警官と与謝野晶子の間の硝子

凍み豆腐あふれるひばり記念館

2001夜物語に酢の尽きる

半鐘のケンと名乗った女子男子

射精せず月面写真貼りつける

菜箸をなくし人肉食事件

はりつけのローテーションをただ忘れ

傷を持つ呪師のスキューバダイビング

からあげが脳につながる歴史学

ワッフルを冥王星の下に置く

ワコールの劣化をとめるための杭

デニム地に一神教徒卵産む

孤独なる群衆の打つ膠着語

マーブルのおむつ人間くるみたり

絵の外の暗闇坂にポスト佇つ

無人島サリドマイドの封あける

ソラリスの浜に椰子の実流れ着く

体表に磁石をつけている心理

病室の映画に富士と鷹と茄子

一億の超自我詰める野球場

タクシーに腸詰ふたつ置き忘れ

伊右衛門のピンクの箇所が捨ててある

絹ごしの豆腐アニメに雨が降る

尿道を尿ほとばしる数理学

フーリガン戦記における自動書記

県知事が録画忘れる春の昼

あぶらみがふえるマジック・リアリズム

剃毛の主体が滝へ行きたがる

やわらかいルーズベルトの金魚鉢

ホルモンの分子とり込む俵万智

蜘蛛の囲を破る上岡龍太郎

悪銭をビッグカメラが写し出す

吹き替えのライムライトに海鞘おおし

美少年漫画に板を割る技法

意味持って光合成をする漢詩

銀亀がつねに這い出る亀屋敷

閃光に幽霊電車とのわかれ

フィネガンズ・ウェイクのなかの砂袋

赤坂の坂残らざる窓掃除

倒置法ひとつとて無き図に分子

永遠に月沈むなり犀の星

黒犀の月例祭を逃げ帰る

旅人にハンドミキサー仕掛けつつ

文体がやなせたかしの地獄の図

東風により連句小隊半壊す

ペコちゃんと太田道灌しか居ない

人文字でねずみ花火をあらわす夜

アメフト部創部に向けて走る駕籠

ツイ廃の間合いであけている気孔

ものすごい鈍器を時のなかに置く

東独のどこにつながる投句欄

鯖缶のメタフィクションを書かず寝る

病み垢にかがやくしぐれ煮の一部

いろいろな町にいろいろ安土城

刺青にびっしりロシア文学者

煉瓦焼く時間警察署の本署

蟻乗せてろくろを廻す自瀆の句

漬物が有限にあるヤンキース

碁ググれば碁からはじまる世界像

潮汁手に永遠に辿り着く

去年から着色料を持ち歩く

一斉にニコラ・テスラの砂糖溶け

粘膜が学習院を漂えり

エルヴィスの左脳が死んでいるあいだ

武蔵野に整髪料の模写をする

有人の動詞としての唐揚げる

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