見出し画像

引き算の美のDNA

お魚模様の縄文土器です。
まるでイタリアやスペインの港町の食堂で使われていてもおかしくないような、こなれた感じのデザインの魚が施されています。

画像3

魚影文土器
縄文時代中期
浅鉢 高さ14.5㎝、口径44.0㎝
神奈川県厚木市恩名沖原遺跡
あつぎ郷土博物館

写真では見えませんが、2匹のお魚が対に配置されています。

お魚のフォルムは大胆にデフォルメされているように思えますが、よく見ると骨や鱗のようなものが、とても繊細に作りこまれています。

ここで思い出したのが、2018年に東京国立博物館で開催された「縄文―1万年の美の鼓動」。
火焰型土器をはじめとする創造性豊かな土器をはじめ、有名土偶が一同に介し、多くの来場者を集めた画期的な縄文展でした。

その展覧会の「美の競演」というブースで、中国の彩陶鉢と並んでこの魚影文土器が展示されていました。 

彩陶鉢とは 中国新石器時代の特徴的な文様が描かれた土器です。黒色で美しい幾何学文様などが施されています。

彩陶鉢

中国 青海省 or 甘粛省 出土
 新石器時代後期
紀元前3,000年頃
横浜ユーラシア文化館H.Pより引用

展覧会では、上記のような彩陶鉢に魚の文様が描かれていました。
何匹もの魚が、鉢の丸みに沿って流れるように泳いでいるものでした。
生きているかのような躍動感のある魚が、とても美しく表現されていました。

彩陶鉢は彩色、縄文土器は直接文様を施しているので、比べるのは難しいものです。

その時に思ったのは、たった2匹の魚が配置されているだけの縄文土器の、ずしんとした力強さ、揺らぎのない安定感がもたらす美しさ。

引き算の美がすでに存在していた、と思ったのです。

足すのではなく引いて作る美、いわゆる〝間〟を取り入れて完成する美しさは日本のお家芸ともいえます。

焼き物の世界では、17世紀中頃から佐賀県の有田焼が海外輸出用に作られ西洋へと渡りました。
人気を集めた有田焼を現地の人が模倣し多くの作品が作られましたが、どうしても〝間〟が無いデザインとなってしまうのです。
それは日本人の私たちから見ると、美しさがあきらかに違ってくるのです。

身近なところでは、生け花とフラワーアレンジメント、日本庭園と西洋庭園などの違いが一目瞭然といえると思います。
平等に配置していく、シンメトリーとアンシンメトリーなど、規則性のある美しさも良いものですが、間のある美しさには心の奥底に感じる何かがあるように感じます。

それはひょっとすると、私たちのDNAに息づいている美しさの感覚なのかもしれません。


魚影文土器のような一級品と思われる土器は、祭礼の時などの特別の時に使用されたのではと考えられます。
魚が表されている理由はわかりませんが、人々の生活に身近な存在であったことに違いはありません。

もし、私がこの土器を使うとしたら、魚介類、山の幸を沢山入れたブイヤベース風鍋にして家族でいただきたいです。
最初はなんでもない鍋から、アッと魚の文様が登場する、考えただけでワクワクします。

最後まで読んでいただき有難うございました☆彡

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?