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【作品レビュー:1】映画えんとつ町のプペル

この映画の総指揮を務めたお笑い芸人の西野亮廣さんは15年前から、絵本やオンラインサロンなどを手掛け、周りの芸人仲間から「お笑い芸人が何してるんだ」と揶揄され続けてきました。

当時はまだ誰も知らなかったクラウドファンディングを始めた時は、世間のみんなは「詐欺だ!宗教だ!」と囃し立てました。それでもこれらを辞めなかった西野さんが目指していたもの。

それは「最高のエンターテインメント」を届けること。

周りに馬鹿にされても、「どんなに見放されてもあきらめなければ夢はかなう。」

そう信じて西野さんが2020年に公開したのが映画「えんとつ町のプペル」です。

 

町中が崖とえんとつに囲まれ、えんとつの煙で空の星が見えないえんとつ町の住民は星の存在を知りません。ただ一人、少年ルビッチだけを除いては。

ある日、ルビッチは配達屋が落とした心臓にいろんなゴミがくっついて生まれてきた「ゴミ人間」と出会い、彼を「プペル」と名付けます。

その見た目の奇妙さや臭いにおいのせいで周りの人間から嫌われたプペルは、ルビッチと一緒に大きな船に風船を括り付け、たった二人で煙の上の空の星を探しに行きます。

プペルとルビッチ以外に星の存在を信じる者は誰もいません。みんなプペルとルビッチを「馬鹿だ、馬鹿だ」と嘲笑いました。西野さんはえんとつ町を「夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺」と評価しました。

そんな中、「絶対に空に星は存在する。この目で絶対に確かめる。どんなに見放されてもあきらめなければ夢はかなう。」と行動を起こすプペルとルビッチの姿はどこか西野さんと重なります。

ではこの映画の主人公は誰でしょうか?この映画の主人公はプペルでもあり、ルビッチでもあり、西野亮廣さん本人でもあるのです。

 

僕自身、高校時代に自分の夢を馬鹿にされて傷ついたことがあります。その時の僕の夢は、部活の夏の合唱コンクール、超激戦区の東京で史上初の金賞を取ること。僕の友達は「大きな目標すぎる」とまともに話を聞いてくれませんでした。しかし、あきらめなければ夢はかなう。そう思って血眼(ちまなこ)になって練習しました。結果は史上初の「金賞」。あきらめなかった故の金賞です。映画「えんとつ町のプペル」を見たときに、自身のこの体験を思い出し、プペルとルビッチの、あきらめない強い信念や行動にひどく胸を打たれ、そして共感しました。

 

この映画はもはやただのアニメーション映画ではありません。

この映画の最大の魅力は「共感性」にあります。

共感性とは一般的に、「他人の感情や行動の理由が自分のことのように理解できること」を指します。

だれもが一度や二度くらい大きな夢を抱えたことがあるでしょう。

そしてそれを勇気を出して人に打ち明けたけれど、笑われてしまった。

行動を起こしたら叩かれた。

そんな経験があるでしょう。そんな人はプペルやルビッチの気持ちが痛いほど分かると思います。

まるで実際に映画の世界に行ってしまったかの様に主人公たちの気持ちに共感できるのです。では、改めて聞きましょう。

この映画の主人公は誰でしょうか?もうプペルでもルビッチでも西野亮廣さんでもありません。この映画を見たその瞬間からあなたが主人公なのです。

 

 元々この映画は西野さんが2016年に出版した絵本「えんとつ町のプペル」が本となっています。絵本版は子供向けに作ったもので映画もまるで絵本のような描写です。

子どもはこの映画を絵本の様に楽しみ、大人はこの映画の主人公になって映画を満喫する。ある人はハッピーエンドの展開に笑顔を浮かべ、またある人は深く共感して涙を浮かべる。

 

世代によって、人によってストーリーの読み取り方はそれぞれです。あなたの今までの人生がこの映画のストーリーを決めるのです。

そう、映画「えんとつ町のプペル」のストーリーは無限大なのです。

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