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ビジョンに対する姿勢の七段階

 以前の記事で、現職校長たちのこんな言葉を紹介した。

「うちの学校の先生たちは、仕事に対する意欲が低いんですよ」
「教職員をまとめるリーダー的な存在がいなくて困っています」

 ピーター・M・センゲの「学習する組織」には、「ビジョンに対する姿勢」として次の7段階が紹介されている(便宜的に、原文にはない①~⑦の番号をつけた)。

ビジョンに対する姿勢の七段階

① コミットメント:それを心から望む。あくまでもそれを実現しようとする。必要ならば、どんな「法」(構造)をも編み出す。

② 参画:それを心から望む。「法の精神」内でできることならばなんでもする。

③ 心からの追従:ビジョンのメリットを理解している。期待されていることは全てするし、それ以上のこともする。「法の文言」に従う。良き兵士。

④ 形だけの追従:全体としては、ビジョンのメリットを理解している。期待されていることはするが、それ以上のことはしない。「そこそこ良き兵士」

⑤ 嫌々ながらの追従:ビジョンのメリットを理解していない。だが、職を失いたくもない。義務だからという理由で期待されていることは一通りこなすものの、乗り気でないことを周囲に示す。

⑥ 不追従:ビジョンのメリットを理解せず、期待されていることをするつもりもない。

⑦ 無関心:ビジョンに賛成でも反対でもない。興味なし。エネルギーもなし。「もう帰っていい?」

ピーター・M・センゲ著、枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子訳
「学習する組織」英治出版 299ページ

 冒頭で紹介した校長たちが望んでいるのは、①の「コミットメント」や②の「参画」の段階にある教職員のことだと思う。しかし実際には、①や②は無論のこと③に該当する者も見当たらず、④以降の教職員しかいないということなのだろう。
 だが、これは教職員の側の問題なのだろうか。
 私自身が組織の中で働いていたときのことを振り返ると、①や②の段階にあった(と自己評価している)ときには、次のような共通点があったと思う。

・トップリーダーからビジョンに関する十分な説明があり、納得や共感をしていた。
・本音で自分の考えを表明できる「心理的安全性」が担保されていた。
・ビジョンの実現に向けて行動する際、たとえ結果は失敗であっても、そのプロセスを評価してもらえた。

 逆に言うと、この3つがないときには、どれだけ自分を奮い立たせても③が限界で、④以降だったこともあったと記憶している。

 私のこの「仮説」が正しいのかどうかはわからない。だが、もしも正しいのであれば、この校長たちは自校の教職員のことを嘆く前に、もっとやるべきことがあると思うのだ。

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