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《続》奈良教育大学附属小学校で何が起きていたのか?【上】

 奈良教育大学附属小学校の教育課程について「法令違反を含む不適切な事案」があったとして、母体である奈良教育大学がWebページ上でその公表と謝罪をしたのは2か月ほど前のことだ。

 この「不適切な事案」の内容を2つにまとめると、
・道徳、「君が代」や毛筆の指導をはじめとして、学習指導要領に準拠しない授業が常態化していたこと
・議決機関ではないはずの職員会議によって校内の意思決定が図られ、校長によるガバナンスが機能していなかったこと
 ということになるだろう。

 その後、大学側は「(附属小学校の)教員を公立の小学校などに順次出向させる」という方針を発表した。

 しかし、この方針が学校内外から批判を浴びるとやや軌道修正を図り、3月1日に新たな方針が発表された。それは「籍は附属小学校に残したまま出向させ、3年以内に復帰させるもので、今いる専任教員がすべて不在になる異動は行わない」という内容である。

 いずれにしても、江戸時代の「御家お取り潰し」を連想させるこの方針は、大学側の「悪手」だろう。

 これでは今回の騒動が、最初から「大学の意に沿わない教員を排除」しようとする「人心刷新」ありきの出来レースだったのではないか、と勘繰られても仕方がない。


 奈良教育大学は、大学の特色を示す「3つの柱」の1つめとして、
「人・環境・文化遺産との対話を通した教育の追究」
 を掲げている。

1.人・環境・文化遺産との対話を通した教育の追究

 本学は、古都・奈良の中心に位置し、豊かな自然や世界遺産を含む多くの伝統文化遺産に囲まれています。また、奈良国立博物館・奈良文化財研究所との連携によって、奈良で学ぶ喜びを実感しながら、感性を磨くことができます。

 このような恵まれた環境の中、全学生数が約1000名という特長を生かし、アクティブ・ラーニングを重視した対話型の授業や、研究室ゼミでの丁寧な指導により、学問・芸術・スポーツ等を深く追究します。

 人と対話し、環境や世界遺産と対話することを通して、確かな学力を基盤とするコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など、教員として必要な資質・能力を着実に身に付けることができます。

「対話」の大切さを説くこの文章には、深く共感をする。

 そして、今回の問題を解決するために必要なのも、やはり「対話」なのだろうと思う。少なくとも「懲罰人事」で解決できるはずがない。

 おそらく、これまでの附属小学校の内部、そして大学と附属小学校の間には「対話」が不足していたのだろうと推察する。

 今こそ大学が掲げる理念を実践に移し、「対話」によって問題の解決を図っていくべきなのだ。
(つづく)

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