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松下幸之助と『経営の技法』#248

10/20 顧客が評定している

~絶えず顧客の説く厳重な評定下におかれて、我々はお互いの仕事をしている。~

 商売というものは、顧客が絶えず鋭い評定をしている。学校の先生が足りない場合には、どの先生でも来てくれればいいということになるが、先生が余っていたら優秀な先生だけを雇い入れる。どこの学校でもそうである。しかし一般の商業界は、それ以上に鋭いものである。景気、不景気を通じて、絶えず厳重な評定をしている。向こうの商品はこっちの商品よりも、よくて安いということを顧客は評定している。我々は、絶えず評定下におかれて仕事をしているわけだ。
 もしそれがなくして、どこのものでも売れるのだったら、神様でもない限り、誰も勉強する者はいない。勉強するといっても範囲がしれている。だからやはり実業界にとっては、評価決定ということが非常に大事である。
(出典:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

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1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでの松下幸之助氏の言葉は、市場での競争を是とする立場からの言葉です。
 この連載では、経済学ではなく経営学の立場から検討していますが、「勉強」を会社組織の問題として考えましょう。
 まず、ここでの競争は「よくて安い」ことが評価基準になっています。典型的な、品質と値段での競争です。
 したがって、ここでの「勉強」は、品質を高め、値段を下げるための企業努力のことを意味します。
 つまり、品質を高め、値段を下げるために、会社組織が持続的に活動をできるような仕組みを作り、その活動を維持発展させなければなりません。それは、ルールや目標を一度作れば終わり、という静的なものだけでなく、競争環境の変化に伴って会社の組織やプロセスも変化しなければならない、動的なものも含まれます。
 永続的な組織、というと、しっかりとした頑強な組織であって、融通の利かない組織をイメージしがちですが、実は、競争環境の変化に応じて柔軟に変化できる組織なのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者は競争環境の変化を自分自身で感じられるか、それが足りないと思う場合にはそれを専門とする担当者を雇うなど、組織としてそのような能力を備えるようにしなければなりません。
 さらに、そこで得た情報を日常の業務だけでなく、会社の方向性を決めるために活用しなければなりません。頭だけでなく、競技(市場競争)で勝てるための体(会社組織)を作り、運動能力(商品やサービスの品質)を高めていくのです。

3.おわりに
 競争を、自分たちの成長の糧と捉える発想は、ライバルの存在でを自分の成長の糧と捉えるスポーツ選手の発想に通じるところです。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出典を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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