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ひよこ日記。元気いっぱいラブリーイエロー我らがひよこたそ。が第一ラボにやってくる。第一ラボチーフオガタの長い一日。

第一ラボの数名は何日か前から湧いていた。今日は広報から我らの推しの元気いっぱいラブリーひよこたそが打ち合わせにやってくる日でいつもは仮眠スペースと成り果てている応接室には研究そっちのけでチリ一つ落としてはなるものかと普段なら絶対にやろうとしない掃除なるものに真剣に取り組んでいるのだ。窓まで磨いている。なんなら茶器まで磨いてた。

元気いっぱいラブリーイエローひよこたそがやってくるということもあり最高級の茶葉と菓子も用意されているようだ。推しは尊いを合言葉に各自の身なりにも気合が入っている模様。

推しのアイコンカラーでもあるひよこ色はとにかく、おのおのアイコンカラーの何某かを身に着けている。

…お前ら研究ちゃんとやれ…第一ラボのチーフのオガタは思ったが口には出さない。後々めんどくさいからだ。仕事さえしてくれたらもうそれでいい。趣味嗜好までとやかく言う権利などないのだ。

特にひよこちゃんの身内からガンガン詰められ、挙げ句エルンスト副官からイエローカード出されたあいつはかなり遠方の方の研究所に飛ばされたのだが、推し以外の事ではマトモな頭の良さがあるあいつはなんかしらんがほとぼりが冷めたと思われたのか第一ラボに戻ってきた。マズくねえか?大丈夫なのか?オガタは口には出さないが頭を抱えた。

チーフのオガタは元気いっぱいラブリーイエローひよこたその身内の統括マネージャーのフレデリックと元研究所の後輩でもあるテオの数理同好会の仲間でもあり、
やべえあいつが研究室に戻ってきたことを
申し訳なさそうに二人に連絡した。

ほんとうにすまないが、あいつが研究室に戻された。ほとぼりが冷めているといいけれど。

そうなのか。
え?マジスか!!

なんかしらんが変なあだ名までついてる
彼女。というか、彼女の同期の女のコたちみんな。アイコンカラーにキャッチコピー、果ては会員証やらキャラグッズにアルバムまで作っているようだ。そんな第一ラボに仕事の打ち合わせに来る広報部かわいそうでしかたない。おかしな真似だけはしないようにしてほしい。


今日の打ち合わせはわたしがする。とチーフのオガタが朝の申し送りで話すとブーイングの嵐となった。
推しを独り占めする気か?!となんか数名おかしな発言をするが仕事だからとオガタが冷たく言うと数名から殺気がとんできた。

いや、マジで10分足らずの巻きで打ち合わせ終わらせてしまおうと固く心に決めた。
だいたいひよこちゃんはもうちゃんとした相手いるしお前らがどうのこうのできる相手ではないのだ。

これ以上自分の手に負えなくなる前にミラ部長にも伝えなければならない。

オガタはくだらなすぎる案件のためにボスの副官でもあるミラ部長に恐縮しまくりながら内線を鳴らした。

あら、そうなの?なら、彼女と一緒にマーケティング部門の責任者も同行してもらいましょう。それから彼女の引き継ぎをする後任の担当者も一緒に。彼女は担当から外れるのよ、他の仕事を任せているから業務過多なの。ちょうどいいわ。

はい!ありがとうございます。
いいのよ、あなたも大変ね。

そんな!…ありがとうございます。
あまりに目に余るならわたしから言うわ

オガタは安堵した。
さあ、誰が来るのだろう。
ひよこちゃんだけ変なクスリ盛られたりして攫われないように試験薬ポケットに忍ばせておこう。なぜそこまでしないといけないのか意味不明だが、念には念をいれなければならない。

現にあいつは前に自分のフィギュア作製のためにサイズ実寸せねば!と言い出して騒ぎになったりしたし。危うく予算カットか研究打ち切りになるところだった。

ここは会社で仕事場で推しを愛でる場所ではないのだ。ちょっと行き過ぎた崇拝者たちのために第一ラボの研究予算削られてなるものか!

いつも通りかわいいは正義みたいなひよこちゃんが打ち合わせに訪れた。もう一人女性と男性もいる。このペアがひよこちゃんの引き継ぎ担当者らしい。ほっとした。ペア最高!ミラ部長もちゃんと考えている。

皆さんこんにちは。ひよこちゃんが応接室に入るまでの間に研究員に挨拶していく。
ふつうの奴らは挨拶仕返したりふつうの対応をしている。それがふつうなのだ。ふつうっていいよな!

応接室に入ってしばらくは引き継ぎ担当者と名刺交換したりうちの研究室の話をしたりと和やかだが、外がざわつき出した。

何?どうしたんだ?
応接室から顔を出すと数名がワナワナしている

まさか!まさかあいつがくるなんて!
くうっ…どこまでマネージャー気取りなんだ!
なんと!ひよこたそをそこまで!

??

玄関ロビーから自動ドアで入ってきたのは
むちゃくちゃクールで眉間にシワ入ったフレデリックさんだった。

??

オガタ。俺はマーケティング部兼任なんだよ。

ああ…!!

ミラ部長。マジもんの太刀打ちできない奴人選してきてくれてサンキューでっす。

打ち合わせはスムーズに終わった。

オガタさん、駆け出しのわたしをいろいろフォローしてくださってほんとうに感謝しています。ありがとうございました。わたしはこれで担当者を外れますが後輩を是非よろしくおねがいします。

ほんとうにあの頃のひよこちゃんは可愛かった。今もだけど。迷子になったり、研究員にどぎつい質問されたり謎の写真撮影会されたり
ほんとうにこっちが感謝しかないんだけど。

ひよこちゃんの後輩さんたちも愛くるしい雰囲気とやりてになるなの雰囲気を醸し出していてとてもよい。第一ラボを見限られないように
研究にいそしむつもりだ。

ラボから出るちょっとした廊下をひよこちゃん達と歩いていると、今日一番見せたくないやつがでてきた。

お仕事できているだけのひよこちゃんをいきなり通せんぼした。

??なにか?ご用事ですか?

しかしあいつは何も言わない。

変な空気に包まれる。後輩ちゃんたちも困っている。イヤ、一番オレが困っている。

なにか?
先陣を切ったのはフレデリックマーケティング長

マネージャーはすっこんでろ。

いやいや、お前、立場が違うだろ。

マネージャーじゃない。
じゃあ、保護者はすっこんでろ。

なんなんだよ。

ひ、ひよこさんっ!!

は、はいっ!

あの、そのわたしはあなたをそのあの

はい

ずーっと前からお慕いしておりまして。

は、はい

で!ですね。

はい、今仕事中だから終わり。

バッサリとマネージャー呼ばわりされたフレデリック氏が斬り捨てた。

マネージャーの分際で図々しいんだよ。

フレッドはマネージャーじゃありませんよ?

ひ、ひよこたそ。

たそ??

じ、じゃあ、彼は一体君のなんなのだ!!
ひよこ氏答えてくれ!!

だから聞くだけ無駄なことを。

オンですか?オフですか?

ならばオフで。

オンはとても頼りになる信頼できる上司です。尊敬しています。見習うことがたくさんあります。

ほう…

あれ。ひよこちゃん怒ってる?
場の空気がだんだん冷えてきた。そしてひよこちゃんの周りが白銀色に変わってく。

やべえあいつガチでやらかした


それからこれはあなたにいっても理解してもらえないかもしれませんが。

わたしのパートナーを傷つけるような発言は今後控えてください。

パートナー?

はい。パートナーです。とても大切な人です。
あなたにはわからなくても。わたしにはとても大切な人です。

で、でも保護者

だからなに?

わたしの愛する人になにかしたら許さない。
わかりましたか?

ひっっ…

はい、きた。おわった。

ものの見事に玉砕されてるし。ああああ、バカだよなあ。自爆してるし。


ふとフレデリック氏をみると目がキョトンとしてた。顔は無表情だが、首が赤い。ものすごい照れてるみたいだ。だろうな。かっこいいよ
ひよこちゃん。

あ、ごめんなさい、私的な話を。
オガタさん、皆さん大変失礼しました。
ごめんね、いこっか。後でカフェでコーヒーごちそうするから許してね?

はい!全然大丈夫です。先輩かっこいいです
私達は先に戻ります!

…フレデリック氏は無言だ。

では参りましょう、ごきげんよう。
華麗なる挨拶をして自動ドアを開け、
外にでるとひよこちゃんは見送る研究員みんなの前でわざとフレデリック氏の手をとってあるき出した。

ちょ、おま。え?

いいじゃない。事実だもの。
なんか文句ある?いや?これ?

…いや。ない。まったく。まったくお前はほんと

じゃあ、いこ。

あ、ああ

なんつうか肝が座ってるというか。
かっこいいなひよこちゃんは。
オガタはフレデリック氏が心底羨ましくなった。

そうして元気いっぱいラブリーイエローひよこたそ。ことひよこちゃんは

ほんと将来ミラ部長みたいになるなこれ。と新たなファン層を獲得したのであった。

元気いっぱいラブリーイエローひよこたそなんてキャッチコピーが幼すぎた。バージョンアップが必要だ!と喧々囂々の議論が繰り広げられたことは想像に固くない。














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