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weekly flash story

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書くに値しないかもしれない、それでも書かずにはいられない。 一息の区切り一週間で、思いを馳せたり馳せなかった事象や、感じたり感じなかった体験を物語チックに書いていきます。 書か… もっと読む
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記事一覧

瞼に透ける

 両肩に勢いよく手がのっかってくる。左にすこし重さは振れてチャリが傾きそうになった。なん…

iNa INAGUMA
2年前
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やまない雨

地下鉄のホームは温くて湿っぽかった。 なかなか開かない線路沿いの扉の前で立ち尽くしてい…

iNa INAGUMA
4年前
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eclipse

 きっと意味のないところで鳥は鳴かない。  そう教えてくれた人の想い出はぼんやりと、竹と…

iNa INAGUMA
5年前
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枠内

 目の前にいたその女は画面とは別物だった。  画面からそのまま飛び出た姿を何度となく思い…

iNa INAGUMA
5年前
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不浄

 ゆっくりと静かに開かれた扉からは女性が出てきた。このタイプの扉であれば多少は金属の擦れ…

iNa INAGUMA
5年前
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下道と高速

「雪が降ったら火の元注意」という小学生が絵を描いたらしいポスターの横に「毎週あなたを待…

iNa INAGUMA
5年前
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流れていかない

 指先一つで、想い出は消えました。  桜の開花宣言が出され春がきたと言われましたが、曇り空に包まれた海辺では冷たい風がどこからか運ばれてきて、液晶パネルも霜みたいに冷たくて画面を触る私の指はかじかんで実は消すのに結構時間がかかりました。別に一瞬で終わる作業なのだから家で暖かい布団にくるまりながらでもいいのではとあなたは思うかもしれません。その通りでしょう、私ですらなんでこんな寒い思いをしながらストイックなサーファーと浜辺でくっついて歩く(まるで昔の私たちみたいな)男女を横目に

規則の海

 身体が温まると目の前にいるわたしが見えなかった。多分見えるはずの私は毛をむしられた鶏皮…

iNa INAGUMA
5年前
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ホワイトシチュー

 カレーが先に出てきた。飲み物よりも何よりも先に。スプーンより先に出てきたことには逆に気…

iNa INAGUMA
5年前
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折られた翼

 道端に靴下が落ちていた。  昼間、車通りの多くない住宅街にポツンと置かれた小さな畑の小…

iNa INAGUMA
5年前
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CONTACT

 空は曖昧だ。  晴れた日はどこまでも青で、視覚で捉えることのできるくっきりとしたオブジ…

iNa INAGUMA
5年前
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weekly flash story

稲熊と申します。 自己紹介早稲田大学 文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系 芳川泰久 創作…

iNa INAGUMA
5年前
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