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たてものの役割を考えるイベント「吉田温泉×アート」

一つの役割を終えた、かつての町の銭湯。
新たな役割を模索する中で、吉田温泉×アートというユニークなイベントが開催されています。
前日の準備中におじゃまして、吉田温泉の今と×アートを見せていただきました。

静岡県沼津市吉田町にある吉田温泉。
温泉と名がつきますが、そこは町の銭湯。

明治14年頃の操業以来約140年間、町の銭湯として、人々の交流の場として賑わってきた吉田温泉。
残念ながら2016年6月でその営みを終えています。

当時はモダンなたてものであったと思われます。

吉田温泉の現在のたてものが建てられたのは、72年前の1950年。
奇しくも今年、年男&年女を迎えました。
あちらこちら不具合を抱えながらも、温泉としての役割を終えた今もその姿を当時のままに見せてくれています。

男湯の入り口から中へ入ってみましょう。
ガラガラっと木枠のガラス戸を引くと、真っ先に番台と木製の衝立が目に飛び込んできてます。
一気に昭和レトロの世界が広がります。

この土間をどれだけの人が踏みしめたのでしょうか?
営業当時のままに残されています。

こちらは女湯の脱衣所の木製のロッカーと籐の籠。
力を込めて金属製の鍵をガチャとするまで差し込む…
なんでもソフトタッチの今、何とも懐かしいですね。
しっかりと組まれている籐の籠は、飴色に光っています。

70年以上たっても狂いのない造作家具は、職人さんの技が生かされています。
衝立の向う側は男湯の脱衣所、こちらは女湯の脱衣所です。「石鹸忘れたー」とか「もう帰るよ」なんて、大きい声が飛びかっていたのかもしれませんね。
こういう体重計があると乗ってみたくなります。

いよいよお風呂場へ。
木製のガラス戸越しに見る女湯は、全体にやさしい印象でまとめられています。
淡い色使いの富士山と薄いグリーンの壁タイル、青を基調とした床のタイルが全体を引き締めています。
そして、ピンクの縁取りのある鮮やかな光沢のあるグリーンの円形の湯舟。
町中のお風呂やさんのイメージからちょっと外れたすてき感があります。

女性たちが髪を洗ったり、子供たちがはしゃいでいる姿が目に浮かんできますね。

円形風呂には常に水がはってあります。水分が無いとタイルが剝がれやすくなるそうです。当時のままに保つためには、手間暇がかかるのですね。

思いのほかに天井が高く、高窓からの光がやさしく差し込みます。
洗い場の向うは男湯。中央を通る梁が一体感を高めています。

吉田温泉の兼子さん、このたてものの新たな役割を模索しています。
一枚一枚貼ってあるモザイクタイルがキラキラ光ります。
ピンクの四角いタイルが効いている!
ランダムに控えめなタイルのアクセント。職人さんのセンスの良さと人柄が伝わってきます。


そして、×アート が始まります。
72年を経たたてものに新しい空気が流れます。
イラスト、インスタレーション、油絵、写真と多様な作品は、それぞれこの土地との繋がりのあるアーティスの方々の作品です。

伴野綾さんのイラスト
よーく見ると、一つ一つが銭湯へ行く時のカゴ(持ち物の)イラストです。これは伴野さんが、実際に石川県山代の総湯で出会った100個のカゴだそうです。

井口貴夫さんのインスタレーション
丸い浴槽から発想を得た作品は空間全体に広がっています。思わぬところにも作品が!


北見美佳さんの油絵
幻想的な雰囲気が吉田温泉に寄り添ってくれているような作品です。


小島一晃さんの写真
吉田温泉を舞台に撮られた写真の数々。写真を見ていると、今と何十年前との時間間隔が無くなっていくように感じます。

ご紹介したのは、一部作品です。この他に、地元の〝風の子造形教室〟の子供たちによる造形作品も準備中でした。


何だか心地良い空間になっています。
アートがわからなくても、
昭和の銭湯を知らなくても、
やわらかな空気を感じます。

不定期でイベントが開催されています。

お近くの人は、お散歩がてら訪れてみてください。
ふらふら~と気楽に。
ここは町の社交場ですから。


近くを流れる狩野川
この季節の風物詩

新たなたてものの役割が見つかる・・・そんな予感を感じます!

最後まで読んでいただき有難うございました☆彡

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