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労働判例を読む#536

※ 元司法試験考査委員(労働法)

今日の労働判例
【アンスティチュ・フランセ日本事件】(東京高判R5.1.18労判1295.43)

 この事案は、フランス語学校Yの教員Xらが、Yに対し、更新後の契約条件ではなく更新前の契約条件に基づく給与の支払い(差額の支払い)を請求し、また、Xらのうちの1名が、Yに対し、担当講座数の減少に対する補償金の支払いを請求した事案です。
 1審2審いずれも、前半の、更新前の契約条件に基づく給与の支払いは命じませんでしたが、後半の、補償金の一部の支払いを命じました。

1.実務上のポイント
 2審でも、新契約が締結されたことと、新契約の条件での契約が成立したことを認めていますが、なぜ新契約の条件で契約が成立したのかについて、積極的にその理由を説明していません。しかし、旧契約の条件での契約成立をYが否定しているとしても、新契約の条件での契約成立をXは認めていませんので、合意があったことだけを根拠にすることは難しいようにも思われます。
 契約更新の際に、新条件について不満のある従業員が、とりあえず働きながらその条件について交渉したり争ったりすることは、ときどき見かけるトラブルですが、検討すべきポイントでしょう。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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