ひろくんに唇をふさがれて、いやらしく舐めまわされて、それにまたじん、と来ちゃって、腰をがくがくさせちゃって、そうしたらひろくんってば、調子に乗っちゃったみたいで、ちんこを抜いて、あたしを四つんばいにさせて、おっぱいとクリをいじりながら後ろから突いてきて、あたしが、電流を流された実験動物みたいにびくびくするので、さらに調子に乗って、「かなちゃん、やらしいなあ」なんて言って、耳を舐めるので、もうどうしようもなく何度もイっちゃって、このまま死んじゃって、ひろくんがあたしをプラスティネーションしてくれないかなあ、なんて思っちゃって、そう思ってるあいだにまたわけがわからなくなっちゃって、そうしたら、今度はひろくんの上に跨がることになって、うっかりすごい勢いで動いちゃったもんだから、ひろくんはちんこをひとまわり大きく膨らませたと思ったら、情けない声を出して、イってしまった。
 
さっそく舐めてきれいにしてあげながら、あたしがあたしのまま、ひろくんがいつでもしたいときにできるプラスティックのお人形になっちゃったらいいのにな、とまたろくでもないことを考えちゃって、そうこうしているうちに、ひろくんのちんこがまたむくむくと大きくなってきちゃったので、とにかくもう一回しちゃう、というか、このままずっとヤりっぱなしでいこう、ってことでFA(ファイナル・アンサー)。

つーか、ハーピーエンドってやつ?
                                  (了)   
 

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