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推しの姫~明石の君を思って~

 行きつけの地元の図書館の事務員さんが薦めくれた一冊です。本を返しに行くと、カウンターに飾ってあり、「面白いのでぜひ」と。
 そんな不思議な縁で手に取った本ですが、古典にでてくるモノについて、縦横無尽に語っていて、飽きることなく読了しました。

 ☆古典モノ語り  山本淳子著 笠間書院 1900円+税


古典モノ語り




 記録や作品の中で、普段、何気なく書かれている道具たち。ひとつには場面の主役になりにくいこと、時代を経てしまってわかりにくいことから、読み飛ばされがちなものばかりです。そこで、作者が記録や作品を横断して、道具たちが登場する場面を拾いあげ、解説し、考察します。
 作者は「源氏物語」の研究者であるので、おのずと平安文学からの引用、考察多かったです。
 出てくるモノ(道具)は以下のものでした。
 牛車、築地、橘、犬、泔、御帳台、扇、物への書き付け、を各2章づつ、16章に分けて考察されています。

 例えば、犬は縄文時代は猟犬だったのが、平安時代に入ると汚物処理係として、排泄物を与えられたりしたそうです。(「病草紙」「年中行事絵巻」)また、白い犬は神通力があるとされ(「日本書記」)名陰陽師・清明は道長からの難題を白い犬の力で解決したことも(「御堂関日記」)

 「源氏物語」では、光の君が女たちを美しい花に喩えたさい、明石の君が橘でした。わたしは、源氏物語の女性たちの中で、明石の君が好きなので、その引用は面白く読みました。娘をさしだす哀しみを乗り越え、最後は平安に、物語の中でも聡明で慎み深い言動に憧れます。
 他に橘は、「万葉集」では大伴家持が「橘の歌」を詠み、聖武天皇も橘を絶賛した歌を遺しています。「伊勢物語」では、待たなかった女の悲劇の花として描かれています。そして、果実は、食べ物としても接待のつまみの描写がありました。

 こんな感じで、モノ(道具)について、いろんな角度から、物語に登場した箇所を拾い上げ、考察されています。トリビア的な、新聞のコラムのような感じでどこからでも読めてしまう本でした。

読み終えたあと、ちょうど推しの短歌の課題を思って、一首読みました。

 橘を見るたび思う平安の推したき姫よ明石の君よ

*画像はネットの植物図鑑から借りた「橘」の花です。


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