かいわれの花

かいわれの花

曇り日に見覚えがあって眼で辿る向かいに置かれた赤いケースを
斜め前に出迎えているわたくしを遮る仕掛けの誰かの人かげ
二回目の海道を渡り橋桁のひかりのすがたに招かれていた
鳥 二回目という海道のその先の雫(しずく)のような大人に会いに
ちぎられたパンのふたつの過不足をひとりと過ごす穂のような 鳥
拭えない 湾曲をする橋と橋を繋いでみても闇をとぶ鳥
鳥 磔の木の正直な直線と途切れることのないわたしたち 
葉のうえの雫は大きければいい詩人の歌う落ちてくる鳥
すき間からときどきナイフが見えている自ら発することばは穴で
三羽目と四羽目の間(あわい)に見えている終点まで行こう黄色いセロファン
たった今トイレに流した精液があの世でかいわれの花として咲く

#短歌

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