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松下幸之助と『経営の技法』#249

10/21 10もらえば11返す

~サービスしあうのが、この世の理法。多くを与える人が多い社会ほど、発展する。~

 サービスしあうというのがこの世の理法ではないでしょうか。つまり、頭のよい人は頭で、力のある人は力で、腕のいい人は腕で、というように自分のもてるものを他に与えることによって、それにふさわしいものを他から受ける。それで世の中は成り立っているのですよ。だから、多くを受けたいと思えば多くを与えればよいのであって、十分に与えもしないで多くを受けたいと思うのは虫のいい考えというものです。そんな人ばかりだと世の中は豊かにならないでしょうな。
 例えば会社でいえばね、社員がみんな自分の働き以上の給与を得たいと望んだならどうなるでしょうか。その会社はたちまち破綻してしまうと思うのです。働きと給与との間には、いつもプラスのゆとりがなくてはならない。そのゆとりがあって、会社ははじめて発展するのですな。社会でも同じことです。やはり社会が潤いをもちつつ発展していくためには、”10もらえば11返す“というサービス精神が大切なのでしょう。
(出典:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

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1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 その前に、私の経験です。
 外の法律事務所の勤務弁護士から、会社の従業員として社内弁護士になった時です。事務所時代の働きで顧客企業に請求していた時間給で計算した場合の金額の、数分の一の給与しか貰えないことが不満でした。
 けれども、これは物差しが違うから当然のことです。
 組織で働き、チームとして仕事ができるからこそ、代表して報酬を請求していたのが、法律事務所時代であり、チームが稼いだものを、内部で分配してもらっていたのが、従業員時代です。単純に考えても、法律事務所時代の顧客企業への請求から、事務所を維持するために負担する分を控除したものが、働きに対する適正な評価になるはずです。
 このように、客観的に見るだけでも、仕事の場と機会を与えてくれる組織の維持活動費として、報酬の社会的な評価額から控除された金額だけが給与となります。つまり、「10もらえば11返す」というよりも、成果の分配、という観点から見た場合には、「11稼いだら10もらえる」という関係になるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 会社の社会での役割で考えてみた場合にも、会社には「10もらえば11返す」という精神が必要ということになるでしょう。なぜなら、会社が所属する社会が、その役割を果たして会社に儲ける機会を与えてくれることから、社会の維持管理費として、例えば税金の負担や、地域・世界環境への貢献などの、企業の社会的責任があると考えられるからです。

3.おわりに
 限られた原資を、全員が納得する形で配分することが難しいことから、会社の人事制度が発達してきました。
 けれども、従業員の気持ちの問題は永遠になくなりません。他人との比較の問題もありますが、もっともらえるはずだ、という不満です。その気持ちを少しでも整理させるための考え方として、松下幸之助氏は、差の部分を「プラスのゆとり」と表現し、当然の権利主張よりは、「サービス精神」を求めるのです。これで、少しは不満がコントロールされる、という手応えがあるのでしょう。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出典を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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