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〔朗読〕『泉B』新実南吉

詩 新美南吉  声 Kobayashi mu
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『泉B』  新美南吉

この泉の水を汲んでくれ
これはさゝやかな泉だ
恰度(ちょうど)茶わんに一ぱいほどの水だ
だが見てくれ
この水は清冽(せいれつ)で
ま新しいのだ
無限の青空が
そのはりつめた方寸(ほうすん)のおもてに
くっきりうつっているではないか
しんと動かないが
耳を近づけてきいてくれ
その底にしんしんと
力のみなぎるつぶやきが
聞えるではないか
この泉は四方の大きい岩を
じみじみと永い日夜をかけて
絶えずしみとおって来た水が
一切の汚辱を去り、
みじんのにごりもとどめず
今朝ここに充ちたものだ
見てくれ、底の砂粒の一つ一つが
宝石のようにきらきらしている
塵一つ、枯葉の片(かけ)一つ
沈んではいない
もっと頬をその表面に近づけて
見てくれ
氷のような息吹が
泉からたちのぼる冷気が
君の感覚をさしはしないか
さあ
この泉を汲んでくれ
もろ手を出してすくってくれ





新美南吉さんのこの『泉B』の詩、力強く読みたいなと思いました。こんな泉があったなら、その水をじっと見るだけで満足しそうです。でも、こんなに望まれるなら、すくってみようかな、とも思います。勇気がかなり、いりそうです。
聞いていただき、ありがとうございます♪

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