つき

こよみだより *十五夜*


旧暦の8月15日は、十五夜です。
日にちは、月の満ち欠けを基準とした旧暦で定まっていますので、太陽の動きを基準にしている新暦では、その年により異なります。(※1)
今年は9月21日。明後日です。
晴れると良いですね。


私がいつも綴っている二十四節気ではありませんけれど、今日は 十五夜について、そしてその 約一月後の十三夜について、さらに月見団子について、綴ってみたいと思います。


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十五夜と、十三夜について

日本や中国では、古来よりお月さまを鑑賞する習慣がありました。
旧暦では、月の1日が「新月」、7日が「上弦の月」、15日が「満月」になるのですが、満月のなかでも、8月15日の月はとりわけ美しいとされ(※2)、特別に愛でるようになりました。

15日の夜のお月さまだから「十五夜」。
また旧暦では7・8・9月が秋とされていて、8月15日は秋の真ん真ん中だから「中秋の名月」、
さらに、この季節の収穫物のお芋にちなんで「芋名月」とも呼ばれます。

平安時代には、貴族などの間で、この月を愛でながら詩歌を詠む 観月の宴 が行われていたそうです。
その後、江戸時代に入ると、庶民の間にも豊作を祈る行事・収穫祭として定着しました。


また、旧暦の9月13日(新暦になおすと今年は10月18日)は「十三夜」と呼ばれ、昔は十五夜とともに、両方の月を愛でるのが風流とされました。
どちらか一方だけの場合は片見月かたみつきと言って嫌われたそうですから、十三夜も見上げて愛でたいものです。
ちなみに十三夜は、「中秋の名月」に呼応して「のちの名月」とも呼ばれ、またその時季の収穫物にちなんで「栗名月」・「豆名月」とも言います。


お月見は、三方に月見団子を乗せ、サトイモ、栗などのほか、ススキ(またはススキを含む秋の七草)を一緒に飾ります。(※3)
ススキは、稲穂の代わりです。



月見団子について

十五夜と十三夜にお団子を供える習慣が生まれたのは、江戸時代後期と言われています。
その頃に記された『守貞漫稿(もりさだまんこう)』によると、月見団子は、江戸と京阪(京都・大阪)で “大同小異” とのこと。

江戸は正丸(まん丸)、京阪は 先の尖った小芋の形。(サトイモです。)
数については、江戸では 「数々」と記されているのに対し、
京阪では 「(その年の満月の数である)12個・うるう月のある年には13個」を盛ると記されていて、形と数が異なることがわかります。
(他の記録では、江戸は15個とされています。)


関西では現在も、あんこを巻いた小芋の形のお餅が お店に並ぶと聞いています。関東の私は見たことが無いのですが、美味しそうですね。

守貞漫稿の月見団子の記録は、こちらのpp31・32でご覧になれます。
[ 国立国会図書館デジタルコレクション ]



またお団子は、お供えするだけではなかったようで、十五夜の江戸の町にはお団子が溢れていたようです。

こちらは江戸時代に詠まれたという川柳です。

・ 中秋はだんご十五の月見也
・ 店中たなじゅうへ鉄砲玉を十五ずつ
・ 大家からてっぽう玉が十五来る
・ 十六夜いざよいは醤油のこげるかざ
(匂い)がする

商家では奉公人たちへ、長屋では大家から各家へ、鉄砲玉(=お団子)が 15個ずつ配られていたこと、またお月見の翌日・十六夜いざよいには、余った団子にお醤油をつけて焼く匂いが町中に漂っていたことが詠まれていて、その様子が目に浮かびます。


さらには 酒井伴四郎の日記によると、参勤交代で江戸にいる武士たちも 自らお団子をつくり、贈りあっていたことが記されているそう。
人々はどれだけお団子が好きだったのでしょう。


お団子が好きと言えば、食いしん坊の私は「みたらし団子」などについても綴りたくなってしまうのですけれど… 
横道にそれてしまいますので、ウサギさんのお餅を添えながら、今日はそろそろ終えたいと思います。


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十五夜には、どうか美しい満月が観られますように。


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すてきな十五夜をお過ごしください。




(※1)  旧暦と新暦については、昨年こちらで記しました。

(※2)  正確にいうと、名月必ずしも満月ならず とのこと。

(※3) 守貞漫稿によると、江戸時代にススキを供えていたのは、江戸だけだったようです。

(※余談ですが)  新機能のルビを初めて使いました。『|守貞漫稿《もりさだまんこう》』のように、リンクを貼った場合には 使えないということがわかりましたが、便利になりましたね☺︎







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最後に失礼いたします。

先日綴った「うつわのおはなし」について、まと。(まとまる)さんが、もったいないお言葉を添えてご紹介くださいました。


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「まと。さんへ
私の方こそ、新たな気づきを頂きました。ありがとうございます。
hinaより。」





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