見出し画像

12月16日

強い子のミロ♩(昔のcmなので皆さんご存知ないかも)と口ずさみながら写真だけ撮って買うのを忘れて帰ってきた。サザエさんのこと笑えない。日光浴も兼ねて毎日5000歩ほど徘徊している。サンフランシスコに住んでいる時は坂道なんかもよく歩いて毎日1万歩は超えていたが去年の秋頃から左膝の調子が悪くなり、ガシガシ歩くのはちょっと控えている。

膝で思い出すのは妹が結婚、出産する前なので12年以上前のこと。年末に実家に帰っていた私に妹が「大晦日歩かへん?」と言ってきた。法事を兼ねた一人での里帰りだった私は「どこまで歩く?」と聞いた。「伊勢神宮まで行って初詣して帰ってくるのがあるんだけど。」伊勢神宮 えっ伊勢神宮ってうちから車で1時間もかからないけど歩いて行く距離ではない。書きながらGoogleマップで確認すると実家からだと最短が30キロくらいで6時間かかりますと出る。年末になると歩いて伊勢神宮を目指す行列が県外からも沢山いらしているのを見かけたことがあって「へー大変だね」とまさに他人事だったのだが妹は「一緒に行こう」と言う。珍しい妹からのお誘いで何だかよくわからないうちに参加することになっていた。実家のある町では、参加者を毎年募って行っているらしい。夕方4時に集合場所に行き、途中休憩を挟んで旧伊勢街道なども通って伊勢神宮内宮に到着後、初詣をして電車で帰ってくるというスケジュールだった。指定された持ち物はおにぎり、カップラーメン、お茶などの水筒、懐中電灯、タオル、雨具だった。私が5年ほど帰らないうちに日本はどこに行ってもコンビニエンスストアがあり、トイレだってあるし歩くのも休み休み行けばいいよねなどと軽く考えていた。カップラーメンもおにぎりも途中で何か食べに行けばいいのになどど思っている私は間違っていた。

集合場所で30人くらい集まっている。常連さんも結構いるらしい。みんな笑顔で意外と軽装だ。妹と喋りながらなんかワクワクするねと笑っていた午後4時過ぎ。天気は良かったが夕方なので気温がどんどん下がっていく。そしてどんどん車の通っていないけもの道のような場所に進んで行く。午後7時過ぎ、私も妹もなんとか励まし合って懐中電灯で足元を照らす。真っ暗なのだ。あれ街の灯は?あれあれコンビニはないのか?と思って歩き続けて3時間ほどした時にどこかの公民館に辿り着いた。できることならここから家に帰りたかった。まずお手洗いに行き、中では準備してくださっていた熱いお湯がありがたかった。カップラーメンとおにぎりを夢中で黙って食べた。ささっと自分で握ったおにぎりとカップラーメンの普段飲まないスープがものすごく美味しかったのを覚えている。

どう考えてもゴールではない公民館を出発して再び暗いけもの道を歩く。途中で参加している中学生男子が携帯でレコード大賞を見ながらAKB48の話で盛り上がっていた。じゃれながら走ったり、笑ったり全然疲れてないようだ。若者よ!そのエネルギーを分けてくれ。私と妹はどんどん無口になり、必死にグループから置いていかれないように歩いて行く。午後9時過ぎ、私達よりお姉様の3人組がペースの落ちた私達を追い越した。集合場所で『あの人達はついて来れるかな』と一瞬でも思った私には土下座させたい。私が甘かった。午後11時過ぎ、朦朧としてきたがなんとか伊勢市内には入っている。ちょうど従兄弟の家の近くにいるようだ。従兄弟の家に行っちゃおうかと笑えない悲しい冗談を言いながら重い足を引きずっていると伊勢神宮内宮の手前で焚き火が見えてきた。本来なら外宮にお参りしてから内宮にお参りするべきだろうが外宮から内宮も歩くと結構な距離なのでグループに従って内宮前の焚き火に少しあたってから境内に向かった。

ものすごい人数の参拝客の中に私と妹もいた。その当時は感染などの心配もなく完全な蜜蜜状態だった。妹がスリがいるらしいから気をつけてという。こんなに混み合っていたら確かにそういうこともあるかもしれないなあと思いながら10センチづつ進んで行く。本当ならしゃがみ込みたいくらい疲れているが蜜蜜なのでなんとか周りに支えてもらっているような状態だった。やっとお参りの順番が来た時には新年を迎えていた。お参りの後はまたよろよろとゾンビのように駅まで歩いた。電車で最寄りの駅まで帰り、誰かが車で集合場所まで送ってくれることになっていた。もう足が全然動かない。喋る元気もない。中学校では陸上で大会も出たりしていたし、大人になってからマラソン大会も出たりして足には結構自信があったのにもう一歩も歩けない。倒れるように電車に乗り込んだのが夜中の1時過ぎ。何時間ぶりに「あ”あ”あ”」声にならない唸り声をあげて椅子に座った。このままずっと電車に乗っていたいと思った。もうどこへでもいいから。残酷なことに「はいっ次で降りて!」と同じグループの人の声がした。気持ちは立ち上がろうとしたが足が動かない。手で足を進行方向に動かして手すりなどに捕まりながらはうように電車を降りた。本当にゾンビみたいだ。12時間前に一緒に家を出た妹も立派なゾンビになっている。なんとか車に乗せてもらい、無事に実家に到着したのが午前3時。お風呂にうなりながらしばらくつかってやっと生き返った。後日襲ってきた筋肉痛も数日で回復した。あんな経験はなかなか出来ないので誘ってくれた妹に感謝。昔の人は、歩いて旅していたんだなあ。真っ暗な道。コンビニなどもない道をひたすら歩いたのか。体力をかなり消耗するので宿場町や途中で栄養のあるものや甘いものを食べる意味がわかった。書いていて思い出したのだが歩いているときに誰かが言っていた。「熊野古道はこんなもんじゃないよ。」行ったことがないので熊野古道にもいつか行ってみたい。無理かな。でも行ってみたい。やっぱり毎日ミロ飲んで歩いて鍛えなきゃ。

画像1

妹との伊勢神宮への旅は必死だったので一枚も写真がないのが残念。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?