経営の技法 #5
1-5 ガバナンスと内部統制
他人を使う、という目的で共通するガバナンスと内部統制だが、両者には様々な違いが存在する。その背景には、使う者と使われる者の関係性の違いがあり、この違いを理解することが、両者を使いこなすために重要である。
1.概要
ここでは、上の逆三角形に関する「コーポレートガバナンス」と、下の正三角形に関する「内部統制」について、これまでの検討を踏まえて対比し、理解をより一層深めます。
まず、ガバナンスと内部統制の意味に関し、上図の「2つの三角形」モデルとは異なるモデル(ラーメン屋さんモデル)が紹介されています。
そのうえで、まず共通点が確認されます。
それは、ガバナンスも内部統制も、共に人を使うためのツールである点です。
次に、相違点が確認されます。
それらはいずれも、使用する者と使用される者の関係の違い(規律するルールが、会社法と労働法の違いとなる)に関連するのですが、①裁量の幅の広さ、②解雇の容易さ、③組織設計の容易さ、④行動原理の違い(上が「経済学」、下が「経営学」)、などが指摘されています。
2.ガバナンスと内部統制の関係
私が、この「2つの三角形モデル」を様々な場所で使い始めたころ、『法務の技法 OJT編』で共著した松下正弁護士が、「ラーメン屋さんモデル」の話をしていました。
当初は、どちらのモデルが優れているのか、と考えていましたが、切り口が違う、すなわち視点が違うのであって、矛盾するわけではなく、むしろ補完し合うものと見ればよい、と考える様になりました。
すなわち、「ラーメン屋さんモデル」は、企業の成長過程をモデル化していますから、時系列に沿って、同的に会社組織を理解できます。
他方、「2つの三角形モデル」は、組織論の分析に適しています。
このような両者の特性を理解し、上手に組み合わせれば、例えば、会社の成長過程に応じたガバナンスや内部統制の在り方の分析も、可能になるように思われます。
3.おわりに
この後、ガバナンスと内部統制、それぞれの細部に降りていきます。その場合でも、ここで検討したような基本的な性質の違いが、理解の前提として重要となりますので、必要に応じてここでの議論に立ち戻って、大局的な視点を常に維持してください。
※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月
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