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ラーメンデート



19歳の冬、私にはやたらとラーメンを食べる日々が有った。いやラーメンは特別好きでは無いのだが。
自称ラーメン博士(自作のラーメン手帳が宝物)の父がおり、そのお陰で外食は麺類(と言うかほぼラーメン屋)と言う謎法則のある家庭で育った。食べさせられ過ぎたせいでラーメン屋では謎の反抗をしてチャーハンや餃子を注文していた時期も有った。そんな19歳女子がラーメンを食べる理由はわかり易いことに男だ。
大学に入って最初の秋の学園祭で彼氏が出来て、それでも実家から7駅かけて電車通学の私が彼氏とするのはラーメンデートだった。理由は、彼氏が出来たなんて母親に言えない。夕飯は一緒に食べて帰るからと母親に言えない。ラーメンなら帰っても夕飯が食べられる。つまり当時私は2回晩ごはんを食べていた。(良く太らなかったな私)
今思えば、学校帰りに彼氏とちょっとだけ会うための口実が何故ラーメン屋だったのか。呑み屋で一杯、(あっ未成年か)もしくは深夜までやってた珈琲館でもどこでも良かったと思うのに。
きっとお互い遠慮してたのかもしれない。
デートと気負わず行けてたからかもしれない
「美味しいラーメン屋行こうか」19歳の私は好きな人にそう言われて自転車で何処へでもついて行った。
ラーメン屋から駅まで送って貰う夜道で色んなことを話した。
ラインどころかメールも携帯電話もPHSもポケベルも
自由に使える個人持ちの固定電話も無いふたり。

当時彼氏が住んでたのは女人禁制の学生寮(電話は玄関に1台のピンク電話)
それと実家住みの私が二人でゆっくり会えるのはラーメン屋しか無かったのだ多分
あの一見きゅうくつそうで、でも多分とても居心地良かった空間のことを
25年も経って何だかとても懐かしく思い出す

そんな響きねラーメンデート

小1の時に小説家になりたいと夢みて早35年。創作から暫く遠ざかって居ましたが、或るきっかけで少しずつ夢に近づく為に頑張って居ます。等身大の判り易い文章を心がけて居ます。