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不協和音(12)

ベースとして初めて入ったスタジオは、セッティングも含めてわけがわからないけど大音量が楽しかったという感想に尽きる。

自分の音が大きなアンプから出ることにまず驚き、どこまで音量を上げていいのかビビりながら少しづづツマミをいじっていたものの、生のドラムを傍で聞いた瞬間に「これはボリューム上げないと何も聞こえないな」と判断した。

後からメンバーに聞いたところ、ベースを弾くことに必死で他の楽器の音を聞けてなかったよと指摘された。思い当たる節が多すぎて赤面するしかなかったものの、それでも加入が認められたことは素直に嬉しかった。

バンドに入るのが初めてだということは伝えてあったが、マジメにやってくれるなら大丈夫だよというメンバーに救われた。スタジオ練習後の反省会と言えばやはりドリンクバー付きのファミレスというのは年齢が変わっても変わらないんだなと今でも思う。遅い時間まで営業していること、特に注文が多くなくても長居できることを踏まえると地方都市では定番なわけだ。

練習も繰り返していくうちにアンプのセッティングも多少慣れたし、他の楽器とのバランスも取れるようになってきた。当時使っていた練習はスタジオ兼ライブハウスになっていたのでそのステージで練習ができた。これは後から考えたら結構恵まれたことで、現在城が勤めているスタジオが大小いくつかの部屋を選択できる程度しかないことに比べたら演奏する方もハリがある。

さらに他のパートを聞く余裕も多少出てきた。いつも同じ曲の同じところでテンポが遅くなるとか、明らかにソロを弾く時の緊張感が伝わってくるとか、コピーだから仕方ないけどどうしても歌えない高音部分があるとか。自分の技量は置いてパートによる音のバランスを意識して聞くそういう癖は、後々城の仕事選びに影響していくことにもなった。

コピーバンドはコピーする対象がほぼ決まってる場合と、メンバーの好みを持ち寄る場合に分かれると思う。前者は結成時に皆の同意を得ていれば、曲を増やす場合にも問題なく進めていける。ただ後者の場合はそれぞれの好みを反映するというある意味民主的なものだが、やはり各メンバーに弾きながら楽しい楽しくないという気持ちの差が出てくる。

持ち寄る曲が対等であってもなくても、そのカラーのバラつきがいい意味でバンドを成すこともある。でもロックと一口に言ってもパンクもあればハードロックもメタルもあり、それも邦楽と洋楽が混在するとそれだけで日本語と英語という形になる。

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