SUPER YURA CHAN

小説を書きます。スーパーユラちゃんのことはひとつも書いてないです!

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最近の記事

見果てぬ旅路の先(小説)

数年前、 医療の最前線に立ちながら技術の進化にも貢献したいと思い、十年続けた臨床医から臨床研究医に転身した。 日中は通常の勤務医と同じように臨床の現場に立ち、仕事の前後で研究のデータ収集や実験、 加えて論文執筆や学会発表など、 とにかく膨大な量の仕事に追われて勤務と研究の両立に忙殺される日々を送っている。 昨夜も徹夜で論文を書き上げてからそのまますぐに早朝から通常の勤務で、一日中診察に来る患者が途絶えないまま勤務時間を超えて残業になり 日没後にようやく退勤したかと思えば、

    • 件(くだん)(小説)

      たまたま入った屋台ラーメンで気味の悪いじいさんととなりになった。職業を聞かれて、ライターですと答えると、仕事をやるからと言われてそのままじいさんの職場へ。 「兄ちゃんにはね、記録を録ってもらいたいんだよ。」 「記録ですか?」 「言ったことを、一言一句逃さずに書いとくれ。」 「議事録みたいなことですかね」 まあいいからといって、じいさんが目の前の壁にかかっていた赤い布をはぐと、鉄格子の檻とその中に、顔は人、体は牛、の半人半牛が現れた。 「こいつは"くだん"だ。言った

      • 耳の中でクモが脱皮していた。(小説)

        耳の中でクモが脱皮していた。 数日前から、左耳から絶え間なく 「カリカリ音」が鳴り響いていたので、 耳鼻科に行って検査をしてもらうと、耳の中からクモの抜け殻が見つかった。 それもひとつではなく、小さな抜け殻が複数。 医者もびっくりして 「耳の中で脱皮してる生物なんて見たことない! 大発見だ!」と大興奮していた。 ひとまずその場で抜け殻は全て取り除いてもらえたのだが、肝心のクモ本体が見つからない。 医者は、見つからないのであればもう耳から出たのではないかと。 見つ

        • 詩(関係ないんだけど、この花の名前分かる人いますか)

          すると君は土の中から這い出てきた うんしょ、と綺麗な葉を土に押し付けて踏ん張って 土の中から根を出した君は もう前みたいに立派に立てなくなって ずるずると、花弁を、葉を、茎を、 たまに崩れながら土の上を這いずって 見せてくれた立派な根は 隠していてごめんなさいと言うけど、 隠すつもりもない顔をしても 隠されたつもりもないよ、 泥んこになって、悲しかった 大きくなったら君にあげようと ずっと大事にしていたのに 情けなく根の方ばかり大きく広がって とうとう君が見つけた(あちゃ

        見果てぬ旅路の先(小説)

          ドラキュラ(小説)

          「ひっ…来ないで…」 私を見て怯える彼女に、私は優しく触れた。 地面にへたり込んだまま後退りしても、 もう後ろは行き止まり。逃げ場なんてない。 残念なことに、彼女の瞳は紛れもない化物を映している。彼女の目から溢れた涙に、今日の月と同じ私の苺色の瞳が反射した。 「おねがい、助けて…!」 ホラー映画の最後が、後味が悪いことはお決まりである。身体中の血液を飲み尽くした私は、暗い路地裏を後にした。 ひんやりとした空気が立ちこめる夜の商店街。 フォークギターで聴いたことのな

          ドラキュラ(小説)

          サ、

          日焼け止めって高くて 持ち歩く用と家に置く用と頭皮守る用のスプレータイプで、夏は3つ持つのサ お金ないけど絶対に必要で 自転車を買うお金もないから毎日学校まで30分弱くらいかけて歩いてるんだけど そのときにきっと焼けてるのサ でも、電車に乗ってて下を見ると 真っ白い手がスマホで文字を打ってて もう死んでるのかな実は、 千と千尋の神隠しの列車に乗ってる幽霊たちみたいに透けてるのかな って考えるのサ ケンジもかまちもボンボンの坊っちゃんで 二人が見てきた世界を、

          ヤマアラシ

          僕は毎日、ヤマアラシの抱き枕を抱きしめて寝る 今日もこうやって無量の不安をヤマアラシに置き換えて抱きかかえている 悪夢にうなされながら目を覚ます、汗びっしょりの夏の朝 あんなにも果てしなかった無量の不安は消えていて、本当にヤマアラシに染み込んだのかと思う 実際に染み込んだのは僕の汗で、 それでも、もしこのヤマアラシが 毎日毎日語りかけた僕の不安や鬱憤を 全て背負い込んだままなんじゃないかと思うと いつも可哀想に思う 可哀想に思う、と抱きかかえて寝るが 本当は可哀

          聞いてる?(小説)

          「えおまえ聞いてる?」 『…あ、ごめん。もう一回言ってもらってもいい?』 「いやだるいわ。てか気づいた?山岡死んでる。」 『まじ?いつ?』 「知らん。24話とかじゃね。」 『序盤だな。全2巻よ。』 「おもろ。」 『おまえんち臭くね?』 「それは俺が臭いの?それともこの部屋が臭いの?」 『それは連帯だろ。』 「最悪すぎ」 『匂い消しとかないの?』 「ない。まじか。ちょっと窓開けるわ。」 『腹減ったな』 「それな。何食いたい?」 『んー肉以外』 「

          聞いてる?(小説)

          おはよう。(小説)

          やっちゃん、 やっちゃん、 やっちゃん、おはよう。 パンを 焼いてるよ 今日は 寒いね コーヒーを 入れようか こたつ 入ってていいよ 本当に 今日は 寒いね あ 鼻 かみたいの ごめんね 昨日 新しいの 出し忘れてた それと どうしたの 寝癖 どんな 夢を 見たの 私は 今日ね パパの 夢を 見たよ あ 見て 窓の 外 雪 だよ 去年は 降ら なかった のにね 今年は 積もる かなあ 3年前の お正月に おばちゃんの おうちに 行った ときには たく

          おはよう。(小説)

          オコメノカミサマ(小説)

          大学時代からの習慣で、朝飯や夜ご飯くらいは食べなくとも生きていける体になっていたはずだった。しかし、お盆で実家に帰っていた期間に、なにもせずとも自動的に食事がでてくる生活に慣れきってしまったらしい。土曜日だというのに、朝早くに目が覚め、何かを食べたいという気になった。 冷蔵庫にあるのは、ヨーグルトとチューハイ。そして、昨日食べた牛丼のセットの卵だ。生卵が苦手な私の冷蔵庫には、ケース付きの卵がいくつか入っている。 今日はこれで目玉焼きでもしよう。ご飯は、たしか仕送りのダンボ

          オコメノカミサマ(小説)

          ジブンタナカ(小説)

          自分で言うのもなんだが、俺は陰キャだ。中学のときから友達といえる人は片手で数えられるほどしかいないし、ペア活動のときはお決まりのように余る。そして容姿は黒髪に眼鏡、趣味は漫画やアニメといった典型的なオタクだ。 だが、そんな俺も今日から大学生になる。このキャンパスライフで中高のときのような毎日を送るわけにはいかない。 張り切って前日に美容院を予約し、もさったかった髪を切り、調子に乗っていると思われない程度に茶色く染めた。 いつも行っていた地元の1000円カットでは、薄黄色い

          ジブンタナカ(小説)