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薬局の本棚🔹アルコール依存症(1)

趣味の読書と、仕事の薬剤師。せっかくなので、掛け算してみよう!
ということで、薬局に来た方にわたしが紹介したい本(ヘルスケア、疾患、治療などに関して)を挙げてみようと思います。よろしければお付き合いください。

『失踪日記』 吾妻ひでお

まずはこちら。(故)吾妻ひでおさんの漫画作品。絵柄がポップで可愛らしく、読みやすいし笑えるのだけど、じつはヘビーな内容。のっけから取材旅行という名の失踪&野外生活の描写が描かれます。それと前後して、アルコール依存症についても。可愛い「鬱」のキャラクターも寄り添ってきます。
「ぜんぶ実話です(笑)」という謳い文句。
(ただし、ほんとにヤバくて描けなかったこともあるらしい。)

世の中では、
 お酒は楽しく適量を
とは言うけれど。

最初は美味しくて楽しくて飲んでいたお酒が、だんだんと苦痛から逃れるためのアルコールという薬物になっていくことが往々にしてあり…そして、その薬物に、身体的・精神的に依存するようになってしまう。それがアルコール依存症。

WHO(世界保健機関)による、アルコール依存症の診断基準は以下の通りです。

◆過去1年間に、次の6項目中、3項目以上に当てはまる場合に、アルコール依存症と診断される。

①お酒を飲めない状況でも強い飲酒欲求を感じたことがある。
②自分の意思に反して、お酒を飲み始め、予定より長い時間飲み続けたことがある。あるいは予定よりたくさん飲んでしまったことがある。
③お酒の飲む量を減らしたり、やめたりするとき、手が震える、汗をかく、眠れない、不安になるなどの症状がでたことがある。
④飲酒を続けることで、お酒に強くなった、あるいは、高揚感を得るのに必要なお酒の量が増えた。
⑤飲酒のために仕事、付き合い、趣味、スポーツなどの大切なことをあきらめたり、大幅に減らしたりした。
⑥お酒の飲みすぎによる身体や心の病気がありながら、また、それがお酒の飲みすぎのせいだと知りながら、それでもお酒を飲み続けた。

もし心当たりがあれば…
アルコール依存症は病気なので、迷わず専門医へGO!

入院や治療については、「失踪日記2 アル中病棟」で予習?をどうぞ。

この本の中に登場する医師の話。「そもそもアルコール依存症とは、不治の病です。一生治りません。ぬか漬けのきゅうりが生のきゅうりに戻れないのと同じです」というセリフが出てきます。飲酒をやめ続けることこそが唯一の治療と言えるでしょう。
もちろん、嫌酒薬(アルコールの分解を抑制し、〈下戸〉にしてしまう薬)や、断酒会などの自助グループといった助けになるものがあります。
しかし、お酒を今後いっさい飲まない、というのは、もはや生き方をガラッと変えること、と言っても過言ではないと思います。
いかに薬物を使わずに、日々生きていくか?

「今まで心身ともに酒だけの人間だった自分から酒を抜いたとき、酒のない生活での心の空洞を何で埋めるのかを考えることです」
「自分にとって酒以外の何が生きてゆく目的になりうるか、真剣に考えてみてください」

「しらふで生きる」ことについて…次回に続きます。



※アルコール依存症の治療について、詳しく知りたい方、医療機関を探している方は、ぜひこちらをどうぞ。


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