減るようなものでもないので

勢いよく行こうと思う。愚かな一日だった。そう、このまま何もしないとあと50分そこらで本当に愚かな一日で終わってしまう。だから、勢いよく行こうと思う。

帰宅の途、車庫に収まった車を見るたび、通り過ぎるたび、自身の愚かさが露呈していくように感じられ恥と怒りの感情がふつふつと内側から湧いてくる。今更もう時間は過ぎてしまったし、会計は済ませてしまった。時間もお金も返ってこないなら勢い良く通り過ぎるしかないのだ。そして最も救いがたいのは今日の午前中、明日にまた同じ過ちの種を先んじて予約してしまったことだ。ジーザスゴッド、いと愚かなり。そんな愚かな私の手綱は私がナイフで切ってしまって持ち手がいない。脳みそは他の臓器に比べ繊細なため移植手術が不可能であり、闇市場でも値段がつかない。脱走して野良猫に食べられてしまったハムスターと大差のない出来の私の脳みそにレクター博士は食用としていくらの価値をつけるのか。

エゴイスティックでない人間など存在しないが、自身の醜悪で品のない本能的な言動に落胆する。自分の快楽のため、自傷のため、となるとこんなにも動物的で野蛮な一次的思考のみで判断を下すような人間が一丁前に人間として扱われることを他者に望んでいる。おかしなはなしだ。イワンパブロフの実験では、給餌の際に必ず鈴の音を聞かされた犬はいつからか鈴の音を聞いただけでよだれを垂らすようになったことから、犬でさえ一時的思考を所有している可能性を示唆している。ペットのための保険が生まれるのも頷ける。同時に、どうしたものだろうかとも思う。救いようがない。

「他所様に迷惑をかけるなら自身の身を切れ」と私の大和魂が私に告げる。しかしながらそんな文言は卑怯だと思う、まるで自身の肥大したエゴを美化しているようで。真の大和魂を持つものならばまったく他人の関与していない状況で、純粋な自身への憎悪と詛呪の念をもってしてそれは完遂されて然るべきなのだ。

私はあなたたちをちゃんと大切にできているだろうか。表層的で軽薄に聞こえるかもしれない私の突然の愛の告白はまったくもって突然ではないことを知ってほしい。私はあなたたちに忘れられないように呪いをかけている。清水の舞台を飛び降りるような気持ちは正直ないが、伝えられるうちに、あなたたちが私を忘れないうちに、忘れないように今のうちに伝えておかねば、と思うのだ。犬畜生以下の愚かな私の独占欲と承認欲求はあなたたちの満ち足りた生を滋養としている。幸あらんことを。私のことを覚えていて。