うっちー

難病で療養中の就職氷河期世代のアラフォー。 親の介護で10ウン年奮闘。病老介護経験者。…

うっちー

難病で療養中の就職氷河期世代のアラフォー。 親の介護で10ウン年奮闘。病老介護経験者。ヤングケアラーの経験も。物を書いて、収入を、得るのが夢。

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犬の天使ポチ子ちゃん

第一話 はじめましてポチ子ちゃん その日は台風が来ていました。風がごうごうと唸りをあげ、雲は薄暗く、どんどん濃くなっていきました。窓を見て不安そうにしている子どもたちはお留守番にさせて、お母さんは、一人で夕食の買い物に出かけることに決めました。普段使っている、自転車も、使わないことにして、丈夫そうな傘をぎゅっと抱えて、商店街へ向かいました。 子どもたちは心配でした。特に上の子は、お母さんの帰りを今か今かと待っていました。すると、お母さんが、やっと帰って来ました。

    • 「パラソル&アンブレラ」⑥

      第六話「アウト&イン」   母の一周忌は、無事済んだ。墓の近くのおばの家に寄った古透子と八未は、おばの話を腰を据えて聞くことにした。なにやら長くなりそうだからと、おばは笑いながらもどこか困り果てている様子で、二人の娘は、?と思った。 「いや、実はね、やっちゃん。あんたのお父さんが、あんたに会いたいって言ってるんだよ。どうする?急に来られても、ねえ?」 ついにこの日がやって来た、と古透子は思って、背筋がぞうっとした。自分のではなかったが、父が登場するという、この日がついに。 八

      • 「パラソル&アンブレラ」⑤

        第五話「青春の輝き」  そんなわけで、一家の大黒柱古透子は、せっせとバイト生活に精を出していた。バイトが終わった帰り道、どれどれとイヤホンをバッグの中から探し出し、古透子はサブスクで井上陽水の「海へ来なさい」を聴き始めるのが習慣になっていた。日差しはごく強く、古透子はバイト代で買ったちょっとしたフリルが可愛い日傘をさして、それを日にかざしてくるくると回して踊らせた。陽水の「♫幸せに〜、なりなさい〜」という歌詞をつぶやきながら。そうして、幸せを感じ入るのが古透子の流儀であった。

        • 「パラソル&アンブレラ」④

          第四話「アヴェ・マリア」  それから、二人の中の見えない何かが変わり始めた。古透子は、対男性にしては彼には本音を喋るようになっていたし、友人(ゆひと)の方もただ一方的に喋り倒すいつものスタイルから、彼女の話を聞く側にまわることが多くなり始めていった。  喫茶店で話し込んだあと、友人(ゆひと)と別れアパートへと戻って来た古透子が予想した通り、あれから一週間、やはりというかなんというか、八未が大荷物とともに二人のアパートへと帰って来ていた。 「、、、やっちゃん?帰ってたの?」

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        犬の天使ポチ子ちゃん

          「パラソル&アンブレラ」③

          第三話「時には母のない子のように」  だが、彼は古透子を諦めなかった。いや、全くと言っていい程、彼女は愛想を示していないにも関わらず、彼は彼女を時に街へ、時に海辺へと誘い続けた。古透子が嫌だと言っても、次の週の休みには、必ず誘いの声をかけるのだった。古透子はといえば、そんな風に気に入られて、最初は嫌な者に捕まってしまったとうんざり気味でいた。だが、友人(ゆひと)の真剣な眼差しと態度に接していると、まあ、そんなに悪い者ではない気がしてきた。だが、鬱陶しいことこの上なしに変わり

          「パラソル&アンブレラ」③

          「パラソル&アンブレラ」②

          第二話「ヨセフ登場」  八未と違って、古透子には「華麗なる」男性遍歴など何ひとつとしてなかったが、いわゆる男友だちというのは存在している。この間の面接で受かった、スーパーのレジ打ちのバイトを終えて帰宅すると、アパートの前に「その男」が、ポツネンと立ち尽くしていた。 「あ、あ、あ、、、」 バイクで来たようで、いかついバイクの横でヘルメットを持ってオドオドしている。 「、、、ジョセフ、また来てたの?」 「うん!」 古透子が呆れたように声をかけると、半分髭面のその男は、サーッと笑顔

          「パラソル&アンブレラ」②

          「パラソル&アンブレラ」①

          第一話「傘をさす人、ささぬ人」   雨が頬に、ポツンと降ってきた。まるで、「こんにちわ、すいませんね、降ってきちゃって!」というような、気兼ねのある降り出し方だった。ポツン、ポツンと、遠慮がちに降ってきた雨に、古透子(ことこ)は傘を差し出すか、迷った。その日の夕方は、バイトの面接の帰りだった。空は、なんと真っ青だった。天気雨、というものは、なんだか気味の悪い心地がそれまではしていたが、今はなんだか自分の気持ちのようで、古透子はこの世との一体感のようなものを感じ入る。古透子にと

          「パラソル&アンブレラ」①

          皆様、ご機嫌いかがでしょうか? 近々、また短編小説を連載したいと思っております。 若い姉妹が主人公です。 今、頭の中で構想を練りに練っております。 年若い女性が、いかに将来や恋愛においての不安と対峙してゆくか、、、 そんな物語にしたいと思っております。 ヨロシク!!

          皆様、ご機嫌いかがでしょうか? 近々、また短編小説を連載したいと思っております。 若い姉妹が主人公です。 今、頭の中で構想を練りに練っております。 年若い女性が、いかに将来や恋愛においての不安と対峙してゆくか、、、 そんな物語にしたいと思っております。 ヨロシク!!

          エッセイ「文字に酔っ払う」

           私がついついやっちゃうことで、自分の描いた文章に、自分で酔っ払ってしまうんです。願わくば、読んだ人も酔っぱらえる文章、作品を作れたらなあ~、と。そう思って、日夜(?)作品のひらめきを掴んだり、ネタを構想したりすることに励んでいますが、果たして。ひやめきやネタって、流れ星のようで、サッと掴まないと、去って行ってしまうんですよね。それが掴んで良いものなのか、悪かったのかも、判断しなければならなくて。それからは、もう体力勝負で、バーッとケータイスマホに打ち込み続けるのですが。作品

          エッセイ「文字に酔っ払う」

          短編小説「明けまして ボケました」を、公開しました!! 例によって、頭の中だけで、1か月かからなく、パーッと描き上げた、文字通り、作者の力作です!! 老母娘に、忍び寄る老いの影とその光とは、、、? 兎にも角にも、是非とも御一読下さい!! コメントも、お待ちしております🙇

          短編小説「明けまして ボケました」を、公開しました!! 例によって、頭の中だけで、1か月かからなく、パーッと描き上げた、文字通り、作者の力作です!! 老母娘に、忍び寄る老いの影とその光とは、、、? 兎にも角にも、是非とも御一読下さい!! コメントも、お待ちしております🙇

          短編小説「明けまして、ボケました」

          「おかーさーん!電話よーっ!新田さんって人から!」  と、呼ばれた懐子は、丁度鼻眼鏡で居眠りをしていたところだった。隣には、コーヒーと読みかけの本。んん?とずり落ちた眼鏡を戻すと、目の前に娘の雛子が仁王立ちで立っていた。 「いい加減、スマホの使い方覚えりゃ良いのに!いちいち家電繋ぐの、面倒なのよ!?」  雛子が、眉根を釣り上げても、懐子はどこ吹く風で、サッと家電を取り上げた。 「もしもし?」  隣で雛子が、耳をそばだてる。 「はい。えっ?、、、そうだったかしら?あらあら、、、

          短編小説「明けまして、ボケました」

          「犬はバナナを食べない」あとがき一風が強く吹いてる一

           全話お読みになってくださった方も、まだ未見の方も、ありがとう御座いました。これで、全9話、「犬はバナナを食べない」は、完結致します。  実は、この小説、プロットや、メモ書きは、全て私の頭の中にあります。事前に、ノートや、スマホに書きつけたりせず、ぶっつけ本番で、noteの原稿にまとめたものが、このお話なのです。  それというのも、私は、ネタのメモや、プロットを書くだけで、「書いた気」になる、という、厄介な性質がありまして、そのまま放置してきた作品の種が、幾つもあるのです。

          「犬はバナナを食べない」あとがき一風が強く吹いてる一

          「犬はバナナを食べない」9

           墓地は、長い坂を登った所に、あった。とても広く、墓地全体が山のようにつらなっており、一旦ヒューと風が吹くと、どこまでも吹き渡るように、あつには感じられた。納骨の際に、来たはずなのに、未だに、墓地に沢山の死者が眠っているということにただただ、驚かされた。もしかしたら、それはあつの母ではなく、ミキヨシの彼女だったかも知れない。いや、もしかしたら、あの時トボトボと夜道を彷徨っていた、私なのかも、知れない。そう思ったら、フッと迷いが解けたような気がして、あつの足取りは、より一層確か

          「犬はバナナを食べない」9

          「犬はバナナを食べない」最終回前の、中書き

           あと一回を残し、「犬はバナナを食べない」は、連載終了致します。読んでくださった方も、まだ未見の方も、ありがとう御座いました。  「若い少女が、恋愛を救済としない物語は、無いのだろうか?無かったら、作ってしまえええ!」と、考えて、生み出したのが、この物語です。「頑張ってる女の子が良いな~。頑張ってるってどんな子かな?あ、昔の私か!!」と、今回もノンフィクション要素、私小説的要素がふんだんに入っています。ですが、それも最早、私の知り合い以外は、どこだかわからないと思います。  

          「犬はバナナを食べない」最終回前の、中書き

          「犬はバナナを食べない」8

           「◯月 ◯日 拝啓 お母さんへ お元気ですか?そちらには、もう慣れましたか?こちらは、ほぼ変わりはありません。一人暮らしは、お母さんが入院中に、もう、平気になってしまいました。悲しいことに、この方が居心地が良いのです。より子が、ルームシェアしたい、と言ってきましたが、断りました。私としては、犬を飼いたい。トイプードルとかじゃなくて、日本犬、柴犬のような犬を。それは、無理なので、金魚を飼いました。近所のお祭りで、一匹だけ、釣って帰ったのです。大きいやつで、一匹で、水槽を駆けず

          「犬はバナナを食べない」8

          「犬はバナナを食べない」7

           秋になった。季節が変わり、物悲しくなる前に、私は、一つ、年をとった。鏡を覗いてみても、相変わらず、子どもくさい顔とスタイルが現れるだけだったが、周りの人間の反応は、子ども時代と少しずつ、変わっていた。女性として、見られているのだろうか?なんて、訝しんでしまう。それだけ、自分が、真の女性という性とはまだまだ程遠い気がしていた。パンツスタイルで通していたし、メイクはおろか、化粧水も使ったことがなく、色気づいてきた同世代とは、私は「ちょっと」違うんだ、と懸命に思い込もうとしていた

          「犬はバナナを食べない」7