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『#お股本2』勝手に製作秘話?~ネットアシスタントってなんすか~

おことわり
この記事はお股ニキさんにちょっと頼まれごとをした筆者が調子に乗って書いたnoteです。記載の内容の責任は全て筆者に帰属します。

 こんにちは、TJです。季節の変わり目特有の暑くなったり寒くなったりがしんどいですね。喉をやられると趣味のカラオケに行けなくなるので注意したいところです。

 さて、本日発売となったお股ニキ(@omatacom)さんの第二作「 #お股本2 」「 #なんP 」こと『なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか』はもう皆さんのお手元に届きましたでしょうか(誰)。処女作の『セイバーメトリクスの落とし穴』はスマッシュヒットを記録。我々素人はおろか、プロのプレーヤーにもその有用性を認められる大作でありました(誰)。新作もAmazonの予約ランキングで1位に立つなど、多くの皆さんに読んで頂けることは間違いないでしょう(誰)。

 そんな新作の上々な売れ行きを眺めながら、1人ほくそ笑んでいる男がいました。そう、わたくしTJです。いや、出版元である宝島社の方もほくそ笑んでいるでしょうけども。

 発表段階でこれ見よがしにツイートしていたのでご存知の方も多いでしょうが、今回TJは新作の執筆にあたり「ネットアシスタント」という謎のポジションで製作チームに参加させて頂きました。発表日がたまたま誕生日と重なったこともあって、その節は色々とハッピーな思いをさせて頂きました。

 お股ニキさんと宝島社さんのご厚意で、完成版の書籍も発売の1週間ほど前に無料で頂いてしまいました。人生初のフライングゲットです。やったぜ。

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 全然関係ないんですが、最近自分の人差し指が中指に比べてだいぶ短いことに気づきました。フォーシームがナチュラルで真っスラする謎が解けてスッキリした気分です。

 お股ニキさんにはその貢献度を考えるとあまりに手厚い待遇を頂きました。特に「おわりに」では1ページ近くを私への謝辞に割いてもらってしまい、貴重な紙資源とインクの無駄遣いになっていないか心配になったほどであります。正直本当に大したことはできていないのですが、書籍を一から創り上げるというプロジェクトに混ぜて頂いた貴重な経験を自分自身が振り返るという意味で、今回はこの「ネットアシスタント」の活動記的なものを綴っていこうと思います。もちろんネタバレとそれに伴う営業妨害には細心の注意を払って…。

始動のきっかけ

 まず声(字)を大にして言っておきたいのは、TJはお股ニキさんと一度も面と向かってお話をしたことがないという点です。

 お互いそこまで突っ込んだお話はしていないのであくまで推測ですが、住んでいる場所もさほど近くありませんし、歳もそんなに近くないんじゃないかと思います。書籍の製作に係るやり取りは全てTwitterのDMとメールで進行していきました。
 完成版を送って頂くために編集さんには本名と住所をお伝えしましたが、お股ニキさんはご存知ないでしょうし、ぼくにとってもお股ニキさんの正体は謎のままです。「あの人何者なの?」とぼくに訊かれても「いやーわかんないっす」としかお答えできないのでご容赦下さい。

 名前も顔も知らないが、野球という共通の趣味を通して知り合い、一つのプロジェクトの進行を手伝う存在。ただのアシスタントではなく「ネットアシスタント」と表現されたのにはそんな経緯がありました。

 どこに目を付けられたのかは定かではありませんが、お股ニキさんにはプロジェクトの始動以前からTwitterでフォローして頂いていて、たまにしょうもないツイートにいいねやリツイートをもらうとぼくの承認欲求が満たされる、くらいの関係でした。改めて見返してびっくりしたのですが、ぼくもお股ニキさんも、互いにリプライでのやり取りは一つもしていませんでした。ぼくが一方的に引用リツイートして持論の展開に悪用していたことはあったみたいですが。

 そんなぼくがオファーを頂くきっかけになったツイートがこれ。

自分は大学院生なので人におカネをもらうための申請書を書いたりするのですが、この日ちょうど何かの結果が返ってきて、落ちたのを確認したんですね。まあまあ大きめの額が入るやつだったので残念は残念だったんですが、まあそんなもんかと思い直して、とにかく何の意図もなく、本来の意味で「呟いた」ツイートでした。

 そこに来たのがお股ニキさんからのいいね。別に野球の話でもないし、珍しいところに反応してくれるなあと思ってその日は床に就きました。

 で、翌日起きてみると、こんなダイレクトメッセージが来ていたわけです。

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それはもうビビりましたね。朝から心拍数が急上昇して危うく肘痛になるかと思いました。心拍数が上がって肘痛になるのはおかしい気もしますが、とにかくそれほど慌てていたのです。

 たまたま暇だった(本当にタイミングが良かったです。人生のBABIPが味方してくれていたんだと思います)ぼくは二つ返事でそのオファーを承諾しました。それまで直接のやり取りはほとんどなかったお股ニキさんとの共同作業チームが立ち上がった瞬間です。製作期間は1ヶ月とのことで、早速分析と可視化への取り組みがスタートしました。

表の作成

 まず着手したのは表の作成。第1章の表①、第2章の表④、第5章の表あたりを作成しました。この辺は史実の確認ですね。勝率なんかはExcelが計算してくれるのでそれに任せればいいんですが、さすがに書籍になると考えるとミスが怖くて疑心暗鬼になりました。電卓で検算する上司(上司の概念が存在しない世界にいるので本当にいるのか知りませんが)の気持ちが分かるような気がします

グラフの作成

 試行錯誤したグラフの作成。前回のnoteで紹介した(こちらもお股ニキさん、並びに記事を紹介・実践して頂いた皆さんの拡散力のおかげでTJ史上最大規模の反響を頂いています。ぜひチェックしてみてね)変化量グラフの作成に使用している統計ソフト「R」の技術がだいぶ役に立ってくれました。書籍の中身を出すとやべえ気がするのでぼくなりのシーリングをしますが、これとか

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これ

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はTJがRで作成しました。正直自分が作ったグラフが書籍に掲載されているのを見た時はうれしかったです。後のアナライジングの項でも紹介しますが、特にこの2つのプロット(何かの推移分布を表しています。読んだ方はぜひ探してニヤッとして下さい)は、お股ニキさんに提示された仮説を調べてみたら本当にその通りの結果が出てびっくりしたところであります。

アナライジング

 最も頭を使ったのはやはりアナライジング。表・グラフを作成した箇所を中心に、本当に僭越ながらお股ニキさんの仮説の検証、背後に存在するメカニズムの考察をお手伝いさせて頂きました。

 コメントさせて頂くにあたって、ぼくなりに特に注意していたのは「そこに因果関係があるか」です。2つの要素の共変動が観察された時に、「一方が動いたからもう一方が動いた」と言い切れるのかを足りない頭で一生懸命考えていました。正直今になって「ここって本当にこの結論で大丈夫なんだろうか」と感じた箇所もありますが、そのあたりを後からでも考え直して再度発信できるのは現代のメディアのいいところですかね。もちろん、例えば本人に言質を取りに行くことで確証を得られるポイントもあるので、そうした方法を取ることも可能です。特にお股ニキさんならダイレクトにプロの投手と連絡を取ることさえできるわけですし。

 世の中を行き交う情報量が爆発的に増加し、意思決定問題が矢継ぎ早に現れる現代にあっては「巧遅拙速に如かず」、新鮮な情報を新鮮なうちに処理しなければ間に合わないという場面も多く存在します。1球投じるたびに頭のデータを更新し、わずかな時間で次の戦略を考えなければいけない野球はその典型例でしょう。短文投稿に優れたTwitterが野球観戦をする上のツールとしてあまねく(かどうかは知りませんが)普及したのはそういう性質とマッチしたところが大きいのでしょう。

 一方で「巧遅」の思考、集積されたデータを慎重に眺めながらときに結論を保留し、時間をかけて編み出した分析が必要になる時もあります。このあたりは『セイバーメトリクスの落とし穴』でも言及されていた「最適バランス」の模索がカギになるのでしょう。書籍の出版は後者のプロセスを体現する存在であるべきだと思いますし、少なくとも今回ぼくはネットアシスタントの立場なりにそれを意識したつもりです。抜群の感性を持つお股ニキさんに対して、こうした視点でできるだけ"意地悪く"コメントするTJがほんのわずかでも書籍のレベルアップに貢献できていればこれ以上光栄なことはありません。

 さらに、本書に登場するトピックのいくつかは、ぼくの方で一からレポートのようなものを作成し、自分の考えを反映させてもらうという貴重な体験もさせて頂きました。こちらでは普段ツイートやnoteで紹介している野球観・理論モデルの部分を引き延ばし、ときに具体例を挙げながらその紹介に努めたつもりです。

 特にDH制を考察したレポートはこちらが用意した草稿の文字数が4,000字に迫る勢いで、自分でもやっていてかなり楽しめました。もちろん最終的な文章には修正が入っていますが、なんとなくTJっぽいテイストの思考が記述された箇所があるので、何度も読んで暇になったら探してみて下さい(笑)。

TJ's「おわりに」

 そんなこんなで原稿は無事に当初の予定通り完成。頂いた完成版を読み進めていくと、自分が必死に1つのグラフの体裁を整えるのに奔走しているその裏で、お股ニキさんが驚くほど精緻でかつボリューミーな文章を書いていたことを実感します。本を書くって大変なんだなあ。

 書籍の「おわりに」でもお股ニキさんが触れて下さっていますが、ぼくの本業は経済学を研究する大学院生です。プレーの一つ一つが投球の形で区切られており選手の行動選択がある程度はっきり観察されるという点で、経済学の知見を応用するにはもってこいの環境であると言えます。

 が、経済学の一分野としてのSports Economics、転じてぼくがいう "Ballgame Economics" "Baseball Economics" の学術的価値が認められるためには、 経済学の知見が活きるだけでなく、それを通して経済学自体にも貢献がもたらされる必要があります。経済学者の中にスポーツ経済学を主戦場としている研究者が(恐らくほとんど)いないのは、この経済学の側に対するメリットが充分に認められていないからでしょう。

 経済系の大学院、特に博士課程卒業後の学生は、これまでは研究者として生きる道がほとんどでしたが、徐々に民間就職をはじめとするそれ以外の道も拓かれてきています。その「それ以外の道の中に(プロ)野球の世界を加えるのは、ぼくが経済学研究の道を目指す上で強く意識している目標であり、この道を志したきっかけの一つでもあります。

 先に「経済学が野球の役に立つ!」と高らかに宣言しましたが、それもあくまでぼくの仮説にすぎず、セイバーメトリクスの発展に大きな影響を与えた統計学機械学習、あるいは球団経営の視点で重視されるマーケティングの分野と比較して経済学者がどれぐらいのパワーを発揮できるかは未知数です。そんな中で運よく巡り合えた今回のネットアシスタントとしての活動が、この未知数の部分を明らかにする手掛かりとして機能し、"Baseball Economist"の価値を確かめる手がかりになるかも知れません。その意味でも、お股ニキさんには本当に素敵な機会を頂いたと思っています。

 今回はあくまで名もなき一アシスタントとして補助的な役割を果たしたにすぎませんが、将来的にTJなり(ピー※)なりのクレジットで何か形に残るものを世に出せたらと思います。まあ直近の目標はbaseball economicsの論文で学術誌への掲載を果たすことですかね。

※本名が入ります。念のため。

 今回は以上です!後半はネットアシスタントの紹介というよりはぼく自身の活動紹介になっちゃいましたね。まあこのnote自体が自己主張の塊みたいなもんだし、いいんじゃないでしょうか。相変わらず冗長な記事を大量生産している私ですが、今後ともお付き合いいただける方はどうぞよろしくお願いします。それではまた次回。

Acknowledgements

 本noteの執筆にあたって、まずネットアシスタントとしての参加をオファーして頂いたお股ニキさん、並びに無名の部外者の介入をお許し下さった宝島社 編集部の皆さんに最大限の謝辞をお送りいたします。本当にありがとうございました。

 また、少し前にもツイートしましたが、分析に使用したデータに関して、特にNPBの選手スタッツに関する情報のほとんど全てをaozora(@aozora__nico2)さんに提供して頂きました。分析の前段階にあるデータの収集、クリーニングの作業は実証分析のキモとも言える部分で、このデータがなければ今回の(少なくともぼくの)分析は決して完成することはありませんでした。本当にありがとうございました!

おまけ
 今回の書籍に対するぼくの貢献度がタイトルに入ったユニコーンの名曲です。「現メンバーでの初アルバムから30周年」をコンセプトに入れた新アルバム『UC100V』の収録曲にあって、中央に置かれた女性のマネキンが結成早々に脱退した向井美音里さんへのリスペクトを感じさせてとても好きなMVです。EBIさんがすげえイケメン。

おまけ②宣伝
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貨幣の雨に打たれたい