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「冬薔薇」を観て~素人の願い~

 俳人が好んで使う冬の季語に、「冬薔薇」があります。冬に咲く薔薇のことで、可憐に愛でる俳句が多いです。この映画の題名は、冬に咲く薔薇というより、日陰に咲く花としての冬薔薇でした。母親のセリフに「冬に咲く薔薇のこと、冬薔薇っていうんだって」がありましたが、厳しい環境のなか、咲かせようともがく意味合いが強い物語でした。

 阪本順治監督が伊藤健太郎氏の復帰作として、脚本をあて書きしたそうで、舞台挨拶の映像では伊藤氏が感無量で泣きだす場面も。私生活での過ちからの復帰作として、監督の伊藤氏への愛情は、見事な共演者たちからもうかがえました。主人公淳(伊藤健太郎)はいい加減に生きており、希望も目的も未来もない。服の専門学校に通うも学校に行かず、ハングレ集団とつるんで遊び、その日暮らしで生きてます。人から逃げ続け、人から逃げられ続けた主人公。孤独と向き合うことを恐れた主人公の末路は・・・。

1.登場人物

 渡口淳(伊藤健太郎)・・・服の専門学校に通うも、地元のハングレ集団とつるんで過ごす日々。

 淳の父(小林薫)・・・敦の兄を事故死させたことから、淳と向き合えず、どう育てたらいいか悩む。埋立て用の土砂を船で運ぶ海運業を営む。

 淳の母(余貴美子)・・・父親同様、淳を怒ることもせず、育て方を悩みながら、夫の手伝い(海運業の事務)をする。

そのほかにも、淳の叔父に眞木蔵人。淳が所属する不良グループに永山絢斗、毎熊克哉、河合優美。淳の従弟に坂東龍汰。淳の学友・友利に佐久本宝、弁護士の澤地に和田光沙。父親の船の機関長に石橋蓮司、航海士に伊武雅刀。乗組員に笠松伴助。達者で豪華な役者陣でした。

2.あらすじ

 横須賀に住む淳は、専門学校にも行かずハングレとつるんで遊んでいた。海運業を営んでいる両親と淳の間に会話はほとんどない。淳は、友人の友利や愛人の澤地にお金をせびり、その日暮らしです。そんなある日、淳の仲間(河合優美)が襲われる事件が起きる。意外な犯人を知ってしまった淳は・・。

3.希望のもてるラストへ

 テンポよく話が進んでいきましたが、ラストが、わたしにはショックでした。WEBのキネマ旬報の映画評などで、軒並み専門家からは好評価でしたが、素人の願いとしては、希望が欲しかったです。

 ラスト近くの雪のシーンの映像は美しく、上からふたりを撮る絵は素敵でしたが、手をさしのべにくるのは父親であって欲しかったです。昭和の松本清張の作品やATGの作品のようなラストは、多分、専門家からしたら、人間の業を描いた、これが現実だと突きつけられた感があり評価されたと思うのですが、ざらつきが残りました。


#冬薔薇 #伊藤健太郎 #阪本順治 #映画感想文







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