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エル・ウッズみたいな女のコⅫ

フレッドさん宅の朝ごはんはみんなでワイワイガヤガヤとバカンスの延長みたいな朝ごはんで楽しかった。

ミシェルさんがじいっと僕の食べる姿を見ていた。そんなミシェルさんの朝ごはんはサニーサイドアップという片面だけ焼いた半熟の目玉焼きに付け合わせのサラダにカフェ・オ・レ。

僕も同じ片面焼きの目玉焼きとサラダにソーセージとパン。ひよこがスープとサラダでフレッドさんは薄いトーストにたっぷりのママレードとポーチドエッグにサラダとベーコンと紅茶でアルベルトさんはスープとサラダとスクランブルエッグにコーヒー。これ全部作り分けてるひよこすげえ

たらふくたべてお腹がパンパンになってしまう。なんかもうダラダラとゲームとかして一日を終えたい気分だけれど、この家の住人達はそうではないらしく各自分担された家事を始めた。掃除に洗濯、買い物リストアップにと
忙しそうだ。他人と暮らすってこんな感じなのかな?気ままな一人暮らしとは様相が違う。ミシェルさんが僕にハルくん、散歩にいかない?と誘ってくれた。

いーじゃん、いーじゃん!ならさあ、マルシェで買い物頼んでもいい?ふたりでいってきて?とひよこが急に張り切ってミシェルさんに言っている。

え、、うん。いいけど?

じゃあ!これ買い物リスト!荷物持ちにハル付きあったげて?

うん。

…お前、マルシェで買い物したことあるのかよ?

ありません!でもなんか面白そうだから行きます!ミシェルさん行きましょう。

うん。ちょっとまっててね支度してくる。ひよ、ちょっといい?

うん。

ふたりでヒソヒソ話してはクスクス笑いあってる。窓から日がさしてミシェルさんの髪が、キラキラキラっと反射してた。

ふたりが買い物してる間にお家片付けとくから!

外に出るとミシェルさんは辺りをキョロキョロしだした。地図を渡されたらしいがミシェルさんはさっぱりわからないらしい。買い物キャリーを引きながら困惑している。

みせてもらえますか?それとそれは僕に貸してください

ええ。

えっと今この位置にいてここに行けばいいんですね?

はい

わかりました!行きましょう
ガラガラとキャリーを引きながら歩いていくと
ミシェルさんが隣にいない
ふと後ろを振り向くと小走り状態だった。

すごいハルくん!このひよのわけのわからない手書きの地図解読できるなんて!

…確かにひよこの地図はあれですが、目印があるから大丈夫です。いざとなればフレッドさんに電話します。すいません。僕歩くの早かったですね。

わたしトロくてごめんなさい

いや、僕が気が利かなくて。ごめんなさい

ミシェルさんは歩くのがそんなに早くないのか、気をつけなきゃ。

通りに人がだんだん増えていく。ここだろう。
店がたくさん立ち並んでいてこれがマルシェというものなのか!初めて見た!感動ものだ。

ミシェルさん、着きましたよ。
買い物リストには何を買うと書いてますか?

えっと、オーガニック野菜のじゃがいも、にんじん、玉ねぎ、トマト、ズッキーニ、サラダ菜、ラディッシュ、いんげん豆、パプリカ、ナス、リンゴ、リンゴジュース、オレンジ、レモン、それからチーズと…えっと、お魚と…鶏肉と…たまご。あと、お花

なんかめちゃくちゃ多くないですか?

わたしこんなに買い物したことないからよくわからないけどいつかのために今練習しとかなくっちゃ!

いつか?

もし誰かと一緒に暮らしたりすることあればこういうの日常になるでしょ?

たしかに。

ハルくんこういう買い物したことは?

ないです。はじめてです。でも本で見分け方とか読んだことあります。

へええ、そうなの?実践できるね!

楽しみです。

こういう買い物したことないからどうなんだろうと思ったりしたけど杞憂だった。ミシェルさんが一生懸命選んでるのをこちらはどうですか?とか言いながら全部ふたりで選んで店主に交渉して買った。そしてオマケ…そう、オマケがすごかった。ミシェルさんがにっこりこれくださいな?というと大抵のお店の人はサービスしてくれるのだ。ミシェルさんは値切りもうまくて交渉に向いてると感じた。後でその話をフレッドさんにしたら笑っていた。

お前良かったな。とすごく嬉しそうだった

ミシェルさんとの買い物はとても楽しくてこういうのいつかのための練習ていってたけど
そんな人がいるのだろうか?

大量の荷物をキャリーとエコバッグに詰め込んで帰ろうとしたらミシェルさんがあ!花!と叫んだ。あ、そうだった。花を買わないといけなかった。

ミシェルさんがリストを見てる。
ハルくん。

はい

お花はハルくんが選んで。て書いてるよ?

そうなんですか?

うん、ほら。

顔を近づけてリストを見ると同じ動作をミシェルさんもしたらしくものすごい近い距離になった。フワっと花の香りがした。まだ花は買ってないのに。

花の香りがする…

ん?

なんでもありません

花屋はすぐ近くにあったけどさっきの香りは花屋からはしなかった。

僕は何がいいだろう?とじいっとみてると
彼女にはあれがいいんじゃない?と店員さんが薔薇を指さした。綺麗なマゼンタピンクの薔薇の花。確かにミシェルさんにぴったりな感じ。でもフレッドさんちの花だしな。
…ん〜、どうしよう。

あのじゃあ、このピンクの薔薇を20本と別にマゼンタピンクの薔薇を1輪分けて包んでもらえますか?

はい、いいですよ。1輪にはリボンを?
あ、、じゃあ。

ミシェルさん、すいません、花持ってもらえます?

ええ!もちろん!わあ、すごく綺麗ね

1輪はミシェルさんにあげます

え?

僕からです。初マルシェ買い物記念です

…ありがとう、ハルくん。

僕はエコバッグとキャリーに野菜やその他で膨れ上がる荷物を、ミシェルさんは薔薇の花束を抱えてまたフレッドさんちに帰ってきた。

ミシェルさんはなんだかすごく嬉しそうだった。そして薔薇の花束がよく似合っていた。

ほんとうに薔薇の花束が似合っていた。




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