見出し画像

ロング・ロング・グッドバイ(新春)  川柳101句


Ⅰ.市毛良枝にロング・グッドバイ  二十五句

兄に添いトリック芸者砂漠消す

熊穴に入る一幅のいらすと屋

ナボコフの石鹸類を売りにゆく

移動図書館長の華氏走り下げ

神の名が次つぎ回る蛸焼機

日本人霊歌の既知のビラを折る

コマネチの風景に似たたこわさび

ボブ・バックランドを汲んだ御筆先

ポーカーと想えなかった智恵子抄

ちりとりと串田アキラが殖えつづけ

参拝図串田アキラの羊歯描いて

ベーリング海峡抜ける櫂未知子

餅の木と市毛良枝を換えながら

雪に勃つけんじのロスト・パラダイス

傍題にランプの居ない松の内

伊藤忠商事のような土器を焼く

ジャズメンがどくだみ荘を出ると雪

厭離穢土かかげ侍ジャイアンツ

ジャスミンを漫画映画と切り離す

テレヴィジョン・シティの蕎麦がぶら下がる

ゲバゲバに存在しない皇太子

桔梗屋のアルゴリズムにくしけずる

蕎麦屋へと歴史探偵自壊させ

ビーフンの句意にかかわる懺悔録

新春のシャンソンショーを惹く磁石

Ⅱ.酢飯とショート・トレンチコート  五十一句

オバQの中指が立つ注連の内

下水にてクロコダイルを言い廻す

子と父と共鳴中のたけし城

かばん屋に山下清屈すとも

骨で書くパンクロッカー短詩会

死ね死ねとゴッドファーザーへと林檎

永遠に司会者変わる天ぷら粉

京都市に時計在らざる初落語

密会がつづく神成さんの窓

芋の群れコーカソイドが膝を突く

神は居るわたせせいぞう濫造し

分身者あつまってくる二重県

××××にトーベ・ヤンソン伏字して

碧い眼の森田一義連れてゆく

ローソンに森田必勝地図を撒き

低地へと主語を失くした競歩歩者

ギザ十や愛人の子に子ども在り

エネオスへじぶんが馬鹿と思ったら

清盛のサンドを包む銀河絵図

エスパーが牛車の鍵を曲げていた

ぎざぎざを想いつづける松七日

エディプスの欄間かたむく時の船

船沈む境界例の例挙げて

妹と母と父とが豚を撃つ

青髭のピラカンサスをただ枯らし

饅頭を旗本が売る宇宙基地

ここから先は

759字 / 7画像

¥ 150

もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、