「前髪系ゲイ」という言葉は、どこから来てどこへ行くのか

「前髪系」という言葉には、「ゲイは短髪前提」というイメージが秘められていたと思える。前髪系とは「ゲイ用語」とされており、前髪を伸ばしているゲイの方々を指す。あえて、短髪と区別する際に使われている。一方、近年はコンマヘア・センターパート・マッシュなどの流行で、若年層には「前髪系」の方が人気を集めているように見える。

正直、魅力的であれば髪とかどっちでも良いやんけ!!と思うのだが、この「前髪系ゲイ」という言葉は、どこからきたのかーーーという問いは、気になるので探っていきたい。

まずは、前髪の歴史をたどりたい。平安時代ごろから、国内の寺院では「稚児」という剃髪しない少年が、男色の対象とされていたといわれる(諸説あり)。特にも、稚児の「前髪」が、僧たちを欲情させていたとみられる。

つまり男の前髪には人を欲情させうる「魔力」があるはずだ。

私はこのことについて、数年前からブログで考えをまとめてきた。
当時、ヒアリングに応じてくれた先輩方の話をまとめてみた。

・先輩ゲイAさんの話によると

2012年ごろから、「前髪系だった頃の写真を晒す」みたいなハッシュタグは発生していたらしい。これは、おおよそTwitterが世間一般に浸透してきた時期と被るので、この頃から「前髪系」という言葉がSNSで浸透してきたのだろうと推測される。

・別の先輩ゲイの話Bさんによると

(2丁目では)2009年ごろには、「前髪系」という言葉は使われていた模様。「茶髪」「盛り髪」「M字バング」がそのシンボルだったようで、短髪イカニモ系の「反義語」として使われていた。

・「前髪系ゲイ」でGoogle検索

検索すると2015年6月公開の「やる気あり美」さまのブログに辿り着く。ブログでは「前髪系」の説明として、「額に垂れ下がるほど前髪の長さがある人たち」と紹介している。


平成、令和と歩んだ「前髪系」

「ジェンダーレス男子」の先駆けとして、90年代は「フェミ男」ブームが起こった。フェミニンなファッションに身を包み、さらさらとした前髪を見ることができる。個人的には、これに続く00年代からの「ギャル男」の流行が「前髪系」を語る上での転換点だったと思っている。雑誌「メンズエッグ」は「茶髪」「M字バング」を打ち出し、2010年ごろまで影響力を持っていた。

私も「メンズエッグ」を読んでいた高校生の頃はM字バングだった。それが一番かっこいいと思っていたから。

2020年代はK-POPブーム。センターパートが流行した後、代表的な動きは、BTSのジョングク・ジミンあたりが独特のカールさせた前髪(コンマヘア)で出てきてからの流行の動きが鍵を握る。

そういう感じで、近年はコンマヘア・センターパート・マッシュなどの流行で、若年層には「前髪系」の方が人気を集めているように見える。

個人的な感覚として、2023年の現在では「前髪系」という言葉自体があまり聞かなくなったように感じる。それは「前髪のあるゲイ」がある程度、市場に増えてきたことで「短髪」一強の時代ではなくなりつつある、からだと思う。

※ここでタイBLなど「BLドラマ風」に描かれるゲイについても考えたい。「BLドラマ風」に描かれるゲイの描写と、実際のゲイが読む「ゲイ漫画」のゲイの描写に少し「ズレ」が生じていると感じる。BLドラマ風はコンマヘア、センターパートの新種の前髪系、とするならば、古くから活動されている「ゲイ漫画」はまだ短髪系が主流だなと感じる。

「キャリアシフト」という視点

ある種のゲイは、ウケで培ったキャリアを活かし、タチにキャリアシフトしていく人もいるといわれている。それは前髪系の方々もそうかもしれない。前髪系として培ってきたキャリアを活かし、短髪系に移行してからも独自の事業を展開している。

私自身は前髪系だった。絶対に切らないと誓っていたが、もう27歳ごろからに髪をいじるのが面倒くさくなってきて「楽ちんな」短髪にしている。

正直、どっちでも魅力的であれば、どっちでも良いね。

おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?