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【官能小説】放課後は社会勉強128

「いらっしゃいませ、おはようございまぁす」
「おまたせしましたぁ、モーニングAセットでーす」
「コーヒーおかわりお持ちしまぁす」
キャナルコーヒーの美少女ウェイトレスは無邪気な笑顔でお客さんの心を和ます。
白のポロシャツに黒色のショートエプロン風のラップスカート姿で、空気が澄んだ休日の朝に若さいっぱい、はつらつとフロアをラウンドする。
お目覚めいかがですか?
煎りたて淹れたてのコーヒーと、ゆずかのスマイルで朝から元気になってください。
あれから何ヶ月?私はおかげさまでキャナルコーヒーでアルバイトを続けていた。
おかげさまで、です。
キャナルコーヒーでアルバイトを初めて二年近く、ほんとうにいろいろなことがあった。
襲いかかったセンシティブな出来事に、一度区切りをつけるためにキャナルを卒業して、しっかりと自分に向き合い、これから何をすべきか、したいのかを考える時間を取ろうと思った。
思ったけれど…やっぱりキャナルのお仕事は楽しいし、多くのヒトに出会えるし、お客さんがみんな「キミがいなくなったら寂しい」って言ってくれるから、支えてくれるから、やっぱり続けることにした。
私がやめてお客さんが減ったらお店困るしね?
優柔不断?
そうかもしれないけれど、多くのヒトに相談して、考えを整理しての結論です。
キャナルでバイトすることがいちばん、メンタルにとっていいんです。
卒業じゃなくて中退になっちゃうから?
最近の私は自然体で仕事に取り組めるようになった。
何となく、今までは仕事に入るときに身構えていた。
入店前にセレモニーをするだの、インナーを外してみるだの…フロアでお客様のことを意識しすぎて心を乱していた。
でも今は、そんな儀式をしなくても、鏡に向かってスマイルチェックをすれば、ふつうにフロアに入れるし、お客様の視線を自然に感じられてお客様に対応できる。
お客様に満足してもらえることで、私も心の奥底から満足を得られる。
ナチュラルな私をお客様に受け入れてもらったとき、何をしなくてもゾクゾクと込み上げてくるものがある。
たった今だって…それだけで私は…
「お?今日もバイト頑張ってるね?」
「お客様、本日もご来店ありがとうございます。休日なのに朝から仕事ですか?」
「…まあ、そんなカンジだね…」
「お疲れ様です」
さすがに海外出張とは言わなくなった。男性常連客は、かつて大会社の役員とか上位職とか虚勢を張っていたが、それもなくなった。
少なくとも最近の仕事の状況は冴えないようだ。
いろいろあったから多少モチベーションも下がるだろうが、こちらもいろいろな目に遭った。
他にも喫茶店はあるだろうに、よく来られるものだ…と言いたいが、駅ビルショップのコーヒーチケット販売ノルマ達成にお願いはしていないけど協力してくれたため、その消化もあるだろうし、他の用事もあるだろうから…
「準備は出来てるから…」
「了解です。お疲れさまです」
お互いようやく聞こえるような小さな声を交わす。
この男はメッセンジャーの役割もあるからだけど…


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