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活動のこと

ペタウケアーバンヘルスセンター
首都からバスで6~7時間
東部州ペタウケ郡の中心部に位置するヘルスセンター
管轄地域の人口は約4万6千人
郡病院から1.2kmのところに位置し、地域のプライマリーヘルスケアの拠点となっている。

私の要請内容は、

1.地域の健康観や病気観の調査を行い、生活の実態を知る。

2.健診や疾病データのまとめ、アウトリーチ業務を支援しながら、地域に必要とされる保健衛生の課題を探る。

3.課題について習慣や地域性を考慮した解決策を地域に普及させる。

青年海外協力隊の要請は
ボランティア調整員が要請開拓をする。
郡保健局と相談し、ボランティアの要請が決まる。
ボランティアを募集して、選考、訓練…
実際に現場に派遣されるのは要請が挙がってから数年後。
現場のスタッフは着任してはじめてボランティアが来ることを知る、なんで状況が頻発…

覚悟はしていたものの、任地訪問で同僚に「What are you supposed to do?」って聞かれたときは戸惑った。やっぱりここで期待されていることはない、自分で居場所を作って仕事を見つけるしかないんだと思ったら気が遠くなった。

でも決して私のことをのけ者にはせず、いろいろ教えてくれて、受け入れてくれて、明るく陽気な同僚と、私の2年間が始まった。

ヘルスセンターには、クリニックインチャージ・準医師・環境衛生師・看護師・保健師が所属している。

私のカウンターパートは環境衛生師である。
環境衛生師とは、コミュニティーを中心に活動する職種であり管轄地域の生活環境に関するデータ収集と分析、ボランティアの支援、学校保健活動などを担当している。

管轄地域には12個のコミュニティーがあり、各コミュニティーにはコミュニティーボランティアとして活動する住民がいる。ボランティアはマラリアや結核といった感染症対策、母子保健、HIV患者へのカウンセリング、成長モニタリングの支援など地域の保健活動を幅広く担っている。
ボランティアは毎月地域の状況をレポートにまとめ、環境衛生師に提出することになっており、ヘルスセンターはその情報に基づき地域の状況を把握し、郡保健局に報告している。


ヘルスセンターが担っている業務内容は、HIV/AIDS・TBといった感染症患者の服薬管理(ART・DOTS)、軽症疾患の診察と治療、妊産婦検診、家族計画、乳幼児に対する予防接種、5歳未満児の成長モニタリング、助産師による分娩介助、遠方コミュニティーへのアウトリーチ活動である。医師は所属していないため、診断、治療、処方と準医師または看護師が行っている。
HIV感染が判明した患者には当日から薬物療法が開始される。はじめは2週間分の薬を処方し、その次は1か月、問題なければ3か月ごとに診察と処方を行っていく。
結核は空気感染のリスクがあるため、敷地内にある別の建物で診察を行っている。服薬中断や多剤耐性結核など課題はあるものの、当地域での結核患者は年間40名ほどと多くはない。
ヘルスセンターに訪れる患者の内訳は、多い順に①呼吸器疾患②骨格筋疾患③下痢④マラリア⑤泌尿器疾患⑥麻疹⑦原因不明熱⑧高血圧⑨歯科疾患⑩耳の異常となっている。(訳し方がイマイチわからず、なんか違和感…)
重症の場合、郡保健局から車を手配し、車で約10分のところにある郡病院に搬送する。救急車のような医療機器は搭載されていないが、ヘルスセンターから看護師が同伴する。
妊産婦検診には毎週80名ほどが訪れる。初回検診では、パートナーも同伴しHIV検査を実施する。待ち時間には、HIV検査の必要性や妊娠中の生活について簡単な保健指導を行う。また出産に伴う合併症リスクが高い妊婦は分娩を病院で行うよう指導している。
家族計画では、妊娠を希望しない女性が避妊のため訪れる。主流な方法は筋肉注射による女性へのホルモン剤の投与である。
乳幼児に対する予防接種では国の指針に基づき、予防接種を実施している。ヘルスセンターには2台の業務用冷蔵庫が稼働しており、毎朝スタッフによる温度確認が行われコールドチェーンが実施されている。
5歳未満児の成長モニタリングは、モニタリングシートを用いて行われ身長と体重から月例に応じた成長を確認している。
分娩介助は助産師によって行われる。郡病院から近距離にあること、初回妊産婦検診時にスクリーニングを行い、ハイリスクな妊婦は病院での出産を指導しているため妊産婦の死亡事例は直近1年間では発生していないが、
周辺にはコミュニティーが点在しており、ヘルスセンターまで車で30分ほどかかる地域も多く、当管轄地域での施設分娩率(ヘルスセンター・病院での分娩)は、59%(2018年10~12月)である。アウトリーチ活動では、妊産婦検診、5歳未満児の成長モニタリング、家族計画、予防接種、近隣学校への保健活動を実施している。学校保健活動では、個人衛生の指導やHIV/AIDS、性感染症、薬物・アルコール中毒に関する健康教育、健康課題を抱える生徒へのカウンセリング活動を行っている。

配属されて3週間。
私が考える課題を3つにまとめてみた。
①ボランティアの業務が煩雑で、タフであること。マンスリーレポートの提出率に差があり、ボランティアの活動状況がコミュニティーによって異なる可能性があるが、現状を把握できていないこと。⇒コミュニティーボランティアのエンパワメントが必要
②学校保健活動では、知識の提供が主となっているが、HIV・AIDSは子どもたちにとっても身近な疾患であり、基礎知識は得られていること。
⇒知識の提供にとどまらず、行動変容につなげることが必要
③アウトリーチ活動で複数名の低栄養状態にある児が確認されるが、モニタリングにとどまっており児や養育者への詳細の確認が行われていないこと。
⇒原因の調査と養育者への指導を行い、栄養状態の回復を目指すことが必要

実際のところ課題は挙げればきりがない。
医療者の態度が悪い、物品の管理がなっていない、書類の整理の仕方が雑、ゴミの処理が適当、注射の手技がなっていない、スタンダードプリコーションができていない、プライバシーへの配慮がない、業務効率悪い、道路が整備されていないなどなど…

日本の常識から見てしまえば、課題を見つけるのは簡単である。しかし、ここはザンビアで私は日本から来た部外者。しかもヘルスセンターのスタッフに比べてザンビアやザンビアの医療、疾患、指針などに関する知識も経験も劣っている。そして現地語は話せず、医療行為もできず、任期の2年が終わればいなくなってしまう存在である。

はじめは自分になにができるのか、何をするのが正解なのかわからず、何をするのも間違いなように感じて出口のないトンネルのなかに迷い込んでしまったような気持ちだった。

でも迷っていても、考えていても、答えにはたどりつけそうもないので、まずはできることから、できそうなことからやってみて、ダメだったらまた考えてみることにした。

大きく3つ行動計画を立てた。
①コミュニティーボランティアのエンパワメント
・コミュニティーボランティアを対象としKJ法を用いたワークショップを開催し、コミュニティーに潜在する課題の洗い出しと強みを見出し、理想のコミュニティーにするためにボランティアとしてなにができるかを考える機会とする。今年中に3回のワークショップを実施し、最終ワークショップでは次年度に向けてアクションプランを立てることを目標としている。2年目もこれを繰り返すことで、PDCAサイクルを活用したボランティア活動の活性化を目指す。
・コミュニティーボランティアを対象としたインタビュー調査を行う。住民の生活環境の実態把握と語りのなかから課題を見出すことを目的としている。
・マンスリーレポート作成のためのコミュニティー調査の支援を行う。マンスリーレポートの報告項目は多岐にわたっており、コミュニティーによって記載方法にばらつきがあったり、正確なデータになっていなかったり、数か月間提出が遅れることがある。ボランティアとともにコミュニティー調査を行い、情報収集とレポートの記載方法の支援を行い、ボランティアの負担軽減と正確なデータ収集の実現を目指す。

②学校保健活動
・質問用紙を用い、HIV/AIDSとアルコール中毒に関する知識と認識を調査するとともに、生徒の健康に関する知識のニーズを把握する。
・ケーススタディーを用いたワークショップを開催し、生徒のアクティブラーニングを支援する。アクティブラーニングの導入により、行動変容がもたらされることを期待する。
・上級生が下級生に対し保健教育が行えるよう生徒の支援を行う。
・HIVや若年妊娠、性的虐待など困難を抱えながら学校生活を送る女子生徒への支援として、『Life of tree』の手法を用いたエンパワメントを行う。

③低栄養児の養育者に対する支援
・コミュニティーごとに低栄養児の人数を調査する。特に低栄養児の割合が高い地域をターゲット地域として介入を開始する。
・低栄養児の養育者に対し、インタビューを行い課題の洗い出しと原因の調査を行う。児と養育者の基礎情報に加え、哺乳量や活気の低下、下痢や嘔吐などの身体症状の有無、兄弟の数や年齢、与えている食事の内容などの情報収集を行い、包括的な視点から現状の分析と支援方法の検討につなげる。
・低栄養児の養育者に対し、知識を確認したうえで理解が不足している内容について乳幼児期の食事の与え方について指導を行う。状況に応じてクッキングデモンストレーションを用いた離乳食教室の開催も検討する。

果たしてこれらの活動がこの地域に必要なことなのか、求められていることなのかはわからない。うまくいくかもわからない。ここに挙げたうちのどれだけが実行できるだろうか…

でも予算もマンパワーの知識も経験もない私ができることなんて限りがあるので、思いつくこと、できることを行動に移すことがボランティアとしての務めだといまは感じている。


私の2年間の目標は、ザンビアの、そして世界の美しさを語れるひとになって元気に日本に帰ること。

夢を語って日本を飛び出してきたのに、成功しなきゃ、爪痕を残さなきゃ、日本の税金でここに来させてもらってるし…そうやって考え続けるのをやめること。
そして人と比べないこと。
それが目の前の目標。

データ収集の方法やワークショップの詳細についてカウンターパートと詰めたかったけど、午前中からどこかに行ってしまって今日はもう会えなさそう…

ここはアフリカだし、私はボランティアだし

こうやって心のなかでつぶやくことが習慣になりつつあり。

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