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学校教育におけるテクノロジーの活用(下)

 前回の記事では、先月の28日に「教育における先端技術の利活用」をテーマにした企業・学校・教育委員会の関係者による意見交換会があり、そこに助言者として参加をしたことについて書いた。

 記事中でも紹介をしたように、
・VRによる「障害」の擬似体験
・2次元のメタバース空間にある学習塾
・メタバース上での校内美術展
・メタバースを活用したバーチャル留学
・メタバースによる不登校児童生徒への支援、院内学級との交流
 など、企業からの事例報告や提案の内容は、どれも興味深いものだった。

 その一方で、テクノロジーが進展するスピードに比して、一般の学校におけるVRやメタバース等の活用はほとんど進んでおらず、多忙ななかでは「1人1台端末」を活用するだけでも精一杯ではないか、という実態についても記した。


 意見交換会の最後に、私から関係者に伝えたのは次のような内容である。

・「1人1台端末」の管理や運用だけでも、学校現場は手一杯である。VRやメタバースの活用に関するモデル校事業を実施するのであれば、ヘッドマウントディスプレイの管理等で、学校へのさらなる負担がかからないように配慮をする必要がある。

・授業中、子どもたちがヘッドマウントディスプレイを通してどのような「世界」を観ているのかを教師が把握し、必要な支援や評価をしていく必要がある。そのためには、同時に30名程度が利用しても、PC上の画面分割等でモニタリングができるようなシステムが必要である。

・また、そうした多人数のアクセスに耐えうるようなインターネット回線の確保が必要だし、それが難しい場合には、オフラインでも利用できるコンテンツを増やしていくべきだろう。

・子どもたちにとって、メタバースは「フォートナイト」や「あつまれ どうぶつの森」などでおなじみの世界である。活用にあたっては、子どもたちのアイデアも大切にしていきたい。無論、現場の先生方の発想を活かしていくことも重要である。

・ブラウザで視聴する2Dのメタバースには「全体の俯瞰」、ヘッドマウントディスプレイを使う3Dならば「没入感」というそれぞれのよさがある。また、2Dのメタバースの場合には、それを「1人1台端末」の活用の一部としてとらえることもできる。両者の「いいとこ取り」を目指していけるとよい。

・コロナ禍において、教育委員会の研修でZoomなどのアプリを活用したことが、その普及につながった。今後、教育委員会がメタバースを活用した教員研修等を試行していくことが、その普及や啓発につながっていくのではないか。2Dであれば、それはすぐにでも可能である。

・不登校の児童生徒への支援のために、一部の自治体ではVRやメタバースが活用されている。こうしたテクノロジーは、学校や教室、教師の役割などの「学校教育の枠組」を変えていく可能性がある。すでに高校教育の世界では、N高等学校の取組などが進んでいる。

・VRやメタバースの活用によって、「実体験に近い学び」「時間や空間を超えた学び」「現実の世界ではできない学び」「アバターによって別の人格になって行う学び」が可能になるなど、そこには大きな可能性がある。今回の意見交換会をそのきっかけにしてほしい。

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