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『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』 光りまくるTAKE Cの手腕!

 中小広告会社で夢の転職を目前に控えた吉川朱海(円井わん)を中心にタイムループに気付いた社員達がループから抜け出そうと奮闘するのだが、、、という至ってシンプルなお話である本作、まず端的に面白い!そして上手い!シンプルであるが故に際立つカット割のテンポの良さに、一目見ればパーソナリティを掴める登場人物達は別れが惜しくなるほど魅力的に描けている。タイムループ演出も細部まで気を遣っている。ループに入ったら都度行う確認作業、参加人数が増えるごとにその確認のディティールも増えるという、たったこれだけの演出でループする場面の情報が増え飽きさせないものにしている。総じて竹林亮監督の力量の高さが伺える作品で、最高の満足感で劇場を後にすることが出来た。
 本作の様なタイムループ構造は発明されて以降何度もそれこそ“繰り返し”使用されてきた。私の場合真っ先に浮かぶのは『時をかける少女』(細田守:2006年)だ。主人公が未来への大きな感情をバネに人生を駆け出すエンディングは涙なしには見られない。
 この様にタイムループの物語は得手して未来の話になる。進まない今の不安感とそこを抜けた先にある未来への希望という登場人物の心情の対比によってカタルシスが生まれやすくなるからだ。本作も御多分に洩れずその構造が持ち込まれているのだが、一部その構造を逆手にとったプロットによって登場人物の未来の心情を描いている。
 物語終盤、吉川は転職(つまり未来)の不安から仲間達とぶつかってしまい孤立してしまう。そこで今までのループでは無かった転職先の見学という行動に出る。しかし、憧れだったその場所は悪い意味で社長のワンマン会社であることに気づき今の会社に残ることを決意する。一般的な物語運びであったらなんでもないシークエンスだが、このループの構造の中では吉川だけが“ループを抜けた先の未来”を見るチート的プロットとなる。未来自体に固執していた吉川がその過程つまり今に目を向け真の意味で仲間達と協力するというカタルシスに溢れたループならではのプロットになる。
 ただ、この改善点がないというかと言われるとそうではなく、ループからの脱出方法が突飛すぎていまいち納得できないところもあるが、監督自体長編ドラマ映画は一作目と考えると監督自身とTAKE Cの今後に期待しかない一作だった。

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