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タンニンとクローム鞣しの少しだけ詳しい説明、ヌメとウェットブルー(レザー ①)

久しぶりにレザーについてです。頻繁に登場するけど結局あんまりよくわからないし、役にもあんまり立たない知識、『タンニン鞣し、クローム鞣し』についてある程度 把握できて忘れないぐらいの説明をしたいと思います。

◉タンニン・クロームそれぞれの鞣し方

この粉はなんでしょう?

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(レザーのタンニン鞣し用のミモザのタンニン成分の粉末。溶かして液体にして使います)

タンニン鞣しは何千年も前からおこなわれているなめし方法ですが、画像のように植物のタンニン成分を抽出して鞣し剤として使用する産業技術が確立するのは1700年代。そこから基本的にかわらず今に至ります。
植物のタンニン(渋)とよばれる成分を皮のコラーゲン成分と結合させて腐りにくい柔軟性のある安定的なものにかえます。

お茶とかワインの渋みもタンニンです。シブっと感じるのはタンニンによる「シュウレン作用」(コラーゲン繊維をギュッと収縮させる)で口の中の粘膜のタンパク質がわずかに変質してる状態。


この「シュウレン作用」によりタンニン鞣しは繊維が引き締まり、丈夫でハリ、コシのある硬い仕上がりになります。
タンニン剤の影響で肌色から薄い茶くらいの色で仕上がります。タンニンが繊維にそって浸透するので多少のムラがあります。
染色時にはベースの原皮の色とムラが影響してしまいます。

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いわゆるヌメ革(生地でいうキバタぐらいの段階にあたるかも)。
皮を背中心で半分にカットしたハンザイという状態のモノです。
国内は基本、このハンザイの状態で流通してます。

こちらはどうでしょう?

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(クロームなめし用の三価クロムの粉末)

クロームは1800年代にドイツで発明。
三価クロムでコラーゲン結合を起こし同様に腐らない物質に。レザーの鞣しがなんとか化学的に効率よくできないかということで発明されたやり方。

実際その通りになり歴史的にはタンニンなめしにくらべればつい最近の技術なのに世界中に広まり、現在、皮加工の主流は完全にクロームなめし。(流通している革の80%くらいがクローム鞣しらしいです)

皮のコラーゲン繊維の組織が潰れないよう支えるような形で結合するのでタンニン鞣しより柔らかく軽くあがり、伸縮性もある。
染色(コラーゲン繊維の上に染料がのっかるようなイメージらしいです)、加工にもむいている。経年変化はあまりしない。

鞣し後の仕上がりはうすいブルー(三価クロームの色の影響)。
染色時このブルーも影響します。

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鞣した直後の革は『ウェットブルー』とよばれます。
ブルーがかってるのがわかるでしょうか。

レザーの勉強をしてみようと思って検索したり書籍を読んだりするとまずでてくるのが、この鞣しの話で、タンニン鞣しとクローム鞣し。

次に色んな動物の革の種類(牛、豚、羊、ダチョウ、ワニ、蛇、サメ、エイとか)が紹介されていて、次に牛革が牛の成長にあわせて呼び方がかわる(カーフだ、キップだ、ステアだ、カウだというやつ)とかで、だいたいこの辺でキャパオーバーで一旦挫折します。

それでまた、次の勉強の機会は半年〜1年以上経っていて大抵、最初っからやり直しになり、だいたい同じところで挫折します。で、一生、詳しくならないままになります。

確かに皮革の基礎の基礎はどうしても鞣しなのでここから始めるしかないのですが、店頭の製品といまいち結びつかないので鞣しって言われてもイメージが全然できないのが原因かなと思います。
わかんないまま次の段階の説明されてもなんか納得できないですし。


ちょっとインパクトのある画像ですが、“鞣し“というのは

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(牛皮の塩漬けの状態、この状態で輸入されます)これを

こういう設備を使って

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(タンニン鞣し用のピット槽。タンニン鞣し専用の設備で鞣し剤を溶かした液体に漬け込みます)

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(ドラムとかタイコとかよばれます。皮と鞣し剤をとかした液体をいれてグルグルまわします。クローム鞣し、タンニン鞣し両方で使います)

皮をこういう状態にするのが鞣し加工です。

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(タンニン鞣し)

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(クローム鞣し)

皮革に関する説明の本やネットのサイトを見ると100%でてくる『皮から革へ』の工程です。

実はクローム、タンニン、の他にも「アルムニウム」、「油」、「ミョウバン」、「ジルコニウム」などが鞣し剤として使われてきました。日本には昔ながらの「塩」と「油」と川に浸すだけで鞣す方法なんかも現在まで伝わっていたりします。要は『皮を柔軟性があって腐らない安定的な革』にかえられれば鞣し剤も鞣し方もホントはなんでもいいわけです。コスト面と機能面でクロームとタンニンによる鞣しが他の手段より優れているらしく、この二つの方法が主流になっています。

さらにこの後、脂いれたり、伸ばしたり、乾かしたり、削ったり、染めたり、型押ししたり、で革製品にする前の『革』が完成します。

①これが

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②鞣されこうなって
(正確には毛とかいらないコラーゲンを処理する前段階の工程があります)

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       (クローム鞣しのウェットブルー)

③加工、染色されてこうなります。

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③染色(たぶん顔料)、型押しされてこうなったりもします。

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以前に紹介した色んな加工革にする前の段階が『鞣し』です。で、現在行われている主流の鞣し方が主に2通りあってそれが

・タンニン鞣し(肌色、または茶褐色にあがる方)
・クローム鞣し(ブルーにできあがる方)

です。

それでは一旦、「タンニン鞣し革」「クローム鞣し革」それぞれの特性です。

タンニン鞣し革)
・ハリ、コシがあり丈夫、摩擦に強い頑丈さがある
・可逆性がある。力を加えて変形させるとその形を保つので工芸的な加工にむいてる。また、使っていると徐々に体や動きになじんでくる(キズや跡は残りやすい)
・経年変化がある。タンニンの濃い茶褐色への変化が革らしい雰囲気をだし、楽しめる
・用途にもよるが、クロームと比較すると加工に時間と手間がかかる
クローム鞣し革)
・柔らかで伸縮性がある
・弾性があるのでキズや変形に強く、熱にも強い。
・発色がよい、色、柄を鮮やかに表現できる。(染色向いている)
・生産性が高い。短時間で大量に生産できる
・金属物質を含む。環境や処分の仕方で有害物質を発生させる可能性がある。

というような特性に応じて「クロームにはクロームのタンニンにはタンニンの皮革それぞれの用途、向き不向き」があります。

そういう意味でそれぞれの特性をうまく活かしてつくられているのが
“メンズのドレスシューズ“
です。
が、この説明は次回にします。

<まとめ>
・皮はまず鞣して革にする必要がある

・鞣しとは鞣し剤とコラーゲン成分の結合で皮を柔軟性があって腐らない安定的な状態にすることをいう

・鞣し剤はいろんなものがあるが、現在スタンダードなのは「タンニン」と「クローム」。

・世界の革製品の約80%がクローム鞣し

・タンニン鞣し、クローム鞣しの革はそれぞれ全然違う特性がある

・いろんな加工や染色によって色んな革製品ができあがるが、『鞣し』はそのいろんな加工する前の段階(毛を処理した生の皮を加工可能な素の革の状態に変化させる工程)


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