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14話 不要なものを取り除く

その日、自分が住むアパートに向かうと、入り口で部屋番号を打ち込む男性の姿が目に入った。その瞬間、嫌な予感がしたが、そのまま通り過ぎようとすると、案の定、声をかけられた。

その人間は、某テレビ放送局の関係の者だと名乗り、「ちょうどあなたの部屋番号を押しているところだった」と述べる。その時点で、そんな話があるものかと、不信感を隠せない。彼は、「ここで話をするのは…」と玄関先まであげてほしいという旨をぶつぶつと言っている。

そういえば先日、宅配業者と間違えてインターホンで応答してしまったことがあった。そのときは、プロバイダー(?)関係の人がやってきて「契約したら安くなる」という、明らかに怪しすぎる勧誘まがいの人間がやってきて、淡々と断ったが、彼もおそらくそういう類の人間だと推察する。

こういう人間の話は、往々にして一方的で、こちらの都合はまったく無視。そして、ほとんど意味がわからない内容をがんがんと言ってくる。
仕方なく玄関先で話を聞いていると、受信料が値上がりするということで、その同意を得てほしいらしいのだが、真意がまったくわからない。意味のわからない内容に、また謎すぎる内容を重ね、もはや笑けてきそうになったが、最終的に、指示されたことを、なぜか部屋に入って確認しなくてはいけない羽目になり、素直にその指示通り行ったが、その確認方法もよくわからないので、再度、説明を聞き直し、確認。しかし結局、何かの不具合で確認が取れず、契約せずに済んだ。あとで調べてみると、そこで確認が取れていたら、変な契約がされ、受信料が値上げされていたらしい。(詳細をあえて書き控えさせていただいているので、より一層、わけのわからない話になってしまった…)

まあ、こんな話ははっきり言ってどうでもよくて、その人間が帰ってから部屋に入って、まず思ったのは、「もうテレビはいらんわ」ということだ。
テレビを見なくなって、もう半年くらい経つだろうか。録画機能は働いているので、勝手に録画が溜まっていく一方なのだが、それも消費することはないだろう。ただし、音楽や映画は楽しみたいので、DVDレコーダーのみ使っているが、その時だけしかテレビを利用しない。こうなったら、パソコンだけでいい気がする。

考えてみると、自分の身の回りのもので、惰性で使っていたり、不要になってしまったものがあること気づいた。もうこの際、そういうものを手放していきたいと思った。自分の好きなものに時間をかけたい。好きなものに触れたい。好きなものに対価を支払いたい。
ちょうど、近々引越しも控えている。自分にとって、何が必要か不要か、何が余分か不足か、そういうものを整理していくのにいい時期でもある気がした。

不要なものをきれいさっぱり取り除くことは、そう容易いことではないだろうが、自分の世界を守るには、それも必要なことなのだろう。なので、不要なものに気づかせてくれた彼に感謝(?)なのかもしれない。


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