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高野光正コレクション ~発見された日本の風景~

 東京・日本橋高島屋で開催中の「高野光正コレクション 発見された日本の風景」を鑑賞してきた。

 展示されている作品は、どれも明治時代の日本を舞台に描かれた風景画だが、それらは次の二つに分類することができる。
 一つは、文明開化とともに西洋から伝わった画法を学んだ日本人画家が、自らの国の風景や暮らしを描いたものである。もう一つは、訪日した西洋人画家が日本の文化や自然に出会い、その様子を表したものだ。
 西洋と日本という二つの文化が、それぞれの画家によって異なるアプローチをとりつつも、同じ絵画という手法で融合しているところが興味深い。

 また、これらの作品群には美術作品としてだけではなく、当時の風俗などを知るうえでの史料としても高い価値があるのだろうと思う。


 タイトルにも示されているように、これらの作品は1939年に名古屋市で生まれた実業家・高野光正氏が蒐集したものである。
 高野氏はニューヨークのクリスティーズで鹿子木孟郎の「上野不忍池」を落札したことをきっかけに明治時代の絵画の蒐集を始め、米国で該当する作品が少なくなると、今度は舞台を英国に移してコレクションを増やしていったという。
 現時点で約700点にのぼるコレクションは、ほぼ全てが米国か英国で入手し、日本への「里帰り」を果たした作品なのである。その蒐集に費やした時間や労力、そして資金は、おそらく膨大なものになるのだろう。

 ・・・鑑賞をとおして、「一度手放してしまうと、それを取り戻すには大きなエネルギーを必要とする」ということも考えさせられた。
 無論、それは美術作品にかぎった話ではない。

※東京・日本橋店では、9月3日(日)まで

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