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ひよこ日記。あだ名が秀逸

捻挫して2週間。
最初の次の日と次の日は炎症から熱を出し、アルベルトをやきもきさせたみたいだが、お見舞いに来てくれたイツメン達は嬉しそうにやらかした出来事をいじりたおしてくれた。
持つべきものは友。扱いが雑で非常によい。
ダサい出来事を面白おかしく笑い飛ばしてくれお土産も持ってきてくれた。

アレックスは現場で血の気が引いたらしい。
ひよになにが起きたのか悶々とした。理由がわかってほんとうに安心した。と友達の鏡のような発言をこっそり打ち明けてくれた。アレックスに感謝の印に後から何か貢ぎ物したいとおもう。

鼻血がついたハンカチや床の汚れを全部服で拭きました!みたいなわたしの洋服やヒールがもげた靴たちはクリーニングにや修理に出そうかと思っていたのに、フレッドに縁起が悪いと捨てられた。悪縁切りだ!と高らかに笑うフレッドにはジャケットを盛大に汚し、ハンカチに鼻血をつけた借りがあるので文句はいえない。

そっすね。と同意した。

アルベルトは連絡をフレッドに受けてからに息せき切って会社に駆けつけてきた。おでこに切り傷があるので大きめのガーゼを貼られ、服はドロドロでボタンはちぎれ、靴の片方はヒールがもげて使い物にならない、おまけに片方の足首は包帯でぐるぐる巻でびっこを引いている。そして資料の角っこで顔を強打して前歯がちょっと欠けた。とかいうすさまじい有り様に絶句していたが、一瞬で感情を持ち直し、ちょっとまっててと柔らかな笑顔でいいのこしどこかに消えた。
どこかに消えた先はみーちゃんのところらしかったらしく、後からお前の旦那が笑顔で物申すのがこわすぎると
復帰したわたしにボスはしみじみつぶやいた。絶対敵に回したくないタイプ。
と肩をポンポンされた。


アルベルトはわたしの状態を足の治療もさることながら歯医者が先だと判断し、医務室を出た後即座に緊急のアポを有無を言わさず秘書につめより面会を取り付けみーちゃんに労災でしょ?と詰め寄り、紹介状を無理やり書かせ、とりあえず欠けた歯の治療をしてもらうため、予約がないと絶対無理な歯医者にみーちゃんの名前と紹介状を出してすぐさま治療を開始させ、欠けた前歯を修復してもらい、それから家に連れ帰ってくれた。

ついでに虫歯の治療もする。とアルベルトに宣言された。わたしはなによりヘルスケアが先だと全てにおいての最優先事項となった。

フレッドはそのまま仕事に戻り、いつもの倍の速さで仕事を片付けたそうで、早くに帰宅してきた。夕飯当番もお掃除当番もお洗濯当番もゴミ出し当番も全くできない、さらにお風呂もトイレに行くのも一苦労なわたしに代わって、全ての雑事をアルベルトがしてくれている。何故か喜々としてわたしの世話をしてくれている。

まあまあ大きな会社のしゃちょーのアルベルトが主婦も真っ青の最高峰家事スキルを発揮してわたしのお世話をしてくれている。ますます頭が上がらない事態となった。

スパダリの本領発揮とわたしの友達たちはみな同じ事をいう。
アルベルトはこっそりあだ名がつけられていて
スパダリと表では言われているが、口の悪いわたしの友たちからはヤンデレストーカーキングというあだ名をつけられている。ちなみにフレッドは貴公子とかジェントルマンとか言われているが、こちらはこちらでイケメンオカンとかフレッドママとか拗らせ王子とか二つ名をほしいままにしている。そのうちイケメンオカンはフレッドも知っている。わたしがうっかり口を滑らしたからだ。

わたしは安定のバカとか、うっかり令嬢とかちょっとしたトラブルメーカーとか、しゃべると危険とか言われている。これはわたしもわかっているので撤回要請することなくそのままにしている。最近では貧乏症の富豪夫人とかまでつけられている。

フレッドもあいつはお前の世話がしたくてたまらないからやらせとけ。とわたしに関する雑事を全部アルベルトに丸投げしている。

フレッドはフレッドでわたしが空けた仕事の穴を密かにやってくれていたらしい。

マジでちょっとしたトラブルメーカーに違いないと自分でもおもう。

金木犀が香る季節に入ってきた。流石に夜家を抜け出して徘徊することは今回控えたい。
なぜなら二人の監視警戒網が大変に厳しい。
またなんかやらかさないかと細心の注意をはられている。

なので足が良くなった頃にヤンデレストーカーキングの名を冠されているうちの旦那さんに金木犀や匂いを嗅ぎに行きたいというと
一も二もなく賛成してくれた。

天気予報はばっちり。風もここちよい。ホウボウから金木犀の香りを運んできている。
絶好のクンクン日和だ。

アルベルトは嬉しそうだ。
なんかかわいい。
みんなにはヤンデレストーカーキングとか言われているけど愛が深いだけだ。すごく心配症でわたしになにかあったら生きていけない人なんだからわたしが一生面倒みるのだ。

ヤンデレストーカーキングとかかわいいもんだ。そんなの大したことない。
友人達にそれをいうと、そんな意味の分からない寛容なところがひよらしいといわれた

わたしも大概ネジが外れているのかもしれない。

次の週はフレッドママにジャケットを買ってあげなくてはいけない。銀行残高ががっつり減るかもしかしたら0になるかもしれない。富豪夫人とはいえ、お財布事情は自分の働いたお金のぶんしか把握してない。あいつの持ち物は恐ろしく高いやつばっかし。だが、しかたない。これは理由ある出資だ。

なにか素敵なすっごくかっこいいジャケットみつかるといいな。だってやっぱりあいつはジェントルマンがサマになるんだからさ。



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