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掌編/短編小説

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基本的に連作ではない小説をまとめています。日常から一歩だけ外れた世界、そこらへんに転がっている恋、病とふだんの生活、鬼との友情なんかを書いています。
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2019年12月の記事一覧

小説『かみさま』

小説『かみさま』

あの人はまるでかみさまのような存在でしたと例えたなら、あなた方はそろいもそろってわたしのことを気味が悪いと嗤うでしょうか。

思えば恋というものは、その想いが自身の中で高まり、昂ぶり、到底わたしの手の届かないお方であると気づかされたとき、宗教のそれとよく似た気持ちに寄っていくものと私は思うのです。

高尚なこの想いを汚されたくない誰にも見せたくない、そのような感情をひとまとめにしたような心持ちにな

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わたしのひみつ、お譲りします。

わたしのひみつ、お譲りします。

かつて、澱のようにまたヘドロのように溜まった気持ちを、誰かに伝えたい日々がありました。

だけれども、わたしには誰かにありのままに伝える術は持ち合わせていなかった。

誰にも言えない秘密を物語として編んでは投げ、編んでは投げを繰り返していたのは事実です。

そして時は経ち、その物語とは決別しました。

嘘です。決別したかのように思えたのですが、わたしが紡いだ世界が忘れられなくて、わたしの、わたしに

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