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会議は踊る?

 7月14日付の朝日新聞に、東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件に関する記事が載っていた。

 東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件に関し、東京都が14日、独自調査の報告書を公表した。官民の多くの組織の出向者で構成された大会組織委員会で、利害関係者が関連部署に配置されていた点などを問題視した。一方、別組織の都としては「関与が限られていた」とした。

 都は潮田勉副知事をトップとする調査チームを作り、弁護士らとともに組織委派遣の都職員や受注業者らを聴取した。

 報告書によると、組織委について「官民様々な出向者から構成され、利益相反の対策などかじ取りは非常に難しかった」と指摘。高水準の大会運営が求められるため、「出向者のノウハウを活用せざるを得なかった」としつつ、出向元との利益相反に関する規定がなかったり、給与を出向元が負担したりしていた構造などを課題とした。

 そのため、大会運営組織が、ノウハウを持つ人材を直接雇用したり、出向者の給与を負担したりする仕組みを提言した。

 また、談合事件の舞台となったテスト大会の業務委託について、大半の入札が「1社応札」だったことが組織委理事会で周知されなかったり、入札予定業者の「一覧表」を見た職員が問題視しなかったりした点なども課題に挙げ、「事業実施が優先され、不正防止の観点で相互牽制(けんせい)が十分に機能しなかった」とした。(太田原奈都乃)


 先日の教職大学院の授業でテキストとして使った「話し合いの作法」(中原淳著)には、「対話の8つの要素」が挙げられている。

1.対話とは「ケリのついていないテーマ」のもとでの話し合いである
2.対話とは「人が向き合って言葉を交わす風景」である
3.対話には「フラットな関係」がよく似合う
4.対話では「自分」を持ち寄る
5.対話では「お互いのズレ」を探り合う
6.対話とは「今、ここ」を生きることである
7.対話では「自分を疑い、他者に気づく」
8.対話は「共通理解」をつくりあげる

中原淳「話し合いの作法」(PHPビジネス新書)133-134ページ

 この8項目を東京オリ・パラの大会組織委員会で行われていた会議での「対話」に当てはめると、おおよそ次のようになるだろうと想像する。

1.事業実施という「結論ありき」の話し合いだった
2.それぞれが出向元の組織の意向と向き合っていた
3.出向元の影響力による「フラットではない関係」だった
4.出席者が「お家の事情」を持ち寄った
5.それぞれが「お互いの腹の内」を探り合った
6.とりあえず「今、ここ」を乗り切ろうとした
7.自分を疑わず、他者を疑った
8.あらかじめ「結論」はつくりあげられていた


「会議は踊る、されど進まず」
 
これは、1814年9月に開かれた「ウィーン会議」の様子を風刺した言葉だ。舞踏会や宴会が多いわりに、審議が紛糾難航する様子を皮肉ったものだと言われている。
 しかし、東京オリ・パラの大会組織委員会で行われていた話し合いは、この「ウィーン会議」の水準にさえ達していないように思える(宴会だけは頻繁に行われていたようだが)。

 今後、この組織委員会の会議のことは、「よくない話し合い」のサンプルとして授業で取り上げてみたいものだ。
 東京オリ・パラの開催に当たっては、日本の国民1人当たり1万375円、東京都民だと11万7,212円を負担しているという計算になるらしい。
 それならば、せめて反面教師として利用させてもらわないと割が合わないと思うのである。

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