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【過去回想:3】教員の労働環境と生徒にまつわる問題の因果関係

こんにちは、noteをサボっているないとぅーんです。

実は私、大学で弁論をやっているんです。

弁論?何ぞや?

って思う方も多いですよね。

簡単に言うと、何か一つ社会問題などのテーマを取り上げ、それに対して自分の考えた政策を打ち立てて、聴衆の前で演説をする競技ですね。

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私は、10月の上旬に開催された、第24回桜門杯争奪全日本学生弁論大会に出場し、見事、「審査員特別賞」というよくわからない賞を受賞しました!

今回は、その時に作った弁論を紹介しようと思います。

今回取り上げたテーマは「学校現場の生徒にまつわる諸問題の悪化」です。

簡単に言うと、

生徒にまつわる問題・・・「いじめ」「暴力事件」「自殺者数」「中途退学者数」「不登校児童数」がすべて増加傾向にありました。(平成30年)

じゃあ、教員は何をしているのでしょうか?怠慢なのでしょうか?

いやいや、そんなわけないんです。よく調べてみると、教員の労働時間は年々増加していたんです。(教員勤務実態調査)

しかももっと深く調べてみると、わざわざ教員がやらなくてもよい仕事や削減してもよい仕事ばかりが増えていっていたんですね。

ここで私は一つの仮説を立てました。

教員が以前よりも、教員がやらなくてもよい仕事ばかりに時間を取られるようになり、生徒と関わる時間が減ったことで、生徒にまつわる諸問題が悪化したのではないか?

ということです。

つまり、教員の労働環境の改善こそ、生徒にまつわる諸問題の解決につながると考えたのです!

教員のための働き方改革ではなく、生徒のための教員の働き方改革という視点が評価され、賞をいただくことができました。

よくいじめや自殺のニュースを聞くと、かならず教員は何をしていたんだ?職務怠慢だ!なんて意見がかならずヤフコメニュースのコメント欄などで散見されますよね。

怠慢じゃないんですよ、そうじゃないんですよ、むしろ働きすぎて、忙しすぎて問題に気が付けないなんてことがざらにあるということなんです。

教員の働き方改革を成功させれば、生徒にとっても、教員にとってもよいことがありますね。

以下原稿です↓↓

私は教師になりたい!!
そう決心したのは、中学二年生の時のことです。当時、友人関係のことで悩み、精神的にも極限状態に陥っていた私は胸の内で先生に助けを求めていました。しかし、先生たちに気が付いてもらうことができず、あえて問題を起こすことでしか、意思表示ができなくなってしまいました。その行動によって、先生に気が付いてもらえなかったら次はどんな行動に出ていたでしょうか。私はこの経験を踏まえて、私のように、一人で悩みを抱える生徒を救いたい。そういった思いから教師になることを決意したのです。 本来、学校は「将来を担う子供たちの成長と安全を見守る場所」であるべきです。しかし、世の中には、助けを求めても応えてくれない学校で、ただ一人苦しんでいる生徒がたくさんいます。そういった生徒たちに手を差し伸べることこそ教員の仕事ではないでしょうか。そのためには「生徒が抱える問題にいち早く気づき、早期発見、対応できる学校」を実現する事こそが、今の学校に必要であるといえましょう。そういった学校を作り上げていくには、教員が無意味に仕事に追われ、生徒とのコミュニケーションをないがしろにすることのない環境を作り上げることが重要なのです。本弁論の目的は、「教員の労働環境を見直す事」を通して「教員の職務の最適化を図り、理想とする学校の実現」を目指すものであります。まず、現在の学校現場の状況について説明させていただきます。文部科学省が平成30年に全国の小中高等学校の生徒を対象に行った調査によると、教育委員会が、特に重要視している「いじめ」「暴力事件」「不登校児童」「高校の中途退学者」「自殺者」という5項目すべてにおいて増加傾向が見られました。そして、これらは、教員の労働環境の悪化に比例しています。実際に、愛知教育大学の最近の研究によると、教員の忙しさと生徒への理解の間には、一定の相関関係があることが示されています。労働環境の悪化は、生徒の問題にもつながりうるのです。たとえば、授業の質の低下は、将来を担う生徒たち全ての不利益につながります。本来教員は、生徒を誰よりも近い距離で見守り、支えるべき存在であるのにも関わらず、多忙のあまり生徒間における諸問題に気づけない、自分の能力を磨く時間がない、といった事例が多く存在します。新発田市(しばたし)において発生したいじめによる自殺に関する調査の中で、生徒のいじめに教員が気づけなかったことが大きな問題とされました。そして、その原因の一つに教員の多忙が指摘されており、「いじめが見逃されてしまった要因の一つに、生徒と向き合う時間が不足していたことが上げられる。『教師と生徒が向き合う時間の確保』こそが、いじめの早期発見、未然防止に繋がっていくと考える。」と述べられています。また、文科省も教員の労働環境の改善は、生徒の利益のために授業の質の向上を目指すものであるということを、その方針の中で述べています。つまり、生徒に対して学校の質を保障する為にこそ、教員の労働環境の改善は必須だといえるのです。では次に、教員の労働環境について説明させていただきます。現在の教員はいわゆる「ブラック教員」と呼ばれる程の劣悪な環境で働いています。文科省が16年に実施した「教員勤務実態調査」によると、小学校教諭の33.4%、中学校教諭の57.7%が月80時間以上という、「過労死ライン」を超える時間外労働をしています。さらに、これには、学校外の持ち帰り残業時間が含まれていない為、それも加味すると、過労死ラインを超える人の割合は、小学校教諭の57.8%、中学校教諭の74.2%にも上るといわれています。過労死ラインを超えるほどの時間外労働には、実は削減できる仕事内容がたくさんあるにも関わらず です。つまり、わざわざ教員はやらなくてもよい仕事ばかりに時間を取られ、生徒と向き合う時間を十分に確保できていないのです。では、なぜ教員は、こんなにもやらなくてもよい業務に追われているのでしょうか?その背景には、二点の原因が挙げられます。一つ目は、仕事の範囲が曖昧になっているために、削減できる仕事が何か、教員が考えて実行することができないという点です。現在、教員自身がやるべき仕事、というものを明確に示すものはありません。そのため、ただただ目の前の仕事に追われているのが現状です。中央教育審議会委員の妹尾(せのお)まさとし氏は、「仕事を削減したくても、どこまでが自分の仕事で、どれを削減してよいのかもわからず、結局自分でやってしまおう、と無駄な業務がかさんでいく。このように生み出された止まることのない悪循環が、生徒の発するSOSに気づけないという最悪な状況を生み出している」と指摘しています。つまり、今、教育現場に必要とされているのは、削減してもいい仕事、教師がやらなければいけない仕事を知る手段なのではないでしょうか。二つ目は、教員以外のスタッフの不足です。教員免許が無くても出来る仕事、というのは学校現場において多く存在します。部活動を指導したり、備品の整備をしたりすることなどは、必ずしも教員がするべき仕事ではありません。これらの業務を教員以外のスタッフに分担することが可能になれば、どんなに効率的に働くことが出来るでしょう。実際に、文科省は令和三年度の報告書において、学校現場に教員以外のスタッフを導入するべきであると提言しています。以上の原因を踏まえ、私は二点政策を提案いたします。まず、一点目は「業務改善ガイドライン」の具体化です。文科省が2016年に行った「教員勤務実態調査」の結果を踏まえて、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を発表しました。これは莫大に膨れ上がった教員の業務を改善させるためのガイドラインですが、この内容は具体性に欠けたものでした。例えば学校のマネジメント対策について記載されているページには、「学校現場の業務改善のためには、各学校の実態に基づき、校長のリーダーシップのもと、全ての教職員の役割分担を大幅に見直し、明確化するなどの業務の効率化・最適化を図ることが重要である」とあります。どの業務をどのように効率化すればよいのかについては具体的な指針が示されておらず、結果として、各学校に一任されてしまっています。このガイドラインには、このように具体性に欠ける文章がたびたび見られます。教員勤務実態調査では、教員の各業務の従事率や負担率について70以上の項目に細かく分けた調査が行われました。せっかく従事率や負担率などを知ることができたのだから、今度はその各業務を教育委員会が「そもそも学校がやらなくてもよい仕事」「教員がやらなくてもよい仕事」「教員がやるべき仕事」といったようにもっと具体的に可視化させて分かりやすく分類します。それを全国一律の指針とすることで仕事の範囲の明確化を図れるようにします。これにより今まで、積み重ね方式で増加してしまっていた教員の仕事は格段に整理されるでしょう。これがあれば、明確な定義がなく、行動に移せなかった教員も動き出すことができ、教員の仕事がより最適化されます。二点目は、ティーチングアシスタント制度の導入と事務スタッフの増員です。ティーチングアシスタントとは、主に大学における、教授の教育的補助業務、たとえばプリントづくりや実習の際の準備、危険な実験の際のフォローなどを行う役割のことを指します。それに対して、事務スタッフとは教材の発注や学籍管理、窓口業務など資格は必要としないが、教員の負担となっている事務作業を行う役割のことを指します。先ほど説明したように教育現場には、人員を増やすための仕組みの構築が必要です。現在、大学以外で、ティーチングアシスタントを導入している学校は極めて少なく、教育委員会がこれを雇うことで、今まではいなかった教員の主な仕事である「授業の補助役」を作ることができるため、大幅に教員の負担を減らすことが期待できるでしょう。また先ほど提案したガイドラインによって、ティーチングアシスタントに任せられる仕事はとても多いため、ティーチングアシスタントという存在が、教員の負担を減らす為に必要不可欠であることは明らかです。ガイドラインを作ってもその仕事を行う人がいなければ意味がありません。明確にした仕事を別の人に託すという仕組みの構築をすることができれば、教員は余計な業務を減らすことができ、その時間を生徒のために使うことができます。実際に、都内の小中学校で補助人員を導入することによって、教員が児童や生徒に向き合う時間を増やすことができたという報告が上がっています。以上の政策を実行することで、忙しさのあまり、生徒が発するSOSに気づけない、生徒とのコミュニケーションを疎かにしてしまうという現状を改善することが出来るのです。『まず隗より始めよ』。この演題は、中国のある故事に由来します。今は昔、戦国時代。隗という人物に王は尋ねました。「賢きものを呼ぶには、如何様(いかよう)にすればよいか。」そして隗は、こう答えたと言います。「賢きものを呼ぶためには、私のような凡人を優遇すると良いでしょう。そうすれば賢き人々はそれを知り集まってくる。」転じて、この言葉は、大きな目的を達するためには、手近な部分から段階的に取り組むことが良い、という意味で用いられています。学校教育も、この教訓と同じことが言えるのではないでしょうか。子供の抱える問題とむき合える学校を実現するためには、教員のやるべき職務の整理という一歩目、先ず隗より始める事が重要なのです。こうして初めて「教員の職務の最適化を図り、理想とする学校の実現」。これを達成することが出来るのです。ご清聴ありがとうございました。


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