労働判例を読む#31

【井関松山ファクトリー事件・井関松山製造所事件】松山地裁平30.4.24判決(労判1182.5、20)
(2018.12.20初掲載) 

 ここでは、2つの裁判例(同日に言い渡されたもの)を併せて一緒に検討します。いずれも、有期雇用契約者と無期雇用契約者の処遇の違いが労働契約法20条に違反するかどうかが争われた事件で、事案の背景となる事情も共通するところが多いからです。 

1.判例のポイント

 この2つの裁判例は、6月1日付の2つの最高裁判例(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)よりも前に出されたもので、判例の影響を受けていませんが、判断基準はこの2つの判例と同様です。
 すなわち、各手当については、手当の目的と、その目的達成の手段としての合理性を、具体的に検討しています。
 他方、賞与については、「有為な人材の獲得とその定着を図る」という抽象的な理由で合理性を認めています。

2.実務上のポイント

 手当も賞与も、共に判例を先取りするもので、判例の枠組みに合致します。
 けれども、働き方改革関連法を先取りする解釈指針となる「同一労働同一賃金ガイドライン案」と比較した場合、手当部分はこれに沿った内容ですが、賞与はこれに沿ったものではありません。このことは、当ガイドライン案の立案に深く関与した水町教授自身が指摘する問題であり(労働判例7月15日号17頁)、言わば、裁判所の判断に対し、行政の判断や国会が成立させた法律の規定が対立しかねない、という状況です。
 したがって、同一労働同一賃金や働き方改革に関連して、諸手当の見直しを行うべきこと、特に賞与については、ルールが不安定な状況にありますので、その内容や見直しのタイミング等について、慎重に対応してください。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?