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ひよこ日記、ダーリン、嘘でしょう?本当に?

クリスマスも間近に迫る12月初めから半月ほどウィーンに商談で訪れている。忙しいのはいいことだ。

おかげさまで商談はうまくまとまりつつある。
喜ばしいことだ。

新聞を読み、経済誌を読み、読みかけの本を読み、知り合いに食事をし、打ち合わせをし、取引先に挨拶をしてまわり、ひとり時間になると部屋で酒を飲み、シャワーを浴びてそれからの時間。問題はここから。うまく寝ることができない。朝を迎え、ほっとする。
じわりじわりとくるボディーブローのように生活のリズムが崩れていくのがよくわかる。あのこがいないとちゃんとできない自分がいるのがよくわかる。かといって呼びつけることもできない。彼女には彼女の仕事があり、生活がある。

でも本音を言えば今すぐに会いたい。
しかしいい大人であり、彼女の前では格好よい男でありたい。なのであと一週間ひたすらじっと時間が過ぎ去るのを待つしかない。
夜ひよこちゃんと電話で話すのが一番安らぐ。たわいのないあれこれをひよこちゃんは
ユーモアを交えておもしろおかしく話してくれる。時どき鋭い発言をする。鈴を転がすような聡明なひよこちゃんの声を聞きながら、疲れが抜けて一瞬落ちそうになる。

その日もスケジュールをこなして一息いれようと打ち合わせをしていたホテルのラウンジカフェで1日の動きを読もうと各種新聞を持ってきてもらいじっくりとよみながら珈琲をのんでいた。午後15時。若い女性から話かけられた。

お一人ですか?

…聞いたことあるような声がする。でもなんだか違う声のような?
面倒には巻き込まれたくないなで目を合わせないようにして返事をする。

もしよろしければご一緒させていただけませんか?

なかなか積極的な女性だ。
だけど僕には関係ない。はっきり断るのも礼儀のうちと新聞から目をあげるとそこにひよこちゃんがいた。

頭が回らない。

見間違えたのかな?

今日は金曜日で仕事をしているはず。チャットでもそういっていた。

ひよこちゃんはいたずら成功みたいな目をして
もしよろしければご一緒させていただけませんか?といった。

ダーリン、嘘でしょう?本当に?

だってひとりでごはん食べるのつまんないっていったから。

それだけで?気にかけてくれたの?

えへへ。きちゃった。

仕事は有給を取ったらしい

白昼夢でもみてるのかもしれないと現実をみないととじっとみてると彼女は照れて下を向いてボソボソとこういった

だから、、あの、その…寂しくなったから会いにきちゃった。

ああ、こんな日がくるなんて。
こんな嬉しい事はない。

なんだか泣きそうだ。
喉がつかえて言葉がでない

一方的過ぎるくらいの愛に彼女が応えてくれた。

それでもいいと思っていたけど、そんな事はなかった。僕の願いは彼女に届いているみたいだ。もっと愛して。僕を見て

胸が一杯だ。

食事もきっと美味しいだろう。眠るときに
隣にいてくれたら安心して眠れるだろう。

止まっていた心臓が動きだし、体に血が巡りだし息を吹きかえしたたようなそんな感覚。

やっぱりウィーンのケーキと珈琲は美味しい!!パクパク食べている彼女が可愛くてしょうがない。
どうしよう。今すぐ彼女を抱き締めたい。
そんな事したら場所考えてよっ!て叱られるだろうけど。

そんな事を考えたらふっと笑いが出る。
一方通行だとばかり思っていた道にひかりが射してきた。そんな気がする。





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