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人間観察がしたくなる -岩手の縄文時代 -

降りしきる雨の中、
一歩一歩踏みしめた湯舟沢環状列石ゆふねざわかんじょうれっせき


その環状列石に併設しているのが、
「滝沢市埋蔵文化財センター・縄文ふれあい館」
この遺跡と周辺から出土した遺物が展示されています。

雨の中見た看板の〝手招きしていた土偶〟は、
この縄文ふれあい館のマスコットキャラクターのようです。
それにしても土偶らしからぬマッチョな体形、
モデルになっているのはどんな土偶でしょうか。


いました、いました!

マスコットキャラクターそのまんま・・・・の土偶!
愛称は〝どぐうちゃん〟(これまたそのまんま・・・・
笑顔の素敵な筋肉隆々な土偶です。

顔は、東北地方における縄文時代後期(今から約4,000年前)のポピュラーな作りのようです。

湯舟沢Ⅴ遺跡出土


気になるのはこの身体つき、妊婦のようで上半身はムキムキ…見たことのないタイプの土偶です。

狩猟採集が主な糧であった時代は世界のどこにおいても、力のある〝男性が狩り〟〝女性は採集〟と役割があったとされてきましたが、近年は狩猟に女性も加わっていたという考えもあるようです。
この土偶が生まれた縄文時代もそうであったのでしょうか。
あるいは男女の区別なく、若く元気で力があるものが狩猟をしていたのかもしれませんね。

いずれにしても、妊娠している若い女性に過度な力仕事は好ましくはない…とすると、これから子供を産み育てる、逞しい女性〝縄文の肝っ玉母ちゃん〟の姿を表したのでしょうか。


次に登場するのは、
スレンダーな縄文人!

けや木の平団地遺跡出土


ここから約1.5㎞に位置する遺跡から、2015年に発見された縄文時代後期(今から約4,000年前)の土器です。

人体文付深鉢じんたいもんつきふかばち
煮炊きする大きな土器の上半分に描かれた〝縄文人〟。
全国で約10万点が発掘されていると言われている縄文土器の中で、このように〝縄文人〟が描かれているのは約50点程という希少品。


身長17.9㎝、
胸の表現、体の中心を通る点々は妊婦を表す正中線、下腹部の膨らみ…やはり子を身ごもっている女性を表しているようです。
右手には何か丸みのあるものを持っているのでしょうか。


縄文人の左右に大きく弧を描くのは、ヘビと考えられています。ヘビは脱皮を繰り返し成長するので、再生のイメージとして捉えられていたようです。


この土器が出土したのは〝墓地と思われる穴〟の脇。
そこには〝煮炊き〟をした跡もありました。

墓地で煮炊きをした⁉
今ではちょっと考えにくですが、
墓地の近くで皆で集まり、何等かの祭祀をおこなっていたと考えられるようです。
妊娠した女性とヘビが描かれた土器で煮炊きをして、皆で食べて、元気な赤ちゃんの誕生や成長、動物や植物の再生・豊穣などを祈ったのかもしれませんね。


次に見るのは、小さな土の板。
足の指の跡がくっきりとついています。

足形付土版あしがたつきどばん
幼児の左足を粘土板に押し付けたもので、踵は欠けてしまっていますが、足指や足底の丸みから可愛らしい赤ちゃんが想像できます。

湯舟沢Ⅷ遺跡出土


推定、身長80㎝、体重10㎏、
生後10か月から12か月の男の子、
粘土板の上に男の子を立たせてつけた跡であると考えられています。

今もあるように、歩きはじめたお祝いや、元気に成長するように…と作られたのでしょうか。

実はこの足形には、
子を亡くして悲しむ親の姿が写し出されています。
立って歩いた記念に足形を作った、ところがその子どもが亡くなってしまいます。子どもの魂をあの世におくるために、足形を割って地面に埋める儀式をした、と考えられているのです。

縄文時代には土偶や土器を割って、生命の再生や豊穣を祈る儀式があったと考えられています。この欠けた足形もそのような祈りの形であったのかもしれません。

このような足形はここ岩手と新潟、山形、青森、北海道と雪の多い地方だけで発見されています。
深い雪に閉ざされた中での子どもの死、その悲しみと子どもを弔った姿がこの土版であるようです。



〝縄文の肝っ玉母ちゃん〟の肝っ玉ぶり、
縄文人の絵柄付土器でふるまわれた料理、
赤ちゃんが初めて立って歩いた時の歓喜の声…

もはや縄文時代の生活や縄文人というより、
ここに生きたその人・・・を知りたくなっています。
どんなことを思い、どんな生活をしていたのか。

私たちと同じように、
楽しいこと、悲しいこと、
頑張っていること、どうしようもないこと、
毎日毎日いろいろあるはず。

人間 ー 縄文人を観察してみたい!



参考図書
滝沢市の文化財  滝沢市教育委員会

最後までお読みくださり有難うございました。

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