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僕たちはなぜ工具を愛するのか

2月の中旬に僕が尊敬して止まない谷川俊太郎さんの展示会と坂本龍一さんの設置音楽2 ”IS YOUR TIME”が開催されている新宿アートギャラリーに足を運んだ。お二人について語りたいことは山ほどあるのだけれど、このコラムで言いたいことは、クリエーターが道具や工具を愛する理由について。

多くのクリエーターが好むコンピュータは、Windowsよりも断然Macであるようだ。僕の勝手な思い込みではなく、シェア工房やクリエィティブ系のイベントやトークショーなどに足を運んだ際にプレゼンターがどんなPCを使っているのかを何となくチェックしていると、大抵の場合MacBook ProかMacBook Airを使い、ディスプレイの裏側に自分の会社やファブスペースのステッカーをペタペタと貼り付けている様を何度となく観てきたので、それなりに確信がある。

道具としてMacがWindowsPCよりも優れている点はこんな感じだろうか。
・何年も変わらないキー配列、ショートカットキー
・ハードウェア(CPU /メモリ/インターフェースなど)のミスマッチが極めて少ない
・OSの計画的なアップデート (これについてはWindowsも追従してきている)
・デザイン系(映像/画像/音楽)ソフトウェアが充実している
・不要なソフトウェアは入れる必要がない
・iPhone/iPadなどのApple製品と連携しやすい
・美しさがあり、所有欲を満たしてくれる
 (カフェ等でMacを開けてドヤ顔で作業することを僕の友人は「ドヤリング」と命名した)

件の展示会において谷川さんもやはりMacで詩や文章を書くと知り、そして「私は工具類が嫌いではありません」とか「権威というものに反感をもっています」という文章を目にして、僕は「やっぱりね」とひとりで納得し、平日の午後に休みを取ってこの場所に来ることを選択した自分を褒めてあげたい気分になり、展示物ひとつひとつから谷川さんの知性やユーモラスを感じたりしてなんとなく幸せな気分になった。

因みにIT関係の製造業で据え置き型のコンピュータを使用する場合、WindowsよりもLinuxが好まれる傾向にある様に思う。Linuxの良いところはこんな感じだろうか。
・オープンソースである
・開発環境を揃えやすい
・動作が軽い
・インストールとアップデートがし易い
・コマンドをある程度覚えれば操作が楽
・カスタマイズし易い

つまりモノづくりに携わる人々にとって、自分の中に存在するイメージやアイデアを、外部に出力する装置であるところの「工具」は使い勝手の良さとか、カスタマイズし易さとか、様々な要望を満たす道具である必要があるのだと思うのである。

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コンピュータの話はさておき、エンジニアという職業は様々な工具や道具を駆使しながら仕事をする必要がある。オシロスコープに、テスターに、はんだごてに、ピンセット、ノギスにドライバーに…とにかく色々な道具が必要な職業なのだ。使用頻度の高い道具については個々に何かしら拘りポイントが発生して来るのが普通である。例えばオシロであればテクトロがいいとかキーサイトじゃなきゃ嫌だとか、ハンダゴテは先の形状が斜めがいいとか尖ってる方が好みだとか、使わない人にとってはどうでも良いことに思えるだろうけど、選定にまで関わった様な道具たちには愛情とか愛着を感じてしまうものである。

左:新しいテスター(およそ¥700)               右:20年前に買い先日壊れたテスター(確か¥2,500)

僕が最初に勤めた会社は家庭用、車載用のオーディオやナビゲーションを製造販売する会社だった。そこにはオーディオやナビの試作品を、実際に車に取り付けて実際に走行試験を行う部署が存在していた。彼らの拘りの工具は”Snap-On”社の製品で、アメリカンテイスト溢れる真っ赤な工具箱に格納された工具たちは、とても美しくてカッコ良く見えたものだ。

工具も道具も洗練されたモノは機能美、美しさを備えている。道具たちの魅力に気付くか否かは使用者がそれらに対する愛情の高さに関与しているのかもしれない。

エンジニアであろうとなかろうと、僕がおススメしたいのは”考具”(考えるための道具)にこだわり、自作したりカスタマイズしてみることだ。僕の場合、2〜3年に1度くらい手帳を作ってみたり、最もよく使うペンを替えてみたりしている。

左:手帳、トラベラーズノート。本体(カバー)は革を切って穴を開けた。   ペンはCARAN D'ACHEの万年筆(ペン先EF)            中:持ち運べるホワイトボード、バタフライボード2                                            右:A4の方眼紙を挟んで持ち歩くためのファイル

4月からはようやくイノベーティブな業務をやらせて貰えることになった。どんな工具が相棒になるのか楽しみだ。


2019年はフリーターとしてスタートしました。 サポートしていただけたら、急いで起業します。